EXエピソード 電脳天使エレクトロンアーク
オマケのエピソードを突然思い付いたので(汗)
何処とも知れない電脳空間。
その闇の中で、異形の者達が蠢いていた。
ひときわ巨大な首魁が叫ぶ。
「くくくっ。この作戦でAi世界のデータを滅茶苦茶にしてみせるわっ」
取り巻く、黒衣装の者達が一斉に奇声をあげた。
「ヒヒィー!」
柊学園に向かう通学路。
綺羅明日香は登校を急いでいた。
「いけない、遅刻、遅刻ーー」
言うが早いか、2m近い公園のフェンスを背面ジャンプで飛び越え、そのまま公園を走り抜ける。
丁度、公園の出口で親友の七尾かすみと行き合った。
「おはよ!」
「おはよー、明日香ちゃん」
と、その時、明日香の鞄に付けた熊のアクセサリーがピカピカと光る。
「お姉様、“ワルバグー”の不正アクセスを検知!」
「えー、学校に遅れちゃう」
「急いでやっつけちゃお、明日香ちゃん」
「しょ、しょうがないなー」
明日香とかすみは手に持ったチャームを頭上にかざし、ポーズを取る。
「「電脳転移、“エレクトロンチェンジ”っ!」」
チャームが輝くと2人の身体は眩しい光に包まれ、周囲には大量の花びらが飛び交う。
舞い散る花びらの嵐が中央から別れると、その中からファンタジーな服に身を包んだ2人が姿を現した。
「紅の電脳天使・ルミナスアーク!」
「黄の電波精霊・ライトニングアーク!」
同時に熊のアクセサリーも光と共に変幻する。
「青の電子妖精・タキオンアーク!」
揃った3人がポーズを決める。
“シャキーン”
同時に、背景は幾何学模様の飛び交う、電子世界に切り替わる。
「Ai世界の平和を乱す者は!」
「私達!」
「“えれくとろんあーく”がゆるさないっ!」
“ドカーーン”
背後で七色の爆発が起こる!
今時珍しい、本物の火薬による爆発だ。
なぜ電脳世界に火薬なのかは不明。
「うえ、マジで全国放送で流すの、これ‥」
私は巨大スクリーンに映るその映像を見て、頭を抱えた。
ここはAi財団の大型プレゼンテーションルーム。
中央の演台には蒼井さんが立っている。
かなり精神的にしんどそう。
対する観客側には、七尾のお爺ちゃん。
それにTV局のプロデューサーやスタッフ。
そして私達。
今日は来月に放映する特番映像の試写会なのだ。
映像を見た七尾のお爺ちゃんは満面の笑みを浮かべていた。
「うむうむ、良い出来じゃ!」
何度も頷く。
私は訊ねた。
「あの、自分もやっておいてなんですけど、どうして財団が特撮を?」
この映像は柊学園とAi財団が産学共同プロジェクトでタイアップの上、七尾財閥が全面バックアップと言う映画並みの体制で制作されている。
当然、VA部は制作に全面協力。
撮影期間の3週間は勉強休んでも公休扱いと言う破格の待遇だった。
「プロモーション、じゃな」
七尾のお爺ちゃんが答える。
「先日のAiトラブル以降、財団に対して不安を感じている声も多いでな」
「え、それならもっと真面目な内容の方が‥」
「いやいや、これくらい軽いものの方が良いんじゃよ。余裕が感じられるじゃろ?」
楽しげにお爺ちゃんは言った。
蒼井さんは映像制作には内心反対のようだが、先日の件で委員会に借りがあり、逆らえない。
「でも不満を感じる人もいるんじゃ‥トラブルを起こしておいて、これなのかと」
「おるじゃろな」
あっさりとお爺ちゃんは認める。
「え、それは‥良いんですか?」
「どうやっても不満を持つ者をゼロにはできんからの。それより、不安の払拭の方がよほど大事じゃよ」
お爺ちゃんは優先順位が大事だと考えているらしい。
「これに、これはスフィアちゃんのプロモーションでもあるのじゃ」
「わ、私?」
突然の話題にキョトンとするスフィア。
「99%バイオマテリアルのAi人形など、驚天動地の発明だと言うのに、お披露目をしない訳にいかんじゃろ。予算もかなりかけておるでな」
「し、しかし、それは‥まだ技術確立が‥」
抗弁する蒼井さん。
「技術確立にあと何年掛かるのじゃ? その間にこの技術で救われるはずの人間が、何人犠牲になるのかの?」
「そ、それは‥しかし未完成ゆえの事故も有り得‥」
「分かっておる。その時は儂とおぬしで攻めを追うしか無いじゃろ」
あっさりと大変な事を口にする。
「は、はい‥それは‥分かりました」
蒼井さんはそんなお爺ちゃんの性格を承知しているのか、それ以上は言わない。
「安心せい。その時は儂も一緒に腹を切ってやるわい」
カラカラと笑うお爺ちゃん。
やはり巨大財閥の当主を長年やってきただけの事はある。覚悟が違う。
でも悪いけど‥
「本音は?」
と聞いてみた。
「勿論、孫娘のコスプレ姿を見たいに決まっとるじゃろ!」
ああ、せっかくの感動が台無し‥。
そんな訳で「電脳天使エレクトロンアーク」の特番は来月の公開が決まったのだった。
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