リアル恋愛はスクリプト通りにいかない(山崎智子)
ゲームプログラマー:智子の恋愛模様
ゲーム会社で働く山崎智子、二十歳。コードとエラーにまみれた日々の中、ある朝突然、上司から声をかけられた。
「智子ちゃん、次の社内コンペ、新作のテーマは恋愛シミュレーションに決まったから。プログラマー兼企画担当として、ぜひ参加してね」
「れ、恋愛シミュレーションですか!? わ、私、そういうのは……っ」
正直、心臓が止まりそうだった。智子は、恋愛というものにまるで縁がなかった。男友達は少なく、専門学校時代はもっぱらプログラムとゲームの世界に没頭していた。告白された経験もなければ、自分から誰かを好きになったことすらない。現実の男性と話すより、画面越しのイケメンキャラと会話する方がずっと安心だった。
そんな智子が相談相手に選んだのは、他部署の若手企画マン・小磯健一。二つ年上で、誰にでも明るく、親しみやすい雰囲気を持つ彼は、ちょっと距離感がおかしいくらいフレンドリーなところがあった。
「恋愛ゲームの参考に、ちょっと話聞かせてもらえませんか?」
「いいよ、恋バナってやつでしょ? 任せて! 今日、飲みに行く?」
その夜、ふたりは居酒屋に向かった。智子にとっては初めて、男の人と二人きりで飲みに行くという事実に、入店前から心臓がバクバクしていた。
――案内されたのは、まさかのカウンター席。しかも、距離が近い。
(えっ、こんなに近いの……?)
「まずは、お疲れ!」
「お、お疲れさまです……」
グラスを合わせ、乾杯の音がカラン、と響く。 健一は笑いながら、お箸を取ってくれたり、料理を分けてくれたり、自然に腕が当たったり――とにかく距離が近い。時折、目を覗き込むようにじっと見つめられると、智子の胸がじわっと熱くなった。
「恋愛ゲームってさ、やっぱり“ドキドキ”が命じゃん?」
「ド、ドキドキ……ですか……」
(いま、その真っ最中なんですけど!?)
心臓の音がうるさい。話すたびに、頬がどんどん熱を帯びていく。
――その夜から、健一とのやりとりはそのまま企画のヒントになっていった。
「天然で懐っこくて、ちょっと距離感が近すぎる男子」
「飲みの席でドギマギするヒロイン」
実体験をもとに、スクリプトが自然と浮かび上がってくるのが、自分でもちょっと面白くて、楽しかった。
ある日、健一がふと話しかけてきた。
「この前の会議でさ、智子ちゃんのヒロイン設定、めちゃくちゃ評判良かったよ。リアル感がすごいって」
「そ、そうですか……よかった……」
胸の中に、ほわっと温かいものが広がっていく。それは小磯との関係が深まるにつれて、智子の中に生まれ、着実に成長している感情だった。
(ゲームの参考だけじゃ……もう足りない)
「……私、もっと知りたいです。小磯さんのこと」
それは、智子が“ヒロイン”として初めて発した、本物の“選択肢”だった。健一は微笑み、ゆっくりと目を細めた。
「じゃあさ、今度はゲームじゃなくて、ほんとにデートしようか」
「そ、それ……ゲームのセリフに使ってもいいですか?」
「もちろん。でもさ――現実の方でも、ちゃんと実現してほしいな」
(も、もう無理……!)
甘すぎて、ドキドキが止まらない。まるで少女漫画の主人公になったようだった。それからというもの、ふたりは週に一度のペースで“企画打ち合わせ”という名のデートを重ねていた。
ある夜、いつもの居酒屋で、健一が突然言った。
「智子ちゃん、キスしたことある?」
「ええっ!?」
いきなりの質問に、顔から湯気が出るかと思った。
「えっと、その……それ、答えないとダメですか?」
「その反応、可愛すぎる。ゲームにそのまま出してもいいんじゃない?」
真っ直ぐな目でそう言われて、ドキドキが加速する。ふと視線が彼の唇に吸い寄せられる。
(もう……想像しちゃうじゃないですか!)
居酒屋を出た帰り道、健一がふいに智子の手をぎゅっと握った。
「さっきさ、キスの話したじゃん?」
(て、手ぇ!? ……で、何!? キスの話!?)
頭の中で警報が鳴る。そんな智子をよそに、健一は柔らかい声で続けた。
「俺、智子ちゃんのこと、ずっと気になってた。智子ちゃんと会う機会が増える度に、智子ちゃんの事を考える時間が増えていって……。いつか、ちゃんと恋人同士になって、キスできる関係に――いや、ごめん、もっとちゃんと言うね。智子ちゃん、俺と付き合ってもらえませんか?」
……ボンッ!
智子の思考は、爆発とともに吹き飛んだ。
「えっと、その……突然すぎて、頭が追いついてなくて……でも、気持ちはすごく嬉しいです。ちゃんと考えて、お返事します」
数日後の休日。ふたりは桜並木の下にいた。愛知県大口町、五条川の桜並木。地元では有名な桜のスポットだ。満開の桜が風に揺れ、花びらが踊るように空を舞う。
「小磯さん、私……あなたと、恋愛したいです」
それは、智子にとって初めての告白だった。ゲームの中の恋ではなく、自分の意志で選んだ、本物の“エンディング分岐”。きっとこれは、恋愛ゲームなんかより、ずっとリアルで、甘くて、心が揺れる物語のはじまり。
画面の外で始まった、世界にひとつの“スクリプト”。智子はそっと桜を見上げ、温かな未来を思い描いた。
- キャラクター プロフィール -
名前:山崎智子
職業:ゲームプログラマー
好きな事:パン作り
年齢:20
身長:155㎝(5'1")
体重:45㎏(99.2lb)
誕生日:11月7日
星座:蠍座
血液型:A型
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