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理想のヤンデレ幼馴染と過ごす幸福な毎日。それを壊しに来たのは、網タイツの催眠おじさんでした。  作者:
催眠アプリとおじさんと彼女

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第1話 完璧な幼馴染


「悠真くん、またぼーっとしてる。お昼、食べちゃわないと休み時間終わっちゃうよ?」


鈴を転がしたような、透き通った声が鼓膜を震わせる。

俺、瀬戸悠真せと ゆうまが視線を上げると、そこにはいつものように、眩しいほどの微笑みを浮かべた幼馴染――千歳が座っていた。


「……ああ、ごめん。ちょっと考え事してた」


「考え事? 私以外のこと?」


千歳が少しだけ頬を膨らませて首をかしげる。

その仕草一つをとっても、芸術品のように完成されている。 艶やかな黒髪は光を反射して天使の輪が見えそうなくらい輝き、吸い込まれそうな大きな瞳は、世界で俺一人だけを映している。

正直言って、千歳は美少女すぎる。


「おい、また瀬戸が『あいつ』に捕まってるぞ……」


遠くでクラスの連中がひそひそと話している。 千歳はいつも、前髪で顔を隠しがちで、俺以外の人間とは一切喋ろうとしない。だから周りの連中には、彼女の本当の美しさが伝わっていないのだ。

「千歳は俺にしか見せない顔がある」――そんな、少年漫画の主人公のような優越感が、俺の胸を少しだけ満たしていた。


「ほら、あーん」


「ちょ、千歳……周りが見てるだろ」


「いいじゃない。私たちは小さい頃からずっと一緒なんだから」


差し出された箸の先には、彼女手作りの卵焼き。 千歳の手料理は、いつも驚くほど俺の好みを完璧に把握している。まるでお袋よりも俺の体のことを理解しているかのようだ。


俺たちが幼馴染なのは、もはや運命のようなもなのだろう。

幼稚園の砂場で出会い、小学校で一緒に登下校し、中学で初めての挫折を味わった時も、彼女は隣で俺を励まし続けてくれた。


「……なあ、千歳。俺って、野球部をいつごろ辞めたんだっけ」


「もう、忘れちゃったの? 悠真くんは野球部だったけど、夏休みに入る前には辞めちゃって。私の図書委員のお仕事が終わるまで毎日待っててくれたじゃない。二人で図書室の隅っこで宿題をするのが日課だったでしょ?」


千歳は流れるように答える。 そうだ。そうだった。図書室の古い紙の匂いと、窓から差し込む西日。俺の隣で静かにページをめくる彼女の横顔。


「悠真くん? 顔色が悪いよ。……昨日は深夜2時くらいまで起きてたでしょ。スマホのいじりすぎじゃないの」


「えっ……なんで知ってるんだ?」


「わかるよ。私は悠真くんのことなら、なんでもわかっちゃうんだから」


千歳が立ち上がり、身を乗り出して俺の額に手を当てる。

彼女から漂う、甘い金木犀のような香りが鼻腔をくすぐる。その香りに包まれると、先ほどまで感じていた不快な疼きは、嘘のように消えていった。


「大丈夫だよ、千歳。……お前がいると、なんだか安心するな」


「当たり前だよ。私は悠真くんの『特別』なんだから」


彼女は満足そうに微笑み、俺の髪を優しく撫でる。その指先が触れるたび、思考が心地よく溶けていくような感覚に陥った。


昼休みが終わるチャイムが鳴る。 千歳が自分の席に戻っていくと、友人の一人が呆れたように声をかけてきた。


「おい瀬戸、お前マジでいい加減にしろよ。お前さえフリーなら他校の女子だって紹介できるのに。あんな暗い奴のどこがいいんだよ」

「……お前らにはわかんないんだよ、千歳の良さが」


俺は苦笑いして受け流す。 確かに、俺は恵まれている。 千歳という美少女――いや、俺にしか美しさを明かさないミステリアスな幼馴染が隣にいて、俺のことを全肯定してくれる。 彼女がいなければもっとモテる、なんて周囲は勝手なことを言うが、俺にとっての正解は、目の前で静かに教科書を開く彼女だけなのだ。


――放課後。


「ごめんね悠真くん、今日は先生に頼まれちゃって。図書室の整理、手伝わないといけないの」

「ああ、いいよ。たまには一人でぶらぶら帰るから。終わったら連絡しろよ」

「……うん。でも、あんまり寄り道しちゃダメだよ? 悠真くん、意外と無防備なんだから」


千歳は少しだけ不安そうな、縋るような目をして俺を見送った。 俺は一人、校門を出た。 たまには違う道を通ってみよう。そんな軽い気持ちで、俺は普段の通学路から外れ、古い住宅街が並ぶ路地へと足を踏入れた。

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