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えれくとろんあーく  作者: てんまる99


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11/22

祭と破壊

用語解説:VAフェス

世界最大級のVAイベント。

ライブステージだけでなく、VAに関する技術や新製品の発表、国際会議など内容は多岐に渡る。

開催は世界30ヶ国で開かれるリアルステージとグローバルAiが提供するVRステージがあり、両方の参加者合計は1000万人を超える。

リアルステージも観客はステージに集まるが、VAの方はほとんどが各自のスタジオやブース等から参加するため、現地入などは無い。

学園祭が終わって数日が経った。

私は早朝の学校へと続く商店街を走り抜けていた。

時間は午前6時。

商店の多くはまだシャッターを閉じていて、人通りもまばら。

朝の空気はひんやりとしていて、気持ちが良い。


始業時間まではまだ余裕がある。

にも関わらず、この時間に登校しているのには理由があった。

一つは学園祭で現れた、私を追いかける様々な人達を避けるため。


学園祭のVAステージは学内外に大変な反響を起こした。

もちろん、当初から学園の知名度・イメージアップは狙っていたから、ある程度話題になるのは想定していたけれど、それを遥かに超えている。


学園祭明け朝のことを思い出す‥。


学園祭の疲れが残る身体を引きずって登校すると、校門の前には黒山の人だかりができていた。

「え、なにあれ?」

校門の手前100m程で私もその様子に気付き、一瞬たじろぐ。

そこへみなよんから着信が入った。

『綺羅さん、今どこに居ますか?』

「校門の手前だけど?」

『良かった、間に合って』

「何か校門前に凄い人が‥なにあれ?」

『ウチの生徒+他校の生校や芸能リポーター、スカウト‥把握できないありとあらゆる人種、よ』

「え? それって“えれくとろんあーく”のせい?」

『そう‥そのまま進むと5時間は掴まるでしょうね。もしかすると、今日は登校出来ないかも‥』

それは困る。一応、皆勤賞は狙っているから。


「ど、どうしよ」

『裏門を開けておいたから、そっちから登校して』

「りょ、了解」

やっぱり美奈代先生みなよんてば優秀だ。

私は裏門から登校することで難を逃れた。

ただそれでも数日間はインタビーやら何やらで、あちこちと引っ張り回される羽目になった。


そんな騒ぎは数日も経てば落ち着く‥と思っていたのだが、一部やっかいな人達が残っていた。

いわゆる芸能事務所の関係者、というやつで、学校帰りや自宅の近辺で私をつけまわし、名刺を渡そうとするならまだしも、どこかも分からない事務所に連れ込もうとする不審者まで現れた。


そういう諸々厄介を避けるために、時間をずらして登下校しているのと‥。

「おはよー、明日香ちゃん!」

「おはよ、今日も頑張ろ!」

校門前で送迎の車から降りた、かすみと待ち合わせる。

もう一つは早朝に登校したかすみと、VAフェスのステージに備えたトレーニングするため。

学校内を走ってのランニングや屋上でのダンス練習をしている。


学園祭以降のゴタゴタに巻き込まれたのは、かすみも同様だったが、そこは七尾家のご令嬢。

人脈を通じてきっちりとマスコミ、芸能関係には釘を刺し、自家用車で送迎してもらうことで難を逃れている。

うーん、危機管理が華麗かつ私と違いすぎる‥。


放課後はVAルームで装備を付け、時にスフィアも混じっての練習もする。

以前に比べると軽く・薄くなったとは言え、装備を付けると、やはり普段とは勝手が違う。

それに慣れ、最善のパフォーマンスを発揮できるようになるのが目的だ。


トレーニングをしてVAの練習、更にかすみに教えてもらいながらAsの学習調整‥やることは山積みで、あっという間に日にちが経ってゆく。

それはとても充実していたが、私には一つ気になる事があった。


柊祭の夜、母親にAi財団の蒼井さんから、私に連絡を取りたいとメッセージが来たと言う。

蒼井さんは元、父の研究助手であり、今はAi財団の最高技術責任者。

助手であった頃には何度か家にも訪れ、面識もある。

最近はすっかり疎遠になってしまったが、年に数度は母親と連絡はしているようだ。


その蒼井さんがなぜか、母親ではなく私に連絡してきた。

しかも、直接話したいことがあるという。

なんと、学園祭でのステージのことも知っていて、『それは運命かもしれない』なんて返信が来た。

‥ちょっと大げさな気もするけど‥。


そうこうしている間にも、日にちはどんどん過ぎてゆき、あっという間にVAフェスの当日。


”えれくとろんあーく”は出番が最後なので16時頃の予定。

状況を見ながら、一時間ほど前に接続開始すれば良いはず。

そんな訳で、休日にも関わらずいつもの面々がVAルームに集まっている。


VAフェスのステージは順調に進行して行き、あと10分ほどで私達の出番になる。


「準備はOK?」

コンソールに着いたヒロコから声がかかる。

「大丈夫」

「こっちも大丈夫です」

『私もです』

ブースの私とかすみ、そしてモニターの中からスフィアが答える。


結局、スフィアに関しては、家の都合で自宅から参加している仮部員という事になった。

かすみが代理で書いた入部届を美奈代先生みなよんが受理したことで一応、仮部員と成っている。

学籍登録に関しては‥いつの間にか柊に在籍していることになっていた。

まぁ、スフィアにすれば学園の管理Aiに学籍登録をお願いするなんて、簡単なことに違いなかった。


「そっちはどう?」

私が訊ねる。

「こっちもバッチリ。まぁ、今回は接続するだけで後はフェスの方でやってくれるから、楽だよ」

ヒロコも特に作業予定は無いが、大型スクリーンにフェスの様子を映し、対応が必要な場合に備える。

「じゃあ始めようか」

「うん」

ヘッドギアを装着してブースに立つ。

今回のステージはスフィアが準備することになっている。

詳細は当日までのお楽しみ、ということで私達も詳しくは分からない。

‥リンク・スタート!

ヒロコの合図とともに目の前の景色が切り変わる。


まず目についたのは真っ赤に紅葉した木々だった。

それが、ライトアップされ、山の斜面に延々と続いている。

スフィアの作ったステージは、紅葉に染まる山中に作られた、大形の能舞台だった。


驚くのはそのスケール。

はるか視界の奥まで紅葉は続き、しかも1本として同じ形のものは無い。

それぞれが風にさざめいて、紅葉した葉が

サラサラと無数に降るように舞い散る。

舞台の各所には篝火が焚かれ、パチパチと松明のはぜる音と共に火の粉が宙に舞う。

傍らには清流が流れ、足下で滝と成って、はるか下へと落ちてゆく。

そのどれもが圧倒的な物量だ。


「これは‥」

思わず言葉を失う。

「すごい、これだけの物を‥」

学園祭でのかすみの作ったステージが緻密な箱庭だとしたら、スフィアのステージは巨大なテーマパークだった。

どちらを向いても、その景色は視界の果てまで続いている。

「頑張って作りました〜」

合流してきたスフィアが笑顔で言う。

「私達のファーストステージですから!」

「そうだね、このステージに恥ずかしくないライブをしよう」

「うん!」

「ハイ!」

3人で中央に集まり手を合わせる。


ステージ開始まであと僅か。

呼吸を整え、合図を待つ。

カウントダウンのコールとともに開始の合図が‥合図が‥合図が来ない?


ヘッドギアのコールボタンにタッチして、ヒロコに問いかける。

こうしないと会場にも音声が流れてしまうからだ。


「ヒロコ、何かあったの?」

『って‥だと‥』

ノイズが混じり、ヒロコの声が上手く聞き取れない。

顔を上げ、二人を見ようとすると、かすみが声を上げた。

「明日香ちゃん、あれは何?」

かすみが指差す先を見ると、空中に黒い不定形な物が無数に飛んでいる。

大きさは1メートルくらいだろうか。


ブヨブヨと形を変えながら、様々な高さ・方向にゆっくりと飛んでいる。

しかも、段々と数が増えていて、遠方の方は隠れて見えなくなってきている。


「これ、スフィアが作ったもの?」

「ううん、こんな事、あり得ない‥」

驚いた表情でよろよろと膝をつくスフィア。

何事か、スフィアですら理解できない事態が発生しているようだ。

と、そのうち一つの黒ブヨがかすみに向かって突進してきた。

「危ない!」

思わず、片手でその”黒ブヨ”を払いのけようとする。

ビリビリビリッ!

「痛っ!」

VAスーツの触覚フィードバックを遥かに超えた激痛が腕を痺れさせる。

「大丈夫、明日香ちゃん!」

かすみが駆け寄って来る。

やばい。こんなのが直撃したらひとたまりもない。


と、スフィアが小さな金属球の様な物を取り出し、黒ブヨに投げつける。

黒ブヨは、パチパチッという音と共に弾け飛んだ。

「お姉様、この間にリンクダウンして下さい。それまで食い止めますっ!」

「え、でもスフィアは?」

「お二人が脱出したら、私もここを離れます。早く!」

「わ、分かった」

その間にも次々と黒ブヨが押し寄せてくる。


再びコールボタンを押し、ヒロコに呼びかける。

「ヒロコ、緊急リンクダウンして! 急いで!」

「スフィアちゃんっ!」

かすみは黒ブヨに取り囲まれたスフィアの方へ手を伸ばす。

その目前をひときわ大きな黒ブヨが遮り、かすみが弾き飛ばされた。

「きゃっ!」

「かすみっ!」


バチンッ!

衝撃とともに突然、目の前が真っ暗になった。


いかがでしたでしょうか。

事態はここから急展開してゆきます。

お楽しみに!

ご意見や感想も引き続きお待ちしてます〜。

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