転ばせちゃった彼と、転がり込んだ恋(森友美)
女性介護士:友美の恋愛模様
森友美は、愛知県長久手市にある介護施設で介護士として働いている。まだ二年目で、ようやく仕事には慣れてきたものの、毎日は忙しく、心も体もくたくたになる。
それでも彼女には、ひとつの大切な息抜きがある。――フットサルだ。中学の頃からサッカーが好きで、今は地元の男女混合のチームに所属している。小柄だけれど俊敏さを武器に、仲間と汗を流す時間が大好きだった。
その日、友美のチームは他のチームと練習試合をすることになっていた。
「よろしくお願いします!」
互いに挨拶を交わした瞬間、友美は目を疑った。
(あれっ? あの人……)
相手チームの中に、見覚えのある顔がある。同じ介護施設で働く同僚――玉木だった。
(え、なんで!? なんで玉木さんがここに!?)
玉木は二十四歳。職場では寡黙で、必要最低限の会話しかしない人だ。無口だけれど真面目で、利用者からの信頼は厚い。そんな彼がフットサルのユニフォーム姿で立っているなんて、想像もしなかった。
「では、試合を始めます!」
掛け声とともに試合が始まる。序盤、友美は必死に走ったが、相手の勢いに押され気味。
そして、問題の瞬間は突然やってきた。
ドリブルで突っ込んできたのは――玉木だった。軽くフェイントを入れ、揺さぶられた友美の目の前をスルリと抜けようとする玉木に、反射的に手が伸び……がっしりとユニフォームを掴んでしまった。
(あっ!)
「えっ、ちょっ……! わっ!」
玉木の体は前につんのめり、派手に転倒した。すぐにレフェリーの笛が鋭く鳴り響く。
「ファウル!」
「ご、ごめん!」
「……いや、大丈夫」
玉木は苦笑しながら立ち上がった。けれど周りから注目され、友美の顔は真っ赤になる。
(やば……! 職場で会ったら絶対気まずい……!)
結局、そのまま試合は終わり、玉木とろくに話すこともできず解散してしまった。
――数日後。施設の休憩室でコーヒーを飲んでいる玉木を見つけ、友美は思い切って声をかけた。
「あ、あのっ。この前はほんとにごめんなさい! つい、手が出ちゃって……」
「はは、大丈夫だって。あんなのよくあることだし」
「でも、転ばせちゃったし……」
「気にしてないよ。むしろ楽しかった」
「え、楽しかった!?」
驚いて思わず出てしまった友美の大声に、玉木は肩をすくめ、どこか照れくさそうに笑った。
「俺、もともとサッカー部だったんだ。けど社会人になってから全然やってなくてさ。この前は知り合いに誘われて『試合メンバーが足りないから来てくれ』って、応援要員で入っただけなんだよ」
「そうだったんだ!」
「久しぶりにボール蹴ったら楽しくてさ。……本気でチームに入りたくなった。森さんのチームって今、メンバー募集してる? よかったら入りたいんだけど」
玉木の瞳が子供みたいに輝いていた。いつも無口で淡々としている彼が、こんな表情を見せるなんて。
「募集中だよ! あんなに上手な玉木さんなら大歓迎! 是非うちのチームに入ってよ!」
「……いいの?」
「もちろん! 歓迎するよ! 今度の練習、一緒に行こう!」
――こうして玉木は本当にチームに入る事になった。初練習の日、彼の実力にチームはざわつく。
(うまっ! 誰、あの人?)
(なになに? 友美ちゃんの同僚? もしかして彼氏?)
周囲の視線をよそに、玉木と友美は声をかけ合った。
「玉木さん、ナイスシュート!」
「森さんのパスが良かったから」
自然に笑い合う二人に、友美の胸はじんわり熱くなる。練習後には介護の話やプライベートの話をするようになり、周囲からは「二人って仲いいよね」と冷やかされることもしばしば。
「ちょっと! そういうのじゃないから!」
慌てて否定しつつも、玉木と目が合うと頬が熱くなる。
(……そういうの、じゃ、ないのかな)
自分でもわからなくなってきた。
ある日の練習後。夕暮れのコートを出たところで、玉木が立ち止まった。
「友美。ちょっといい?」
「ん? 何?」
「俺、ずっと伝えたかったことがあるんだ」
いつもと違う真面目な表情に、胸がどくんと跳ねる。
「俺……友美のことが好きだ」
静かだけど、真剣な声。友美の頭が一瞬真っ白になった。
「……ほんとに?」
「ほんとに」
玉木の視線はまっすぐで、冗談なんかじゃない。喜びで飛び上がりたい衝動を抑え、冷静さを装うように下を向いたまま、か細い声で答える。
「わ、私も……好きだよ」
「ほんと!? よかった」
顔を上げると、玉木の表情がぱっと明るくなっていた。
「ちょっと、な、なんでそんなホッとしてるのよ」
「振られたらどうしようかと思って」
「ふふ、考えすぎ」
「でも、ちょっと意外だったかな」
「何が?」
「もし返事がOKだったら、友美はもっと喜んではしゃぐかと思ったから」
「そ、そんな訳ないじゃん! 私だってそれなりに淑女でレディなんだから!」
(なっ! み、見透かされてる!?)
「それは失礼しました」
笑い合いながら、自然と二人の距離は近づく。
「じゃあ友美? 今度の休みにさ。地球博記念公園、一緒に行かない?」
「え、それってデートのお誘い?」
「……そうなるな。初デート。二人きりで」
「……う、うん、いいよ。行こっか」
春風が心地よく吹き抜ける夕暮れ道を並んで歩きながら、友美は思った。――あのとき玉木の服を掴んで転ばせなければ、こんな未来はなかったかもしれない。偶然のファウルが、私たちを結びつけたんだ。これからの日々は、きっと少しずつ変わっていく。
- キャラクター プロフィール -
名前:森友美
職業:介護士
好きな事:フットサル
年齢:20
身長:152㎝(4'12")
体重:43㎏(95lb)
誕生日:4月3日
星座:牡羊座
血液型:AB型
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