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静かなカフェ、心がほどけた夜(石黒恵理)

女性公務員:恵理の恋愛模様

 石黒恵理、二十四歳。愛知県豊山町役場の公務員だ。「町民の皆様に奉仕する」というモットーを胸に、今日も市民課の窓口に立つ。


 十二月の役場は、いつも以上に慌ただしい。年末調整、各種申請、問い合わせ。カウンター越しに投げかけられる言葉は、切実なものもあれば、刺のあるものも混じっている。


「公務員はいいよな、安定してて」


 そう言われるたびに、恵理は曖昧に笑って受け流した。反論しても理解されないことを、もう知っている。公務員にとって町民はお客様であり、そのために奉仕する存在だ。それが仕事であり、日常だった。


 その日も定時を少し過ぎて役場を出る。冷たい空気に肩をすくめながら、恵理はいつものカフェへ足を向けた。豊山町の住宅街にひっそりと佇む、小さな店だ。


「いらっしゃいませ」


 カウンターの向こうから、柔らかな声がする。店主の伊豆田は二十七歳。数年前にこの町で店を開いた。開業時、役場の手続きで何度か顔を合わせたのが最初だった。


 無垢な木のカウンター、控えめな照明。伊豆田が作る店の雰囲気は心地よく、ここに来ると肩の力が抜ける。気づけば、恵理は常連になっていた。


「恵理さん、今日はお疲れの顔ですね」

「……分かります?」

「少しだけ」


 伊豆田はそう言って微笑む。決して踏み込みすぎない距離感が、恵理には心地よかった。自分のことをきちんと見てくれている、その感覚がどこか嬉しい。


 コーヒーを淹れる音を聞きながら、恵理はぽつりと話し始める。


「今日、窓口で怒鳴られまして。『お前らは俺たちの税金で食ってるんだろ』って」


 言葉にした途端、胸の奥がじんとした。伊豆田は手を止めず、ただ耳を傾ける。


「……つらいですね」


 それだけだった。否定も、慰めもない。ただ、理解しようとする声。コトッ、カタカタ、コポコポ……コーヒーを淹れる音が、代わりに返事をしてくれているようだった。


「公務員って、何があっても失業しないんだろ、って言われることもあります。でも……」


 言葉は途中で途切れた。分かってほしかったわけじゃない。ただ、聞いてほしかった。


「恵理さんは、ちゃんと仕事してると思いますよ」

「えっ?」


 少し驚いて顔を上げる恵理に、伊豆田は続けた。


「僕は、恵理さんの仕事があったからこの店を始められました。手続きも許可申請も、この店の一部は恵理さんが作ったものだと、僕は思ってます」


 穏やかな声だった。押しつけがましさはなく、事実を淡々と語るだけ。その言葉が、胸の奥に静かに沁みていく。自分の仕事が、誰かの人生の一部になっている――それを初めて実感した。


 用意されたコーヒーを受け取ったとき、伊豆田が少しだけ視線を泳がせながら言った。


「恵理さん、あの……今日は」


 そう言って、カウンターの下から小さな皿を出す。控えめなサイズのショートケーキだった。


「お誕生日ですよね。おめでとうございます」


 一瞬、言葉を失った。


――十二月二十八日。世間では仕事納めが迫るその日は、恵理の誕生日だった。


「前に、年末は忙しくて、あまり祝われないって話してたの、覚えてて。僕からの、ささやかなプレゼントです」


 照れたように笑う伊豆田を見て、恵理の喉が詰まる。今年も誰にも祝われずに終わると思っていた。ただ役割をこなすだけの日々で、自分の特別な日はないのだと。


「伊豆田さん……ありがとうございます」


 声が震え、気づけば涙がこぼれていた。


「あっ、す、すみません……」

「謝らなくていいです」


 伊豆田は慌てず、ティッシュを差し出す。


「また、いつでも来てください。ここは、そういう場所なので」

「……ありがとうございます」

「僕は、笑ってる恵理さんも、泣いてる恵理さんも、好きですから」


 冗談めかしたその一言に、胸がいっぱいになった。


 家に帰り、一人きりの部屋で、恵理は今日の出来事を思い返す。温かいコーヒー。小さなケーキ。自分の仕事を肯定してくれた言葉。


 町民のために働く日々の中で、自分自身が救われる瞬間があるなんて、想像することすら忘れていた。誰かに覚えてもらえている。それだけで、こんなにも心が軽くなるのだと知った。


 恵理は胸の奥に芽生えた感情に、そっと名前をつける。


 ――これは、きっと恋だ。


 年末の静かな夜。恵理は初めて、自分の誕生日を、そして自分自身を、大切に思えた。

- キャラクター プロフィール -

名前:石黒恵理いしぐろえり

職業:公務員

好きな事:カフェ巡り

年齢:24

身長:155㎝(5'1")

体重:50㎏(110lb)

誕生日:12月28日

星座:山羊座

血液型:A型


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