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えれくとろんあーく  作者: てんまる99


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9/22

歓声と愛称

用語解説:VAステージ

VA自体はバーチャルキャラクターなので3D-VR空間内でのライブも可能。

ただし、VAの場合はステージ毎も作り込む事が多いため、3Dプロジェクターを使った円形、もしくは半円形のステージでのライブが主流。

3Dプロジェクターを使用したステージはゴーグルが不要なため、不特定多数を相手にしたイベントでは管理上のメリットも多い。

1回目のステージ開始まであとわずか。

私とかすみはVAルームでフォーメーションの最終確認をしていた。

ステージ上では誰にも頼れないと思うと、否が応でもじわじわと緊張が高まってゆく。

でも嫌な感じはしない。

それは、ゲームを始める前のワクワクする感じに似ていた。

他の部員たちはモニターの接続や来校客の整理に駆り出され、部屋には他にヒロコだけ。

ヒロコはステージのコントロール担当なので最終チェックに余念が無い。



「き、緊張するよー」

かすみが呟く。

「安心して。イザとなったらKsにお願いしちゃおう。かすみが作ったVAなんだから、きっと大丈夫」

かすみの緩くウェーブする髪を軽く撫でる。

少し安心したのか、かすみはほっと溜息をついた。

そう、今までに何度もテストも練習もしてきた。

このステージはVA部の皆でつくったもの。

あとは‥私達がやるだけだ。


一言にVAステージと言っても、Aiの使い方には様々なパターンがある。

完全にAiにお任せの場合もあれば、歌、もしくはダンスのみを演者が行う場合、パートごとに担当が変わるなど、楽曲や状況に合わせて使い分けられる。


今回は開催するステージの広さがVAブースと大差ない事もあって、基本的に私達の動きをVAがトレースするという想定になっている。

もちろん、緊急の対応時は完全Ai動作も可能だ。


と、突然、開演前のステージを映していた目前の大型モニターに、スフィアがポンッと現れた。

「ひゃうっ??」

驚いたかすみは小さく声を上げた。

最近は少し慣れたけど、相変わらず心臓に悪い‥。


「お姉様!」

「はぁ、相変わらず神出鬼没ね、あんた」

「それほどでも‥。かすみさんもお疲れ様です」

ぺこり、とお辞儀をする。

「やっほー、スフィアちゃん」

コンソールを操作するヒロコも声をかける。

既に何度か通話に同席して、お互い顔馴染だ。


「もうすぐステージ始まるけど、何かあった?」

「いえ、一言、応援に‥って、すごい人気ですね」

スフィアにとって柊祭での騒ぎなど、手に取るように把握できるらしい。


「そうなのよ‥なぜか突然、観客が増えちゃって」

「流石はお姉様です! 私のアカウントでも凄く評判ですよ〜」

ニコニコと笑顔のスフィア。

「そう、ありがと‥って、スフィア、SNS‥やってるの??」

「もちろんですよ」

と言って(画面中で)スカートのポケットからスマホを取り出し見せる。


いや、アンタ、VAなのにSNSやってるの? それに、そのスマホ、一体どこのメーカー?


突っ込みたい気持ちを抑え、スフィアのスマホを見る。

画面越しに更にスフィアのスマホの画面を見ているはずだが、全く違和感は無い。

スフィアの書き込みのほとんどは、私やかすみの事だったり、AsとKsのステージをベタ褒めする内容もの。

スフィアに悪意は無いのだろうが、少し褒め過ぎな感じで、こそばゆい。


その書き込みには、

『Asさまの動画ありがたい』『お姉さま〜』『Ksちゃん萌え〜』

といった熱のこもったリプライが多数並んでいる。


と、スフィアのフォロワー数を見て驚く。

120万ユーザー?

ええ? VA部の公式より遥かに多い‥。


「スフィア、こ、これ‥」

と、フォロー数の所を指さす。

「お姉さまのステージが楽しみ過ぎて、つい、あちこちで宣伝しちゃいました。テヘッ」

ペロリ、とイタズラっぽく舌を出す。

いや、そのポーズは可愛いけど‥可愛いけど、今回の騒動の原因はコイツーっ!?

「そ、そう? 応援、宜しくね」

そう言うのが精一杯な私だった。



遂にステージの開始時間となった。

私とかすみは装備を付けてレコーディングブースに待機する。

「明日香ちゃん」

こちらを見つめたかすみも、覚悟が決まったのかキリッとした表情。

見合わせ、私は少し微笑んだ。

「うん、楽しもう!」


3・2・1‥リンクスタート!

ヒロコのコールと共にヘッドギア内の視界がサイバーパンクな廃墟へと変わる。

私達の衣装もそれに合わせたパンクな風の物へと。

私はホットパンツにチェーンをモチーフにしたアクセサリーを着け、かすみはミニスカートにシルバーメッシュをアレンジしたアクセサリーを付けたデザイン。


同時に会場の多目的ホールも照明がダウン。中央の3Dステージに同様の姿のAs、ksが浮かび上がる。

観客に歓声を挙げる隙すら与えず、激しいロック調のイントロがスタートする。


短めのイントロから即、Aサビ。

私メインでハイトーンの歌詞を続けざまに叩きつける。

そこからパート変わりで次はかすみがメインに。

少しテンポを落として、柔らかいボイスで切ない歌詞をメロウに。

そのまま流れでCパートが始まり、私が合流して、ハモリでサビを盛り上げる。


ここで間奏。

曲初めから声出しのタイミングが無かった観客は、ここで爆発的に歓声を挙げる。

それはホール内どころかホール外までも震えるほど。


間奏中にAsとKsは軽くポーズを決めながらステージ中央で合流、KsをAsが軽く抱きしめるポーズ。

つまり、ポスターの再現を演じてみる。

今度は客席から黄色い悲鳴にも似た歓声が湧いた。


そのままAsは観客席に投げキッス、Ksは手を振りながら元のポジションへ。

移動途中から曲は2度目のAメロに入り、そのままサビまで流す。

ここで一旦照明をKsに絞って切なくCパートを歌い上げ、最期に2人で合流してラスサビを紡ぐ。


歌い終わった瞬間にステージは暗転、一瞬遅れて観客の歓声と割れんばかりの拍手が会場にこだまする。


暫くして歓声が収まった所で会場の明かりを少し上げ、ステージ中央にAsとKsが進み出る。

「皆さん、今日は柊祭のVAステージにようこそ!」

Asが観客に語りかける。

「短い間ですが楽しんでねっ!」

Ksが続く。


ここで二人は声を揃える。

「私達は‥柊学園高等科、VA部所属のVAユニット‥‥“えれくとろんあーく”ですっ!」


『うぉぉぉっ!』

今日のイチの歓声が会場に轟いた。

プロモーションであえてユニット名に触れず、この場での発表は最大のインパクトを狙ったもの。

策士ヒロコの狙いは大正解らしかった。

ステージはその盛り上がりのまま、2曲目へと進んでゆく。

いかがでしたでしょうか?

物語も半ば位に成った感があります。

感想やご意見、貰えると大変励みに成りますので、宜しくお願いします。

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