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照れ笑いのチーズ日和(上原佳奈)

女性酪農家:佳奈の恋愛模様

 愛知県阿久比町の秋の朝。牧場には、牛たちの穏やかな鳴き声と青草の匂いが満ち、冷たい朝の空気が頬を撫でる。上原佳奈は長靴を履き、牛舎を回る。乳牛の体調を確かめ、搾乳機を取り付けると、真っ白な牛乳がタンクに流れ込む。


 毎日同じようでいて、同じ一日なんてない。気温や湿度で牛乳の風味は少しずつ変わる。その繊細な変化に五感を研ぎ澄ませながら、佳奈は今日も息をついた。


 三年前から始めたチーズ作り。けれど、販路を広げるのは簡単ではなかった。インターネットやSNSで広報をするも、大きな成果にはなかなか結び付かなかった。そんな佳奈のもとに、ある日、ひとりの男性がやってきた。


「こんにちは。僕、この町でカフェをやっている牛島といいます」


 日焼けした頬にやわらかな笑みを浮かべ、まっすぐな眼差しをこちらに向けて話を続ける。


「こちらのチーズを直接、分けていただけませんか?」


 突然の申し出に、佳奈は思わず驚いて眉を上げる。


「直接……ですか?」

「ええ。うちの店でパスタに使いたいんです。市販のチーズじゃ出せない味を、地元の素材でお客さんに届けたいと思って」


 佳奈の胸がじんわりと熱を帯びる。自分のチーズを「地元の素材」と求めてくれる人に出会えるなんて、思ってもいなかった。それから牛島は毎週のように牧場へやってきた。試作した料理の感想を持ってきては、佳奈と意見を交わす。


「この前のチーズ、トマトソースに合わせたら酸味がぐっと引き立ちました」

「ほんとですか? ……でも、ちょっと塩気が強すぎませんでした?」


「いや、それがいいんです。ソースの方の味を控えれば、チーズの味が引き立ちますし、ワインにも合わせやすいですし」


 真剣なやりとりをしながらも、会話はどこか和やかで、毎回充実していた。最初は取引先のひとりだと思っていたのに……気づけば、彼が来る日を数えて待つようになっていた。


 ある日の午後、牛島がぽつりと言った。


「もしよかったら、牧場の仕事、体験させてもらえませんか?」


 意外な言葉に、佳奈は目を瞬かせる。


「……本当に? 大変ですよ?」

「わかってます。でも、チーズのことを語るなら、作り手の世界を少しは知っておきたいんです」


 ――数日後。


 牛舎で藁を運ぶ牛島の姿は、不器用そのものだった。汗でシャツが背中に張りつき、息を弾ませながら、それでも笑みを絶やさない。


「……やっぱり大変ですね」

「でしょう? でも、その分、牛乳を搾った時の安心感と達成感が違うんです」


 自分の言葉に、牛島が素直にうなずいてくれる。その瞬間、佳奈の胸に温かいものが広がった。


(何だか、私の仕事の事もそうだけど……私自身を認めてくれているみたい)


 ある日、佳奈は牛島に誘われて、彼のカフェを訪れた。小さな木造の扉をくぐると、あたたかなコーヒーの香りに包まれる。


「今日は特別に、佳奈さんのチーズを使ったパスタを試食していただきます」


 カウンター越しに彼が笑顔を向ける。 佳奈が席に座ると、ふと牛島が店内に向かって声を上げた。


「みなさん、この方が今日のパスタに使っているチーズの生産者さんです」


 店にいた常連客が一斉に視線を向け、「わあ」と歓声をあげる。


「このチーズ、凄く風味が豊かで美味しいです!」

「酪農のお仕事って、やっぱり大変なんですか?」


 常連客達の視線と質問が一気に佳奈に向かう。


「えっ、ちょ、ちょっと……!」


 佳奈は慣れない注目に頬を真っ赤に染め、うつむいてしまう。牛の世話や搾乳なら慣れているが、人前で注目されるのは本当に苦手だった。そんな彼女の姿を見て、牛島は目尻をやわらかく下げた。そして佳奈の耳元に顔を近づけ、小声でささやいた。


「佳奈さんの照れてるとこ、可愛いですね」


(もう! 牛島さん!)


 耳元で褒め言葉を囁かれ、佳奈の心臓は大きく跳ねた。


 常連客とのやりとりにも少しずつ慣れ、会話も続いてゆく。


「こんな近くにチーズを作ってる人がいたなんて知りませんでした」

「どこかに製品の直売所とかあるんですか?」


 客の声に、佳奈は小さく会釈しながら答える。視線が熱くて、落ち着かない。それでも、牛島が横で誇らしげに笑っているのを見て、胸の奥がくすぐったくなった。


 やがてパスタが運ばれてきた。美しく上品に盛り付けられた姿、自分が生産したチーズが商品に生まれ変わっている姿に胸がこみ上げる。


(綺麗……こんなに丁寧に仕上げてくれて、何だか嬉しい)


 佳奈がパスタを口に運ぶ。熟成の旨みがソースに溶け込み、自分でも驚くほど深い味わいになっていた。


「……すごい。私のチーズ、こんな味になるんですね」

「ええ。佳奈さんの作るものだからこそ、出せる味です」


 牛島の言葉に視線を合わせると、心臓が跳ねる。逃げたいのに、どうしても目が離せなかった。


「これからも、こうやって地元の味を一緒に育てていけたら嬉しいです」

「……はい」


 その返事は、自然と口からこぼれていた。


 帰り道、夕焼けに染まる阿久比の空を見上げる。胸の奥が、あたたかな予感で満たされていた。牧場に到着すると、牛島からメッセージが届いていた。


「今日は僕のカフェに来てくれてありがとうございました。生産者である佳奈さんに、お客様に提供している商品の味をちゃんと味わってほしくて」


 メッセージを確認し、お礼の返信を打っている時だった。「追伸」と書かれたメッセージが届く。


「えっと、それから、これは直接仕事とは関係ないんですけど……佳奈さんって、お休みとか空いている曜日や時間ってあります?」


(えっ? こ、これって、ど、どういう意味!?)


 自分の仕事を認めてチーズを使ってくれる牛島。一緒に過ごす時間、話す時間は楽しい。大切な仕事のパートナーとしてこれからも良い関係でいたい……そんな感情を持つだけで幸福感に満たされるのに、突然届いた予想外のメッセージ。


 佳奈はスマホの画面を見て、頬がまた熱くなる。胸の奥で、まだ名前のつけられない何かが芽吹いていくような気がした。

- キャラクター プロフィール -

名前:上原佳奈うえはらかな

職業:酪農家

好きな事:ロッククライミング

年齢:29

身長:159㎝(5'3")

体重:54㎏(119lb)

誕生日:7月13日

星座;蟹座

血液型:B


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