26話:輝く星
1/4に閑話:掲示板4を25話の前に割り込み投稿しました。
読まなくても大きな問題はありませんが、戦争のルールについて説明するような話になっているため、読んでいただけると話が理解しやすいと思います。
それに伴って『四天王拠点』だった名称を『バフ拠点』に変更しました。
拠点の役割・効果などに変更はありません。
拠点を落としてから数分後、勢いに乗った俺たちは"攻撃"のバフ拠点へとやってきていた。
未占領状態だった一般拠点とは違い、バフ拠点は最初から相手の陣地。
バフがかかることを除いても、攻略難易度は段違いだ。
門は固く閉ざされているし、空から攻め入ろうものなら矢の雨で撃ち落とされる。
つまり、門を壊さないと何もできないわけだが……
俺の攻撃では門のゲージはもうぴくりとも動かない。
ダメ元で試した影呑ももちろん不発。
わかってはいたことだが……対物戦闘において、俺はあまりにも無力だった。
「仕方ない、帰るか」
こういうのは適材適所だ。
俺がここにいてもできることがないし、門のゲージはチャットで共有されているから、タイミングを合わせて戻るのも簡単。
となれば、門が壊れるまでは他の場所にいた方がいいだろう。
そう考えた俺は門から離れ、少し前にいた一般拠点へと走り始めた。
◆ ◆ ◆
たどり着いた一般拠点の門の前。
そこには一人、予選で戦ったポージングゴーレムが佇んでいた。
「……なあ、お前なんで一人で突っ立ってるんだ?」
「それは僕が、誰よりも輝く星だからさっ!」
そう言ってポーズを決めるゴーレムは、それから少ししてポーズを解き、肩をすくめながら俺に語りかける。
「実はみんなバフ拠点に行ってしまってね。前衛は僕ぐらいしか残っていないんだよ」
一瞬何を言っているのか理解ができなかった。
俺が言えた事じゃないが、闇陣営は攻撃が好きすぎる。
そんなことを思った俺に、ゴーレムは言葉を続ける。
「もちろん、僕一人で守り切れるからこうなっているんだけど」
そう言ってニヤリと笑うゴーレム。
そこにはハッタリではなく、揺るぎない自信が込められているように感じられた。
……ポージング好きな怪しいゴーレムを信じ切れるかは別として。
「さて、そろそろここに敵がやってくる。君も中に入るといい」
ゴーレムが門を指差す。
おそらくは予選でも見せた爆発に巻き込まないための気遣い。
だが……
「上から撃ってるだけじゃつまらない。俺も前で戦わせてくれよ」
「そうか……なら一緒に戦おうじゃないか!僕の輝きに見惚れないように気をつけてくれよ!」
「ああ、今回は気をつけるよ」
予選と同じ轍は踏まない。
そんな決意を胸に、俺はゴーレムから少し離れた位置にあった岩に擬態する。
それから数十秒後、道の奥から敵軍が姿を現した。
俺の視点じゃ後ろまでは見通せないが……大体三十人ぐらいはいるだろうか?
鎧を着込んで盾を構える前衛の後ろには、杖や弓を持った後衛。
足並みを揃え、整然とこちらに向かってくる様子に、少しの不安が胸をよぎる。
そんな気持ちを吹き飛ばすかのように、敵と対峙したゴーレムがポーズを取った。
「やあ、よく来たね!存分に僕の輝きに見惚れていってくれたまえ!」
そんな明確な煽りにざわつく敵軍から、金色の鎧を身に纏った男が前に出てくる。
「おうおう、確かにお前の輝きもなかなかだ。だがな……俺たちの方がもっと輝いているっ!!!さあ、行くぞおめえら!5分であの城、ぶっ壊せぇぇ!!!!」
その言葉と共に、黄金鎧が手にした槍をゴーレムへと突きつける。
次の瞬間、前衛が数人の守りを残してゴーレムへと走り出し、後衛が詠唱を始め、空には輝く障壁が浮かび上がった。
「俺のスキル《黄金障壁》だ。俺の体力が尽きるまで弓矢はここには届かねえ。俺とお前、どっちが先に落ちるか勝負と行こうじゃねえか!」
その言葉の通り、城壁の上から放たれる矢や魔法は障壁に阻まれ、敵の元まで届かない。
元より厳しい戦いだったが、さらに援護まで断ち切られる形。
「いいだろう、その戦い、受けて立つ!」
そんな言葉を発したのも束の間、ゴーレムは瞬く間に敵に囲まれてしまう。
だがしかし、敵の隙間からちらちらと見えるポージングが、彼が囲まれてなお余裕を持っていることを伝えてきた。
味方だからいいけど、ほんとどうやったら倒せるんだよこいつ。
「魔法部隊、あいつを足止めしている間に門を落とせ!」
味方への誤射を恐れたのか、動けないなら排除する必要もないと考えたのか、黄金鎧はゴーレムを前衛数人に任せ、拠点を落とすことを選ぶ。
その命令に従って門へと発射された魔法たちは、ゴーレムがポージングと同時に展開したシールドによって撃ち落とされた。
「そうはさせないよ。まずは僕と踊ってくれたまえ!」
「なんだよ、てめえ。最高に輝いてんな……?俺も戦おうじゃあねえか!後衛は前衛にバフと弓矢の対処だ!」
そう言って自身もバフを受け取り、上空の障壁を消し去ってゴーレムの元へと歩み寄る黄金鎧。
何やら盛り上がってきたところ申し訳ないが……
そこは俺の射程圏内だ。
━━《影呑》
黄金鎧の足元の岩から溢れた闇は、黄金鎧をなんの抵抗もなく飲み込んだ。
突然の出来事に、辺りが一瞬静まり返る。
ゴーレムはその隙を逃さなかった。
「美味しいところを持っていかれてしまったねっ!」
その言葉と共に、ゴーレムの体が光を放つ。
溜めが短かったからか、予選とは比べ物にならないほど小規模な爆発。
だが、その爆発はゴーレムを取り囲む前衛を吹き飛ばすのには十分だった。
「さあさあ、守りきってくれよ!」
爆発でできた包囲の隙間をポージングですり抜け、ゴーレムが残された後衛部隊へと突撃する。
もちろん、俺も。
リーダーの死亡、現れた伏兵、前線の崩壊、そして降り注ぐ矢の雨。
戦場は一瞬で乱戦へと変化した。
だがまあ、流れはこっちのもの。
気づけば俺たちは後衛部隊を食い荒らしていて、火力を失った敵軍はどこかへと逃げ去っていった。
「僕らの輝きの勝利だね!」
ゴーレムがポージングをしながら俺に笑いかける。
基準はよくわからないが、どうやら黄金鎧よりも俺たちの方が輝いていたようだった。




