響け、ブザーのあとに(高橋陽菜)
女子高校生:陽菜の恋愛模様
愛知県東郷町のとある高校。高橋陽菜は大好きなバスケットボールをする為、今日も体育館の扉をあける。夏の陽射しが体育館の窓から差し込み、床にまぶしい四角を作っていた。バスケットボールが弾む乾いた音、バッシュがこすれる音、その全てが胸を高鳴らせる。陽菜にとって、部活の時間は一日の中でいちばん好きな時間だった。
そして陽菜には、入学してからずっと憧れている人がいた。
バスケ部の三年生、玉野先輩。レギュラーではない。ベンチから声を張り、誰よりも真剣に試合を見つめる補欠。けれども彼は、部活が終わった後でも一人でスリーポイントシュート練習をひたむきに続けていた。
「僕のスリーポイントが決まれば、みんながもっと楽になるから」
そう笑いながらシュートを打ち続ける玉野の横顔が、陽菜の心にずっと焼きついている。部活の仲間が帰っても、体育館にボールが弾む音が響き続ける。ひとつ、またひとつ。ゴールネットが軽やかに揺れるたび、陽菜の胸もなぜかきゅっと締めつけられるようだった。
――この努力があるから、この人は特別なんだ
陽菜は一人で練習を続ける玉野を見つめる。その時間は陽菜にとって言い様のない幸せな時間だった。
……そっか、私、この人のこと、きっと好きなんだ。そう気づいたのは、自分でも驚くほど自然だった。
時には勇気を振り絞って玉野にドリンクを差し入れとして渡す事もあった。
「玉野先輩! いつも、お疲れ様です!」
自分でも驚く程上ずった声。どぎまぎしながらドリンクを渡す陽菜を見て、玉野は「えっ?」と驚きながら感謝を伝えてくれる。そんな日は、玉野の笑顔を思い出すだけで学校の宿題も手につかず、夜も寝られなくなった。陽菜は、寝付けない長い夜を、枕をギュッと抱きしめて過ごした。
そして迎えた三年生最後の大会。
玉野はいつものようにベンチスタート。声を枯らして仲間を応援する玉野の姿に、陽菜はベンチの後ろから拳を握る。試合は序盤から相手に押され、点差はじわじわと広がっていった。そして試合が残り五分を切った頃だった。点差は二桁。誰もが厳しいと感じていた時間帯。
(……先輩を出して)
心の中で願った瞬間。監督の声が響いた。
「玉野、行ってこい」
コートに駆け出す玉野の姿が、陽菜の目に大きく映る。玉野はパスを受けると、ためらいなくスリーポイントラインの外から放った。ボールは美しい放物線を描き、ゴールに吸い込まれた。体育館中が沸き上がる。
二本目も決まった。歓声の渦に包まれる。だが、三本目はわずかにリングをかすめて外れた。その直後に、試合終了のブザーが無情に響く。負けてしまった。それでも、玉野の姿は誰よりも輝いて見えた。悔しさを隠さず、仲間に頭を下げる姿に胸が震えた。
試合を終えて肩を落とす仲間や後輩達を前に、卒業生たちが順番に挨拶をする。玉野は悔しさが見え隠れする笑顔を作りながら言った。
「今までありがとう。でも、ここから先はお前たちの代だ。俺たちができなかった分、頼んだぞ」
その言葉に後輩達から拍手が起こる。
――夕方。西の空がオレンジ色に染まり、校舎の影が長く伸びる。試合を終え、荷物を抱えて帰ろうとする玉野の背を、陽菜は駆け足で追いかけた。
胸が破裂しそうなほど高鳴る。手のひらは汗でじっとりと濡れていた。
「た、玉野先輩!」
振り返った彼の顔は、いつもより少し疲れて見える。けれど、その笑顔は変わらない。
「……試合、本当にかっこよかったです。私、先輩のこと、ずっと見てました」
声が震えた。言葉を選ぶ余裕なんてない。ただ、この気持ちだけは伝えたかった。
「私……ずっと、先輩のことが好きでした」
沈黙が流れる。夕焼けの光が二人を染める。玉野は驚いたように目を見開き、それからふっと笑った。
「ありがとう。その気持ち、凄くうれしい。伝えてくれてありがとう」
それだけを言って、彼はまた歩き出した。陽菜は立ち尽くす。返事をもらえなかった。それでも、後悔はなかった。胸の奥でじんわりと温かさが広がっていた。
――伝えられた。それだけで、今は十分だ。
見上げた夏空には、夕焼けの残光がまだ淡く残っていた。やがて夜に溶けてしまう色だとしても、確かにそこにあった輝きだった陽菜の心にも、その一瞬が永遠のように刻まれていた。
- キャラクター プロフィール -
名前:高橋陽菜
職業:高校生
好きな事:バスケットボール
年齢:16
身長:152㎝(4'12")
体重:45㎏(99lb)
誕生日:8月9日
星座:獅子座
血液型:O型
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