仮面の向こうで、恋が始まる(深田由紀)
女子高校生:由紀の恋愛模様
愛知県刈谷市の住宅街にある高校に通う深田由紀、十七歳。彼女は自分のことを、クラスの中で目立たない存在だと思っていた。
成績は平均的。クラスでは端の席。発言は必要最低限。誰かと衝突することもなければ、特別に親しい友人が多いわけでもない。
そんな由紀にも、ひとつだけ、人には言えない“好き”があった。
――コスプレ。
アニメやゲームのキャラクターになりきって、衣装を着て、メイクをして、写真を撮る時間。その間だけは、現実の自分を忘れられた。でも、それはあくまで「秘密」だった。
そんな由紀にも恋心を抱かせる男子生徒がいた。二年生からクラスメイトになった服部。服部は明るいタイプではないけれど、誰にでも穏やかに接する男子だった。優しくて温かい温度感。由紀にとって、服部の雰囲気はとても心地よかった。
朝の挨拶、プリントの受け渡し、そんな些細なやり取りだけで、由紀の心臓は忙しくなる。
「おはよう、深田さん」
「……お、おはよう」
それだけで精一杯だった。服部がアニメ好きだという噂は耳にしていたが、だからといって、自分の趣味を打ち明ける勇気はなかった。服部に恋心を抱くようになってから、その秘密は、より重たいものになった。
(知られたら、引かれるかもしれない)
そう思うと、胸がきゅっと縮んだ。そんな由紀が、年に一度だけ勇気を出せる日がある。
――刈谷駅前で開催される、地域主催の小さなコスプレイベント。
遠征するほどではないけれど、同じ趣味の人たちが集まり、誰にも否定されずに“好き”を楽しめる場所だった。
その日、由紀はお気に入りのアニメのメイドキャラクターに扮していた。黒いメイド服、白いショートエプロン、赤いウィッグ……いつもの自分とはまるで違う。
(大丈夫……今日は、由紀じゃない)
そう言い聞かせて、イベント会場へ向かった。
一方その頃、服部も刈谷駅にいた。特に目的があったわけではない。駅前でイベントをやっていると聞いて、なんとなく足を運んだだけだった。アニメは好きだが、コスプレイベントを見るのは初めてだ。
(……すごいな)
カメラを構える人、衣装を揺らして歩く人たち。その中で、ふと目を引く姿があった。自分が推している好きなアニメのキャラクターと同じメイドの衣装を着た、細身の女の子。
……でも、立ち姿が、どこか見覚えがある。
(……あれ?)
近づくにつれて、胸がざわついた。
(……深田さん?)
丁寧に作られた衣装、キャラクターそっくりに仕上げられたメイクと髪。まさかクラスメイトがこんな所で推しのキャラクターに扮しているなんて考えられない。でも、よく見れば見るほど、その中身は深田だと思えてくる。迷いに迷った結果、服部は思い切って声を掛けた。
「えっと、深田さんですか?」
自信のないその小さな声に、由紀の体がびくっと跳ねた。
「え……?」
振り返った先にいたのは、間違いなく服部だった。
「は、服部くん!?」
一瞬、世界が止まった。
(最悪……見られた……)
逃げ出したい気持ちと、声をかけられた嬉しさが、同時に押し寄せる。
「ご、ごめん……人違いだったら……」
「い、いえ……その……私です」
由紀は眼鏡の縁を押さえ、小さく答えた。
「……似合ってる」
服部は少し照れたように、そう言った。
「え……?」
「あ、いや、その……変だとかじゃなくて。すごいなって。俺もそのキャラクター、大好きなんだ」
由紀は言葉を失った。
否定されると思っていた。笑われると思っていた。でも、服部の目には、驚きよりも、純粋な感心が浮かんでいた。
「深田さんが、楽しそうで……それが、いいと思う。あと……」
「え?」
「好きなキャラが実物になってるの観られて、何だか嬉しい。その……ありがとう」
「あ、いえ、そんな……」
胸の奥が、じんわりと温かくなる。その日をきっかけに、二人は少しずつ言葉を交わすようになった。
学校では相変わらず控えめだったけれど、放課後にメッセージを送り合うようになり、共通のアニメの話で盛り上がった。
――そして、服部が誘ってきた。
「名古屋に、少年探偵アニメの期間限定カフェがあるんだけど……一緒に行かない?」
由紀は、しばらくスマホを握りしめていた。
(……行きたい)
気持ちは決まっていたけれど、返信には長い時間がかかった。それでも、指は由紀の希望通りに動いた。
「……はい」
名古屋のカフェは、明るくコミカルな雰囲気で、壁には探偵モチーフやキャラクターの装飾が並んでいた。二人は並んで座り、限定メニューを頼む。
「深田さん、あのとき……声かけるの、すごく迷ったんだ」
「そう、だったんですか」
「でも、見なかったことにするのは……嫌だった。凄く上手にコスプレしてたから」
由紀はカップを持つ手に力を込めた。
「私……あのとき、見られて怖かったです。でも……」
「でも?」
「服部くんが、否定しなかったのが、すごく嬉しかった。言うのが遅れちゃったけど、あの……ありがとう」
服部は少しだけ目を見開いて、そして笑った。
「こちらこそ。凄く良いモノ見せてくれてありがとう。俺、深田さんの“好き”を、大事にしたいと思った」
沈黙が落ちる。その静けさは、居心地が悪くなかった。
「……深田さん」
「はい」
「俺、ずっと前から……深田さんのこと、好きだった」
由紀の心臓が、大きく跳ねた。
「イベントの日に、確信した。ああ、この人だって」
由紀は、深く息を吸った。こんな幸せな瞬間が突然訪れるなんて。由紀はこの瞬間をしっかりと噛みしめた後、小さく頷いた。
「……私もです」
言葉にした瞬間、胸の奥で何かがほどけた。
刈谷の駅前のコスプレイベントで始まった、小さな勇気。秘密だった“好き”は、今、大切な誰かと共有できるものになった。
由紀は、もう逃げなくていいと思えた。自分のままで、誰かに好きになってもらえる――。それは、何よりも確かな恋の始まりだった。
- キャラクター プロフィール -
名前:深田由紀
職業:高校生
好きな事:コスプレ
年齢:17
身長:162㎝(5'4")
体重:47㎏(104lb)
誕生日:11月19日
星座:蠍座
血液型:A型
・彼女のイラスト配信動画はコチラ↓
https://www.youtube.com/shorts/FQhs0I9rmls
・彼女のイラストデータをこちら↓のサイト(SUZURI)で配信しています。携帯電話の壁紙等にご利用ください☆
https://suzuri.jp/teruru4040/digital_products/71583




