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重なる影、夜風に告げた告白(今井理沙)

理学療法士:理沙の恋愛模様

 今井理沙は、理学療法士として愛知県清須市の病院に勤めて七年になる。就職したばかりの頃は、慣れない業務に追われ、患者との関わり方に戸惑い、夜ごと「自分にこの仕事が向いているのだろうか」と不安で眠れなかった。


 そんな彼女に、何度もさりげなく声をかけてくれたのが、八歳年上の腰野主任だった。頼れる上司で、患者やスタッフからの信頼も厚い。理沙が仕事に挫けそうになるたびに、短い言葉で支えてくれた。


「焦らなくていいよ。君はちゃんとやれてるから。患者さんも、君の気持ちをしっかりと受け取ってるよ。表情を見れば分かる」


 腰野の優しい言葉に何度救われたか分からない。彼の真摯に患者に向き合う姿勢も、部下への気配りも、理沙にとって憧れそのものだった。そして気づけば、理沙の中には、恋心が静かに芽生えていた。


 しかし、その想いは決して実ることはなかった。数年前、腰野が結婚すると職場で報告をされた時、理沙は衝撃で言葉を失った。指輪を見せながら「子どもも産まれるんだ」と嬉しそうに笑う姿に、祝福の言葉を返しながら、心の奥で涙を流していた。


 ――もう忘れなきゃ。


 何度そう思ったことだろう。それでも、同じ職場で顔を合わせ、患者について意見を交わす時間の中で、感情は簡単に切り離せなかった。


 二十九歳になった理沙は、友人からしばしば小言を言われる。


「理沙、いい加減、新しい恋見つけなよ。いつまでも報われない片想いをしてる場合じゃないでしょ?」

「……分かってる」


 口ではそう返しつつも、心は追いつかなかった。そんな折、職員の交流会が開かれることになった。バーベキューと飲み会を兼ねた野外イベントの気楽な集まり。理沙は久しぶりに心が弾むのを感じた。


 ――交流会当日。


 夕暮れの河川敷。炭火のはぜる音と、肉の焼ける匂いが漂う。わいわいと賑やかな声が響き、理沙も自然と笑みを浮かべた。紙コップのビールを片手に、普段は話す機会の少ない部署の人たちと会話を楽しむ。


 ふと視線をやると、腰野が同僚に囲まれて笑っていた。子どもの話をしているのだろうか、手振りを交えて楽しそうに語っている。その姿を見ただけで、胸が締めつけられる。けれど今日は、不思議と涙は出なかった。ただ、「好きだな」と改めて思う気持ちが、静かに自分の中に広がるだけだった。


「理沙ちゃん、飲んでる?」


 声をかけられて振り向くと、腰野が紙皿を差し出していた。焼き立てのとうもろこしだ。


「主任こそ、けっこう飲んでません? お酒、強くなかったですよね?」

「ああ、うん。でも、こういう場は楽しいから、つい。それに家も近いし」

「お宅が近いのは分かってますけど……」


「大丈夫。俺がつぶれても、皆が俺を運んでくれるから。皆、人を介抱して運ぶのは慣れてるでしょ?」

「ちょっと腰野さん! それ、理学療法士の使い方間違ってますから!」


 理沙は軽く腰野の肩をはたく。そんな小さな接触も、理沙にとっては勇気の必要な行動だが、腰野はまるで気にしていない様子だ。腰野の顔を見ると、顔は真っ赤になっていた。珍しいなと思いながらも、理沙は笑顔を返す。短い会話だったが、それだけで胸が熱くなる。


 やがて夜も更け、交流会はお開きに向かう。だが、その頃には腰野はかなり酔いが回っていた。足元がおぼつかず、同僚たちが心配そうに声をかける。


「腰野主任、大丈夫ですか?」

「仕方ない、皆で主任を送るかー」

「ううん、皆、すまんな。歩けないこともないけど……」


 会話も歩く姿勢もおぼつかない腰野の姿を見て、結局、数人で彼を家まで送ることになり、理沙も自然な流れで加わった。


 街灯に照らされた夜道を、腰野を両脇から部下の一人と理沙が支えてゆっくりと歩く。理沙が腰野の腕を肩に回すと、重みと体温が直に伝わってきて、心臓が早鐘を打つ。


「理沙ちゃん、ごめんね……こんなところ見せて」


 腰野はかすれた声でつぶやく。


「いいんです。たまには、主任だって疲れるでしょう。いつも私達を助けてくれてるんですから、こんな時くらい私達に甘えてください。」


 理沙はそう言いながら、心の奥で葛藤していた。街灯の下に映る二人の影は、まるで寄り添うようにひとつに重なっていた。理沙はその影をじっと見つめる。


(このまま何もせずに終わっていいのだろうか)


 玄関まであと少しというところで、理沙は決心した。


「……主任」


 小さな声で呼びかけ、彼の耳元に顔を寄せる。


「私、ずっと……好きでした」


 言葉は夜風に溶けるように消えた。返事はなかったけれど、ただ一瞬、腰野が目を細め、微笑んだように見えた。その微笑みだけで十分だった。その笑みが、理沙の心にそっと幕を下ろす合図のように思えた。


 やがて玄関先に到着し、同僚がインターホンを押す。中から「はーい」と明るい女性の声が響き、玄関灯が点いた。幼い子どもの笑い声まで聞こえてきて、理沙は胸が締めつけられた。


 同僚に軽く会釈をし、理沙は静かに背を向ける。振り返らない。これ以上は、見てはいけないと思った。夜風が頬を撫でる。少し冷たいはずなのに、不思議と心は落ち着いていた。


 ――やっと言えた。


 長く抱え続けた想いを言葉にしたことで、胸の奥がすっと軽くなるのを感じた。帰り道、理沙はスマートフォンを取り出した。画面には友人からのメッセージが光っている。


 〈来週、合コンあるけど来る?〉


 これまでなら「予定ある」と断っていたはずだ。けれど今は違った。


「……行ってみようかな」


 小さく呟き、理沙は夜空を見上げた。星がいくつも瞬いている。長い片想いに区切りをつけた夜。理沙の胸の奥には、切なさと同時に、新しい風が吹き込んでいた。

- キャラクター プロフィール -

名前:今井理沙いまいりさ

職業:理学療法士

好きな事:散歩

年齢:29

身長:159㎝(5'3")

体重:52㎏(115lb)

誕生日:4月23日

星座:牡牛座

血液型:O型


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