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その花束に、気持ちを添えて(橋口美沙)

女性花屋店員:美沙の恋愛模様

 愛知県江南市にある、小さな花屋。


 午前中の柔らかな光がショーウィンドウ越しに差し込む土曜日は、橋口美沙にとって少し特別な時間だった。


 十九歳。花屋で働き始めてまだ一年も経っていないけれど、花に囲まれるこの場所は、すっかり自分の居場所になっていた。水やり、花の手入れ、レジ対応。覚えることは多いけれど、花の香りに包まれていると、不思議と気持ちが落ち着く。


 その日も、いつもと同じ時間に店のドアベルが鳴った。


「こんにちは」


 顔を上げると、見覚えのある青年が立っていた。年は二十代前半くらいだろうか。


(……あ、また来てくれた)


 隔週の土曜日になると、決まって現れるお客さん。名前はまだ知らない。けれど、柔らかい声と、少し控えめな笑顔は、もう何度も目にしている。


「こんにちは」


 美沙が応じると、青年は花の並ぶ棚へ視線を向けた。


「今日も、小さな花束を。花瓶に入れられるサイズで……」


 そう言って、小さな花束を指さす。彼は、いつも大きすぎない花を選ぶ。派手ではないけれど、色合いが優しいもの。


「いつもありがとうございます。あの……差し支えなければ、伺ってもよろしいですか?」


 美沙の問いに男性は戸惑いながらも小さく頷く。


「ええ、どうぞ」


 戸惑いながらも見せてくれたその穏やかな笑顔に美沙の心も軽くなる。


「いつも買って下さるのは、何か理由があります? 用途が分かればお勧めもしやすいですが」


 少しの間を置いた後、男性は教えてくれた。


「実は、母が入院してしまいまして。数か月ですけどね。花が好きな母なので、お見舞いにもっていっているんです。花を見ると母も元気になれるみたいで」

「そういう事ですか……」


(優しい人なんだな……)


 美沙は感じた事を口に出して言うか迷った。でも、その言葉は心の中にそっとしまった。


「いつも、選ぶ花は特に決まってはいないんですけど……何となく母が好きそうな色合いで選んでます」


 その言葉に、美沙は胸の奥が少し温かくなるのを感じた。


「立ち入った事をきいてすみません……。でしたら、今日はこの組み合わせはどうですか? ガーベラは“希望”、カスミソウは“感謝”の花言葉があるんですよ」

「……いいですね。それ、お願いします」


 青年はそう言って、ほっとしたように微笑んだ。会話はいつも短い。けれど、花を選ぶ時間だけは、ゆっくりと流れる。それが、隔週の楽しみになっていることを、美沙は自分でも気づき始めていた。美沙が丁寧にラッピングした小さな花束を渡すと、少し間を置いて、青年が言った。


「あの……店員さんのお名前、伺ってもいいですか?」

「はい、橋口美沙です」

「そうですか。えっと、橋口、美沙さん……」

「はい?」


 男性は照れくさそうに続けて言った。


「美沙さん、ありがとうございます。母の為に花を選んでくれて」

「あ、いえ、そんな……」


(……なんだろう、この感じ。温かいっていうか、嬉しいっていうか)


 少し照れたように言われて、美沙は思わず笑ってしまう。


「僕は植草って言います。江南市出身です」

「え、そうなんですか? 私もです」


 思わぬ共通点に、二人の距離が一気に縮まった。


「じゃあ、木曽三川公園とか、行きました?」

「行きました! 家族でよく。あと遠足とか」

「遠足! 定番ですよね!」


 懐かしい風景が、自然と会話に混じる。選んだ花を包む時間が、いつもより少しだけ長くなった。美沙と植草は自然とお互いの趣味の話や好きなことについて話すようになった。


 その後も二週間に一度、植草は決まって店に現れて花を購入した。そんな日が続いたある日……。


「……あの」


 会計を終えたあと、植草が少し迷うように言った。


「美沙さんのお勧めって、ありますか?」

「そうですね、今、店内にある花でしたら——」

「いえ、花じゃないんです」

「はい?」


 言葉を遮るように、彼は続けた。


「映画です。美沙さんのお勧めの映画。……よかったら、一緒に観たいです」


 一瞬、頭が真っ白になる。


(え……?)


 映画鑑賞は、美沙の大切な趣味だ。


 その“好き”を、まっすぐに差し出された気がして、胸が強く鳴った。美沙はすぐに返事をできずに固まってしまったが、小さな声で答えた。


「……はい。喜んで」


 そう答えた自分の声が、少し震えていたことを、美沙は誤魔化せなかった。連絡先を交換し、植草が店を出たあとも、しばらく鼓動は収まらなかった。


 ——恋だと、まだ言えない。


 けれど、確かに、何かが始まった気がした。その夜、美沙は久しぶりに映画のDVDやパンフレットが並んだ大切な棚を眺めながら、どれを勧めようかと真剣に悩んでいた。


(花じゃなくて、映画……か)


 誰かと一緒に観ることを前提に選ぶ映画は、少しだけ特別だった。窓の外では、夜風に揺れる街路樹。江南の静かな夜が、そっと背中を押してくれる。美沙は小さく息を吸い、メッセージを送った。


『今上映している映画なら、コレかコレはどうですか?』


 送信ボタンを押した瞬間、胸がきゅっと締めつけられる。


 ——花屋で始まったこの気持ちが、どんな色に咲くのかは、まだ分からない。それでも、美沙は少しだけ、未来を楽しみにしていた。

- キャラクター プロフィール -

名前:橋口美沙はしぐちみさ

職業:花屋

好きな事:映画鑑賞

年齢:19

身長:158㎝(5'2")

体重:51㎏(112lb)

誕生日:5月17日

星座:牡牛座

血液型:AB型


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