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あなたの言葉が、私を主役にした(笠松美和)

声優:美和の恋愛模様

 ――笠松美和、二十六歳。職業、声優。


 名古屋にあるテレビ局のスタジオへは、自宅の北名古屋市から電車を乗り継いで約20分。このスタジオの照明は、いつ来ても少しだけ冷たい。天井から均等に落ちる白い光の下、笠松美和はヘッドホンを装着し、マイクの前に立った。


(今日の仕事はナレーション。主役は映像、声は脇役……)


 台本の角を指でなぞりながら、小さく息を整える。


 同期の何人かは、すでにアニメの主役やメインキャストとして名前を知られる存在になっていた。SNSを開けば、祝福の言葉と華やかな写真が並ぶ。そのたびに、美和はそっと画面を閉じる。


 ……自分はまだ脇役ばかり。今日の仕事は、キャラクターの名前が前に出ることもない番組の“声”。


「本番、いきます」


 ディレクターの声がかかり、美和は余計な感情を胸の奥へ押し込めた。感情を乗せすぎないこと。映像の邪魔をしないこと。それが、自分に求められている役割だ。


 台本を読み終え、ブースの外に戻ると、ディレクターの隣に立っていた男性が声をかけてきた。


「笠松さん、今の、すごく良かったです」


 テレビ局員の中川。三十歳。今日の番組担当だと紹介された人物だった。


「聞きやすくて、映像を引き立てる声だと思います」

「……ありがとうございます」


 褒め言葉自体は、珍しくない。けれど、中川の言葉は不思議と心に残った。


「基礎がちゃんとしてる声だと思います。努力を積み重ねてきた人の声だ」


 胸の奥が、きゅっと締まる。


 売れなくても、基礎練習を欠かしたことはない。美和が自ら課した毎日の日課だ。誰にも気付かれることはないと思っていた。でも……見えない努力を見つけて、認めてくれた気がした。


 数週間後、その番組の打ち上げで、美和は再び中川と顔を合わせた。


(あ、先日の……中川さん)


 打ち上げの場では、様々な関係者と会話をする機会がある。けれど、中川とは自然と素の自分で話せるような気がした。美和の足は自然と中川の方に向き、手にしていたハイボールのグラスを軽く重ねた。


「中川さん、先日はお世話になりました」

「笠松さん、お疲れ様です」


 酒も少し進み、二人の会話はいつの間にか美和の相談会となっていた。


「同期の皆は主役を演じている人も多いのに、私はまだまだ脇役ばかりで……」

「主役だけが作品を作っている訳ではありませんよ」

「ええ、それは分かっているんですが」

「僕は、表に出なくても、しっかり作品を支えてる人が好きです」

「中川さん……」


(やっぱり、この人の言葉は温かい)


 心の中に不思議な感覚が生まれていくのを感じる。言葉を返せずに中川を見つめてしまう。


「脇役でも、立派な“役”ですから。それに、主役を演じてる声優さんも、下積みが長い人、たくさんいますし」


 慰めではない。事実として、真っ直ぐに伝えられた言葉だった。


「あなたは、きっと大丈夫ですよ」


 それだけ言われて、美和は言葉を失った。ただ、小さく頭を下げる。


「……中川さん、ありがとうございます」


 少しの沈黙が二人を包む。その微妙な間に戸惑った中川が、バツが悪そうに口を開いた。


「ところで笠松さん、趣味って何かあります?」

「趣味は……美術館巡りです。休日は、一人でよく行きます」


 自分でも意外なほど、自然に答えていた。


「いいですね。美的センスを磨くのは、この業界じゃ大事です」

「そう、でしょうか」

「ええ。きっと、その積み重ねも、笠松さんの仕事に活きてくると思いますよ」

「そうなると良いんですけど」

「きっと大丈夫。ほら、未来の大声優さんと乾杯」

「ふふ、なんですか、それ」


 中川は笑いながら再びグラスを美和と重ねた。グラスの中で氷が小さく鳴る。その音に背中を押されるように、美和は視線を落としたまま口を開いた。


「……中川さん、あの、もし、よかったら」

「はい?」

「今度、一緒に……美術館、行きませんか」


 言い終えた瞬間、心臓が跳ねる。慌てて付け足す。


「あの、そのっ……お酒の勢い、かもしれませんけど……」


 中川は少し驚いた顔をしてから、柔らかく笑った。


「嬉しいです。ぜひ」


 数日後、二人は名古屋の美術館で再会した。展示室の静けさは、不思議と落ち着く。


「この絵、どう思います?」


 中川の問いに、美和はしばらく作品を見つめてから答えた。


「とても丁寧に描かれていると思います。でも、上手いかどうかより……」

「……と、言いますと?」

「私、これを描いた人が、どんな気持ちだったのかを、感じたいんです。うまく言えないんですけど……」


 言葉にしたことで、自分の中の輪郭が少しはっきりした気がした。自分の事を彼にもっと知ってもらいたいと感じた。


「技術も大事ですけど……そこに込めたものを、受け取りたいんです」


 中川は、絵と美和を交互に見て、ゆっくりと頷いた。


「僕、笠松さんみたいな人、いいなって思います。そういう感覚の人、好きです」


 胸の奥で、静かな鼓動が広がる。


「笠松さん、あの、今度は……僕から誘ってもいいですか?」


 すぐには答えられず、一度、深く息を吸った。まだ、自分の未来も、役者としての立ち位置も、はっきりとは見えない。それでも——。


「はい」


 短く、でも確かに答えた。


 今はまだ主役じゃなくてもいい。誰かの心に残る声でありたい。


 そして今、そっと始まろうとしているこの気持ちもまた、美和にとっては、自分の中に生まれた確かな“役”なのだと思えた。


- キャラクター プロフィール -

名前:笠松美和かさまつみわ

職業:声優

好きな事:美術館巡り

年齢:26

身長:153㎝(5'0")

体重:50㎏(110lb)

誕生日:2月15日

星座:水瓶座

血液型:B型


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