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5. 幸福な男

「でもね、不幸と言われることで不幸になるなんてさ。だから、幸せだねって言ってこうと思ってね」


 この前あった不幸の少女のことを思い出しながらクラスメイトの朱里に話す。


 訳あって今は洞窟の中を進んでいる。洞窟というか山の中を山の中心にぐんぐんと向かいながらおしゃべりしている。

 先がどうなっているのかわからない。

 だけどVRの世界の中だから、呑気に喋りながら洞窟を歩いていける。


「幸せって人と比べがちだもんね。絶対ってものでもないし」

「誰かに比べれば幸せだし、誰かに比べれば不幸だからね」

「つまりは?」

 とくにオチは考えてなかったが。もう少し考えてしゃべれば良かった。


「えっと、その先はあまり考えてなかったけど。みんなから幸せだと思われたいってことかな?」

「愛は何も考えず幸せそうだね」

「そういうことじゃない」

「冗談だよぉ」

 朱里は心配した様子でこっちを見てくる。大丈夫ちゃんとわかっている。



 洞窟の先の方がぼやっと明るくなっている方向へ進んでいく。眩しさに薄目になりながら、明かりの中に入っていく。

 急に視界が開け、青空が視界を覆った。外に出たかと思ったがなんだか空が近い。どう言うことだと疑問が頭を駆け巡る。


 それはドーム状の空間の壁に描かれた空の絵だったのだ。


 頭上には火口の跡なのか狭い隙間から本物の空が見えて光が差しているが、逆に嘘っぽく感じてしまうほどその絵は真に迫ってくるものがあった。

 横にいる朱里を見てもその絵のすごさに惚けている。


 ドームの真ん中には蔦が巻き付いた大きな木も壁際にはドームの形に沿って半月状の住宅も目に入らないくらいの圧倒感が空の絵にはあった。


「あら、珍しい。お客様ですか」

 不意に声をかけられる。ここで暮らしている人のようだ。


 朱里は「ひゃっ」とか細く悲鳴をあげると、持ち前の人見知りを発揮して、すっと一歩下がり私の後ろに隠れる。そして、私に耳打ちをして「絵のこと、聞いて」と頼んだ。朱里も絵を描く人なので興味があるのだ。


「この青空の絵はなんですか?」

「この絵は我が町の誇り。朝から昼にかけては青空、日暮れには黄昏時の夕景、夜には漆黒に光が瞬く星空。あるいは曇り空。その時の景色に合わせて、毎日三回上書きしているんですよ」

「天気に合わせて描いているってことですか?」

「はい、この町では天井から覗く小さな穴空しか外を見ることができないので、それではあまりにも空しいので壁面に描くことを三百年以上も代々続けているのです」


 クオリティーを見るにずっととっておきたくなるような絵だが、毎日変わる絵を見られることもとても魅力的だろう。

 時の流れに沿って変わっていくもの。それがアートなのかもしれない。私はアートがよくわかっていないが。


「町の皆さんで描かれているのですか?」

「とんでもない。これを描く人はこの町から選抜したただ一人が描いています」

「一人だと大変じゃないですか?」

「そんなことありません。この人がこの町で最も、いや唯一の幸せ者なのです」

「唯一の幸せ者ですか?」


 唯一の幸せ者とはどういうことだろう。


 ここの町の他の人は幸せでないのか。その画家はどれほど幸せなのだろうか。


「ほら、丁度あそこで絵を描く準備をしているのがその幸せな画家さんです」

 示す方向を見るとバケツを持った男性がいた。

「この町も彼の名のナガを冠してナガタウンと言うんです。それほど称えられていると言う事ですね」



 気がつくと私たちの周りに他の住民がわらわらと集まってきていた。恥ずかしがっている朱里は私の背中に顔をぎゅうぎゅうと押し付けていた。


「何しているの?」

「背中は任せて」

 人見知りで顔を隠しているだけだろう。そんな朱里は放って置いて、集まって来ていた人にもその画家のことを聞いてみる。


「画家さんはみんなの期待の象徴です。憧れですね」

「彼はどう幸せなんですか」

「だって、みんなが憧れている事をできているスーパースターですよ」



 他の人にも聞いてみる。


「ぼくも将来、画家さんになって、幸せになりたいです」


「私なんてただボーと暮らしているだけで、生きがいのある画家さんが雲の上の存在です。私なんて比べ物にならないですよ」


「彼は幸せ者ですよ。住民みんながは幸せになりたいと思って画家になることを目指していますからね」


 いろいろな人に聞いてみたがすべて好意的な意見であった。



「オリジナリティーもアイデンティティーもないくらいみんな同じ意見だったね」

 朱里が私だけに聞こえるよう耳のすぐ近くでそう呟いた。住民に囲まれておどおどしていた人の意見とは思えない。


 テーブルを囲んで四人の大人が楽しそうにボードゲームをしている。その人たちにも聞いてみることにする。


「ゲームしてるんですか、楽しそうですね」

「いや、やることがないだけだよ」

「そうなんですか?」

「仕事なんてないし、遊ぶしかやることがないだけだよ」

「仕事をされてないのですか」

「あぁ、この町には仕事が一つしか無いからね。唯一ある仕事が壁面に絵を描く仕事だけだよ。だから彼は幸せなんだ」



 周りを見渡してみると街を覆う壁だけではなく、家の壁面にも空の絵が描かれている。

 しかし、こちらの絵は街を覆う外壁の鮮やかな青さとは比べ物にならないくらいのくすんだ色をしている。そしてヘタだ。


「家の壁に描かれている絵はなんですか」

「それが画家を選抜するときに描かれたものなんだよ。町の壁には選ばれた画家さんしか描くことができないが、家の壁だったら誰でも好きに描くことができるんだよ。そして、画家さんが引退した時には、町中に空の絵をかいて誰が一番うまいかを競い合うんだ」

 あの画家は実力で選ばれたわけか。どおりで上手いはずだ。


 画家の男は街の人々から深く尊敬されており、目的のないこの町の住民の中で一人だけやることを持っている。


 尊敬とやりがい。

 それは一般的に人が欲しがっているモノである。それが幸せの条件なのだとしたら、彼はこの町で唯一幸せだということになる。



「この町の人達は甚だしく胡散臭いね」

 町の人とは一切会話をしていなかった朱里がバッサリと切り捨てる。

「そうだね」

 私も言語化できていなかったが、何だかそんな気がしていた。


「やることはなくて不幸せって、やりたいことを見つけられてないだけだよ」

 私は朱里のようにやりたいことが明確になっているわけではないので、今度は単純に頷くことができない。


「嫉妬だよ。嫉妬。でも気づかないように、すごい画家のことを遠い届かない存在に追いやって、自分の未熟な現実に蓋をしているんだよ」

「うん、うん」

「だからこの町では画家だけが幸せなんだ」


 朱里のその言葉に頷きつつも、私は他の住民は本当に幸せではないのだろうかと考えていた。別にすごい人にならない幸せだってあるはずだ。



 画家の男を見るとコテを取り出して夕日のオレンジ色を塗り始めた。頭上の外界と繋がる穴をみるとだいぶ日が暮れている。

 それは時を告げるように外の世界の時間とリンクして壁の絵を塗り替えられている。


 それを合図にしたのか、屋根のない家から町民達が出てくる。そして、町の真ん中にある大きな木が一本生えた広場に向かって集まり出した。通り過ぎる人になにが起きるんですかと尋ねる。

 その女性は「宴が始まるのよ」とだけ言って駆け足で町の中央へと去っていく。


 広場に画家の男以外のすべての住民が集まった。私もなんだろうと中央へ集まる。朱里は私が行くから仕方ないとばかりについてくる。


 町民たちは町の真ん中の木に巻き付いているツタ植物からムカゴのような実をぽろぽろととるといつの間にか用意されていた釜の中に入れる。大量の実を入れると釜の下に火をつけた。

 しばらくするとポンポンとはじける音がしてくる。音がしなくなってくると釜のふたを開けた。むあっと煙が上がる。


「少し食べてみますか。できたてがとてもおいしいんですよ」

 ふたを開けた女性が私たちに中の物を勧めてくれる。


 その女性から私が実を受け取ると、朱里が私に向かって「ちょうだい」と小声で言ってくる。しょうがないので朱里には私からあげる。手にした朱里は「熱い!」とさらに文句まで言っている。


 住民の女性にもうひとつもらって私も食べてみる。

 表面はカリッとしていて歯を立てると、ドロッとした中身があふれ出してくる。中身は濃厚なジャガイモのポタージュの味がする。少し飛び出した中身が釜で焼かれておこげのようになっている部分が特においしい。


 しかも、明日になればまた新しい実ができているのだという。そんなことがあっていいのかと思うぐらい羨ましいものだ。栄養素もあるようで、これだけ食べていれば生きているの完全栄養食だと住人は言っていた。



 突然、チンというベルの音が響きわたる。少し遅れて香ばしい香りが漂ってくる。

 何も置いていなかったはずだった一番大きな机に気がつかないうちに調理された丸鳥が現れていた。


 話を聞くと魔法の力で出てきたらしい。百年ほど前に来た魔法使いが町の絵に感動して、毎日食べ物を出現させる魔法をかけてくれたと言う。


「今日はバリバリ鳥の丸焼きか」

 出てきたほかほかのその鳥の身をとりわける。ナイフを突き刺したその身から、肉汁が滴り落ちている。それと共にむかごのような実を主食に食べている。



 今度は、住民がかごを持ってくる。町の真ん中の木になっている桃のような果実がぐずぐずに熟れて落ちてくる。それの下に狙いをつけてかごを置き回収する。

 その収穫した果実を漏斗形の器具に入れると上から丸い板をおいてハンドルを回して押しつけていく。漏斗の下に口を開けて待ち構えている人が垂れてくる果汁を飲む。


 この果実は木についているままアルコール発酵して熟れてゆくのだという。

 大人の町人達がかわるがわる漏斗の下に潜り込みアルコール果汁を飲んでいる。大人ではない私たちは飲ませてもらえなかった。



 本当にこの町の人達はこうやって何もしないで側から見れば楽しそうに暮らしていた。いたせり尽せりとはこの町のためにあるような言葉だと思う。

 何もしなくても、毎日美しいアートを眺め、美味しい食事とアルコールにありつけることができる。


 ここの住人はとても幸せだ。

 しかし、ここの人たちは自分のことを幸せだと露ほども思っていなかったのだった。

 幸せを幸せだと認識できていないのだ。より幸せの画家という存在によって。



 だいぶ時間も経ち、大人は酒に酔い調子づいている。何人かの町人は大きな木の周りを囲んで踊っている。ふと顔を上げると、壁の絵は一面のオレンジ色に染まっている。


 画家はそのまま休まずに新しいバケツを取り出している。青みがかった黒色の絵の具をバケツから取り出してコテで塗り始めた。夜の色だ。


 そうすると、騒いでいた人々も宴もたけなわと片付けを始めた。そして、壁の絵が半分黒く染まる頃には広場には人がいなくなり、私と朱里だけが残された。



「あのポンポンしてたの、ちょー美味しかった」

「おこげが美味しいやつね」

「ね。どっかに売ってないのかな。買いだめするのに」

「この前も美味しいチーズ見つけて、買いだめしたんだけど、賞味期限どんぐらいだったと思う」

「えぇーわかんない」

「勘でいいから」

「一カ月位」

「そう。一カ月なの。もっと長いと思わない」

「だから一カ月位って思ったって」

「一年分ぐらい買っちゃったんだよ。急いで食べたよ」

「それは大変だ」

「まぁその一ヵ月はたくさん食べれて幸せだったけど」

「じゃあ、いいじゃん」

「愛は料理するんだっけ。チーズの賞味期限もわかるし」

「それは勘だって。料理もたまにしかやんないよ」

「でも。たまにはやるんだね。私は全然ダメ」

「朱里はできなそう」

「やっぱり、弟や妹がいるから?」

「えっ」

「弟や妹のために料理とかやるの?」

「そう言うわけじゃないけど」

「そう……」



 辺りは静かになり、消えかかっている窯の火の薪がガサガサと音をたて崩れる。朱里が神妙な面持ちで話し始めた。


「この前、両親から弟が欲しくないかって聞かれて」


 今や人工授精で子供を産むことも増えており、それ以上の意味を持たない言葉ではある。

 弟と断言しているところから、人工授精での性別の生み分けをするのだろう。技術的には問題なく可能である。初めは性別が偏ることが懸念されていたが、長男信仰と一姫二太郎信仰の狭間か、それともそんな信仰はすでに廃れていたのか、今のところ男女の比率に大きなバランスの変化はない。


「それで、私にも子育てを手伝ってもらいたいんだって」

 高校生であればある程度、協力はすべきものなのであろう。

「愛は、弟いるでしょ。どんな感じなの」

「賑やかだよ。我慢しなきゃのところもあるけど」


 弟が小さい時にはなぜかレジスターに憧れて、父が自作したおもちゃのレジスターでお店屋さんごっこを毎日毎日うんざりする程付き合わされた。レジスターなんて簡単に触れられるものではないからなのか、なかなか飽きずに大変であった。私にも予定があり、一緒に遊べないと言うと信じられないくらいの駄々をこねたものだ。


「かわいい?」

 そういえば、前に弟がかわいいか聞かれたことがあったが、適当に流してしまっていた気がする。

 単純にかわいいとは言えないが、こう言っておこう。

「まぁ、大切だよ」


 天からの授かり物であれば受け入れるしかないが、科学の子となれば選択の自由が生まれてしまう。人工授精が一般的になり、若いうちに凍結保存した卵子と精子を用いることで高齢出産する人も増えて、出生率の下がり方が緩やかになったと言うが難しいところだ。


「どうなの?」

 朱里はどう思っているのか素直に訊ねてみる。


「私ね、芸術をやっていきたくて。難しいかもしれないけど、挑戦したくて。けどそれには、予備校行ったり、美大にも現役で入れるかわからないし、お金がかかるから」

 朱里の描いた絵は高校生のコンクールで賞をとり、美術館に展示されたことがあった。私には詳しいことはわからないけれど才能があるのだろう。


「ちゃんと話してみれば」

「このタイミングで話すのってずるくない。弟と、命と天秤にかけているようで」

「ずるくないよ」

 別に姉だろうと好きなことをやる権利はある。


「私の好きな日本画家に塩山四季さんって人がいてね。その人は自分が本当に完璧と感じた絵しか認めなくて、それ以外の絵は燃やしていたの。若い頃は絵も高く売れず、昼には絵を描いて、夜には警備員のバイトをしながらやっていてね。有名になってからも若い頃に売った絵がやっぱり気に入らなくなって、高いお金で買い戻して燃やしたりしてて。そこまでの覚悟が自分にもあるのかなって思って。完璧な絵なんて描けたことないし」

「でも、やりたいんでしょ」

「うん」


 朱里は自信なさげに頷く。勇気づけてあげなくては。

「それに今の時代、警備員になるより芸術家になる方が簡単だから大丈夫だよ」

「そういうことじゃないでしょ」

 今や人間の警備員を雇っているところはなく、全ては警備ロボットとAIによる監視カメラの映像認識だ。それと同様に弟もレジ打ち係になることはない。


「朱里なら大丈夫だよ」



 静まり返った広場に画家が一人でやってくる。そういえば、近くで見たのはこれが初めてだ。遠くで絵を描いている姿しか見ていなかった。一体どんな人なのだろうか。


「すいません。この町で画家をやらせていただいているナガと申します」


 とても腰が低かった。こちらも自己紹介をしたが、人見知りの朱里の名誉のため、詳細は割愛する。


 広場にある釜に向かったナガさんが冷えたムカゴのような実をとりだして、半分に割る。パサパサとした断面から『ふぁさ』と白い粉が舞う。見るからに美味しそうではない。

 画家は口の中に入れ唾液で湿らせながら食べている。口もパサパサになってしまうだろう。栄養を摂るだけと言ったような食事だ。


「お酒は飲まないんですか?」

「ひとりでは飲めないので……」

 私の問いかけにナガさんは小声でぼそぼそと話す。あのアルコールを飲む装置はハンドルを回す人と飲み手の二人がいないと飲めないのであった。


「私がハンドルを回しますよ」

「ありがとうございます」

 ナガさんは酒を絞り出す装置の下へ寝転んだ。しかし、私がハンドルを力強く回しても一滴も酒が滴り落ちることはなかった。


「すいません、もう残ってないです」

 期待させてしまったことを謝った。

「いえ、大丈夫です」

 そう言いながらも、当然の如くナガさんは肩を落としたように見えた。



 ナガさんは手早く食事を終わらせ、家に帰る。そのまま寝るのかと思うと、バケツを持って戻ってきた。


「まだ寝ないんですか?」

 私が尋ねるとナガさんはバケツこちらに向けながら言った。

「まだ仕事があるので……、明日使う絵の具の土を取りに行かなければならなくて」

「辛くないですか?」

「幸せですよ。皆さんがそう言ってくださるので」

 不幸と言われている少女は不幸であったが、その幸せと言われているナガさんは幸せそうには見えなかった。


 いつの間にか寝ていたみたいで真上からは日が漏れていた。周りを見渡すと暗い夜の色から青の壁面へと変わっていた。一部分を除いて。太陽の昇り方から見ると全面塗り変わっていても良さそうなものだか。しかも、色の変わり目では壁を塗っているナガさんの姿も見えない。


「どこいっちゃったんだろう」

 ポツリと呟くも何かがわかるわけではない。


 立ち上がって辺りを確認する、すると、壁の端の方に住民がなんだか集まっているようだ。そこに向かってみる。それはちょうど壁の色の境目のところだった。

 そこに着くと、苦悶の表情を浮かべ地面に横たわるナガさんの姿があった。


「大丈夫ですか」


 表情で大丈夫ではないことは明白だが訊いてしまう。

 他の住民の話を聞くと、天井近くの絵を描いていた時にハシゴから足を滑らせて滑落してしまったらしい。


 住人の肩を借りながら、ナガさんの家にあるベッドまで運ばれている。画家の仕事を一日でも休むと画家の権利を剥奪されるのだという。

 今のナガさんを見るに今日中に仕事ができるようになるとは思えない。


 ベッドに横たわった元絵描きのナガさんは「不幸になってしまいました」と言いながらも、安堵感を含ませた笑みを浮かべていた。それは、初めて見る画家の笑顔だった。


 ナガさんの家を出て外を見れば、家の壁も地面も一面の空色になっている。

 空に浮かんでいるかのよう。住民たちが次の画家の選出のために絵の練習をしているのだ。画家になれる夢に期待を胸膨らませて、今まであった中で一番楽しそうに笑っていた。


 幸せな人間と呼ばれる人がいないときが、一番の皆が幸せな時だなんて。町民全員が笑顔を浮かべる中、私はどんな顔をしているだろう。

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