告白は、雪が降る夜に(大川友紀)
女子大学生:友紀の恋愛模様
大川友紀が初めてスノーボードに触れたのは、高校二年の冬だった。
友人に誘われ、軽い気持ちで行った日帰りのゲレンデ。転んでばかりで、何度も雪に顔を埋めた。それでも、板が雪を切り裂き、風が頬を撫でた瞬間の感覚が、強く心に残った。
――冬が、好きになった。
それから友紀の中で、冬は特別な季節になった。
大学生になり、春日井市の大学に通いながらも、雪のことを考えてしまう日々。もっと上手くなりたい、もっと長く雪の上にいたい。冬に向けた資金を貯めるため、そしてスノーボードグッズに触れていたいという想いから、スポーツ用品店でアルバイトを始めた。
冬が近づくにつれ、店内は少しずつ雪山用のグッズが増えていく。スノーボード、ブーツ、ウェア。陳列棚を眺めるだけで、友紀の胸は高鳴った。
そして、友紀の胸を高鳴らせるもう一つの存在――雪村。
五歳年上の男性社員で、仕事は丁寧。落ち着いた口調で、誰に対しても優しい。アルバイトにも対等に接し、困っていると必ず声をかけてくれる人だった。
「大川さん、無理しなくていいよ。お客さんに合うものを、一緒に考えよう」
その言葉に、何度も救われた。忙しい日でも、雪村の一言で肩の力が抜けた。
大学一年の冬、従業員向けのスキー・スノーボード旅行に初めて参加した。
ゲレンデで見た雪村の滑りは、想像以上だった。無駄のない動き。スピードを抑えつつ、安定したターン。仕事中の穏やかな姿とは違う、凛とした背中。
(……ずるい)
そう思った瞬間、胸が苦しくなった。
店では毎年恒例の行事。二年生になっても、友紀は同じ旅行に参加した。雪村は変わらず優しく、必要以上に距離を縮めることはなかった。
友紀は分かっていた。
雪村は誰に対しても誠実で、誰か一人を特別扱いしない人だということを。
――期待しちゃ、だめ。
そう言い聞かせても、視線は自然と彼を追ってしまう。
三年生になり、迎えた冬。今年も従業員旅行の案内が回ってきた。参加欄に丸をつけたあと、ペン先が止まった。
(……もう三年生の冬。今年で、最後かもしれない)
卒業が近づき、アルバイトを続けられる時間も限られている。このまま何も言わずに終わるのが、怖かった。
――宿泊先の夜。
部屋へ戻る途中、友紀は意を決して雪村に声をかけた。
「雪村さん……少し、話せますか」
ロビーからバルコニーに出る。外は静かで、雪が音もなく降っていた。
「どうしたの?」
いつもの穏やかな声。その優しさが、胸を締めつける。友紀は両手を握りしめ、深く息を吸った。
「私……ずっと、雪村さんのことが好きでした」
一瞬、空気が止まる。雪村の表情が、わずかに揺れた。
「職場の社員さんとしてじゃなくて……一緒に滑る人としてでもなくて……」
声が震え、喉が詰まる。
「一人の男性として、好きです」
言葉を吐き出した途端、涙が滲んだ。胸の奥に溜め込んできた想いが、溢れ出す。
「この冬……もう一度、雪村さんと二人きりでスノボしたいです。それで……もし、許されるなら……私と付き合ってください」
――沈黙。
雪の落ちる音だけが、やけに大きく聞こえた。
(……やっぱり、迷惑だったかな)
そう思った瞬間、視界が揺れる。
「……ありがとう」
雪村が、ゆっくりと言った。
「正直に言うよ。俺も、大川さんのこと、ずっと気になってた」
友紀は息を呑む。
「でも……社員として、年上として、一線を越えちゃいけないって、自分に言い聞かせてた」
その言葉に、胸が熱くなる。
「だから……」
雪村は少し照れたように、でも真剣な目で言った。
「この冬、二人で滑ろう。その時間を、ちゃんと大切にしたい。それから先のことは……一緒に考えたい」
涙が、頬を伝った。
「……はい」
(あっ……)
雪村は涙を流す友紀を、優しく胸に引き寄せた。
「雪村さん……」
「誰もいないし、少しだけ……」
「はい」
雪は、静かに降り続いていた。街灯の光を受けて、白くきらめきながら、音もなく地面へと溶けていく。友紀は、まだ少し震える指先をゆっくりと雪村の背中に回した。
(雪村さんの腕の中、温かい……)
友紀は目を閉じて雪村の胸に顔を預ける。すぐに何かが変わるわけじゃない。約束された未来があるわけでもない。それでも――。
「……この冬が、特別になりそうです」
小さくこぼした言葉に、雪村は穏やかに笑った。
「僕も。きっと、忘れない冬になると思う」
それだけで、胸の奥に溜まっていた不安が、少しずつ溶けていく気がした。答えを急がなくてもいい。距離も、時間も、まだここからだ。冷たい空気の中で、二人の吐く息が白く重なり、ゆっくりと夜に消えていく。
ゲレンデを滑り降りるように、少しずつ、確かめるように。この想いも、関係も、前へ進めばいい。降り積もる雪の下で、友紀の胸には、切なさと一緒に、確かな温もりが残っていた。
――この冬が終わる頃、きっとまた違う景色が見える。そんな予感だけを抱いて、二人は静かに宿の中へと戻っていった。
- キャラクター プロフィール -
名前:大川友紀
職業:大学生
好きな事:スノーボード
年齢:21
身長:160㎝(5'3")
体重:52㎏(115lb)
誕生日:5月12日
星座:牡牛座
血液型:A型
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