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『神々が手放した世界』
かつて世界は神々の庇護下にあった。
神々は自らが生み出した世界、それらを構成する万物を強大な力――〈水〉〈地〉〈風〉――によって支配していた。
万物はその根源たる水に始まり、やがて地としての形を成し、その力の余波が風となった。
溢れた風は時に形を滅ぼし、水に還る。世界の理、完全なる循環に全能を見た神々は更なる智を求めた。その瞬間に〈火〉が生まれた。
万物の創造主たる神々の間には、その気質故に度々火の力を中心に闘争が起こった。
闘争は膨大な破壊を招き万物の安寧を脅かした。やがて止まぬ闘争が生まれ、一つの地――ヒュームの蔓延る島――を世界に落とした。これが大崩落である。
崩落は神々に絶望を悟らせた。しかし同時に、崩落を経ても尚生き永らえる万物の力を知った。
神々は世界を自らが生み出した万物に託すことに決めた。
そして〈時〉が生まれ、神々が去った場所には〈虚無〉と微弱な〈天〉の力が残った。
『魔術信奉書』新世界創造の章




