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えれくとろんあーく  作者: てんまる99


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12/22

混乱と渦

用語解説:Ai財団(Aiファウンデーション)

高度技術であるAiの研究・運用を国家、企業等から独立して行うために設立された財団。

前身は綺羅譲きら ゆずる博士のAi統合研究所で、その特許とAiサーバーの運用益を原資にしている。

グローバルAiサーバーとそのバックボーンの保守・拡張・機能改善も財団が担っている。

「あ‥すか‥明日香、大丈夫? 目を開けてっ!」

呼びかける声にハッとして目を開ける。

見覚えのあるVAルームの天井と照明が視界に入った。

そして、心配そうに私を覗き込むヒロコの顔。


「よ、良かった‥大丈夫?」

ヒロコに聞かれて自分の体の様子を確認してみた。

「ちょっと手がヒリヒリする‥」

「見せて‥」

言われ、VAスーツの上半身を脱ぎ、左手を見せる。

あの時、”黒ブヨ”に触った場所だ。

「少し赤くなってるみたい」

ヒロコが指さすところを見ると、少し擦りむいた様になっていた。

とはいえ、大した傷じゃない。

2,3日で跡も消えるだろう。


先の状況が頭に浮かんだ。

あの時、急に視界が真っ暗になって‥。

「むりやりリンクを切断したからね‥しばらくフラつくかも‥」

そうか、緊急でリンクダウンをしたんだっけ。

ヒロコに手を借り、起き上がる。


通常、VAのリンクを切断するときは、徐々に感覚や視界を現実のものに切り替えてゆく。

そうしないと、体が急な感覚の変化についていけず”酔って”しまう。

ジェットコースターで急に落下しはじめた時のように。


脳裏にステージでの最後の光景がよみがえる。

「そうだ、かすみは? スフィアちゃんは?」

「かすみは無事だよ。でも、スフィアちゃんは連絡できてない‥」

見ると、少し離れたところにかすみが横たわっている。

美奈代先生みなよんが介抱していて、こちらも意識は戻っているようだ。

「かすみ、大丈夫‥」

少しふらつきながら、そばに歩み寄る。

「大丈夫‥びっくりしちゃったね」

元気そうに振舞っているが、みなよんがVAスーツを脱がそうとすると、痛そうに顔をしかめた。

「痛っ」

「かすみ、大丈夫?」

見ると、かすみの上半身のそこかしこに擦り傷のようなものがある。

私の腕にあるのと同じような跡だ。

親友を傷つけられ、怒りが湧いてきた。


「あれは一体何? VAフェスはどうなったの?」

ヒロコは無言で大型スクリーンを指さした。

画面には緊急特番が流れ、VAフェスで多数の被害が出たこと、現在も世界中でVAが稼働できない状況であること等が報道されていた。


「VAフェスは中止‥今も意識が戻らない人もいるみたい‥」

ヒロコが絞り出す様に言った。

「そんなぁ‥」

傍らに来たかすみが声を上げる。


人間の意識は不思議なもので、暗示を掛けて怪我をしたと強く思い込むと、身体が怪我をした様な反応をする。

実際に初期のVAでは事故などの際、その影響で重大な精神障害や怪我をする人も出た。

現在はそのための対策として、仮想空間からのフィードバックは制限され、精神が完全に没入しないようになっている。

本来、VAスーツの触覚フィードバックで怪我をするような事は起こるはずが無い。

先の事件はなにもかもが異常すぎる。


最後に見たスフィアの姿を思い浮かべた。

私たちの時間を稼ぐために、あの場所に残っていた。

無事に脱出できただろうか?


部屋に置いてあった鞄からスマートフォンを取り出し、スフィアに電話をかけるが応答なし。

念のためメッセージも送ってみたが、やはり返信は無い。

いまは、世界中のVAが全て稼働停止しているらしい。

生身の私たちはVAとのリンクを切断すればそれで一旦解決する。

でも、スフィアは自身がVAそのもの。

それが稼働できないとすると‥。

不安が胸の中でぐるぐると渦巻いた。


ピーッピピーーッ!

と、手に持ったスマホが鳴る。

スフィアがコールバックしてきた、と思い慌てて画面を見ると、相手は蒼井さんだった。

『明日香さん、ご無事でしたか‥VAフェスに参加されると仰っていたので‥』

安堵した様子を見せる。

「蒼井さん、来るのは明日ですよね? こっちは今、手が離せなくて‥」

『それですが、こちらも緊急でして。今、学校にいらっしゃいますか?』

「あ、はい」

『私は現在、空港ですので、そちらに至急向かいます。少々待っていて頂けますか』

「え、で、でも」

かすみの手当もしたいし、状況の確認もしたい‥。


そう返答しようとした時。

『明日香さん。スフィアというVAに関して、お心当たりありませんか?』

「え?」

どうして蒼井さんがスフィアの事を?

それとこの状況に関係はある??

『彼女を救うのに手を貸して頂きたい。お願いします』

そう言って蒼井さんの通話は切れた。

スフィアの手掛かりが掴めるなら‥言われた通り、学校で待つことにする。



学校で蒼井さんを待つ間に、現在の状況をニュースサイトで確認してみる。

状況として、VAフェスの最後のタイミングで世界中で同時多発的にVAのデーター破損、Aiの接続不全などが発生し、現在も継続中。

ただ、発生自体はVAフェスと無関係らしく、各地の他のイベントなどでも同様の事件が発生している。

そして発生のタイミングで、例の黒ブヨが見られる事が多い。

また、今回のトラブルはVAのみに限って発生しているのも、前回のAiネットワーク障害と違う。


状況を見ると、グローバルAiのVA関連処理に何らかの不具合が発生しているのは間違いないだろう。

一部のニュースサイトには、反VA論者の破壊工作ではないか、との意見も掲載されていたが‥。

グローバルAiのネットワーク自体、Ai同士の相互監視システム下にある。

そこに侵入してこれだけの破壊を行うには、準国家レベルのハッカー集団でないと難しいだろう。

幸いなことに今回は社会インフラに影響するような障害は発生していないので、その点は安心できる。


でも、だとしたら何が目的なのだろう?

単にVAを標的とするには、あまりにリスクが大きすぎる。

あの黒ブヨに関しても、コンピューターウイルスだという話もあったが、それには違和感がある。

もし、本当にAiネットワークの破壊が目的なら、わざわざ衆人環視のフェスでやる必要がない。

むしろできるだけ目立たないようにして、隠蔽しようとするはずだ。

調べれば調べるほど、不可解な事件が起きている。

それが私の感想だった。

蒼井さんはこの事件の真相を知っているのだろうか‥。

いかがでしょうか。

お楽しみ頂ければ幸いです。

引き続き、感想、ご意見募集中です

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