エピローグ
それは赤いインクをぶち撒けたかのような空だった。
人は誰しも運命に従って生きているだけの、ただの舞台装置なのかもしれない。
私の知る女性は、それに殉じていたのだろうと、今の自分には解っているつもりだ。
私には手の届かないあの人、憧れたあの人、思い出すのは厳しい顔ばかりだが、それでもあの高潔な精神を、少しばかりでも理解し、受け継いだと思いたい。
こうした抗えぬ運命の事を思えば、眼の前に横たわるモノに対しても感情が湧いてくる。
この物言わぬ物体となったこれも、きっと自らの運命に従わされて来た結果なのだろう。振り返り手を組み、祈りを捧げる。かつて敵だったモノへ。わずかばかりの憐憫を込めて。
踵を返し早足で歩き出す。この戦いに付いてきた頼れる従者達に迎えられ、拍手を受ける。皆心より安堵をし、喜びに満ちた顔をしていた。一人一人に視線を合わせそれに答える。感謝の言葉は改めて送ろう。その機会は、もしかすると訪れないかもしれないけど。
その奥で用意してもらった、転送魔法陣に入り、力を込める。皆が見送る中、一人王都の上空に転移する。空中から自然落下し、目標の大広間を見据え、あの装置だけを狙って腕を横に薙ぎ、破壊する。
土煙の舞う中、聴衆の混乱とざわめきを聞き、顔を隠しながら柱の陰で様子を伺っていた美しい金髪の男性を横目に見ながら、静かに大広間に着地する。
早鐘を打つ鼓動、逸る心を抑え、あたりを見回す。煙に視界を奪われるも、この彼女の力を感じ取れないわけがない。ここに辿り着くまでに、どれほどの困難があったのか、どれだけその美しい心を自ら傷つけて来たのだろうか。心よりのありがとうを、溢れるほど頑張ったね、と言ってあげたかった。自分の全てで、包みこんであげたかった。そう言ったら彼女は怒るかもしれない。
それでも、それでもと目的の元へと足早に駆けより、念願の姿を目にする事ができた。少しやつれただろうか、目を見開いて丸くしてる彼女の前に跪き、
愛しい彼女を思い切り抱きしめた。
fin ~運命のその先へ~




