表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

22/81

ワインと嘘と、ほんとうのこと(橘美和子)

ソムリエ:美和子の恋愛模様

 愛知県北名古屋市のレストラン「ル・シエル」は、郊外にありながら予約の絶えない人気店だ。木の温もりを活かした内装に、季節の食材を取り入れたコース料理。そして料理に寄り添うワインのセレクトを任されているのが、ソムリエの橘美和子だった。


 美和子は、つい先日、三十歳を迎えた。誕生日の夜、親友のケイコと名古屋の小さなビストロでグラスを傾けていた。


「ありがとう、ケイコ……でも、なんか30って響き、妙にずしっとくるよね」

「わかる。でもさ、いい加減、水野さんとくっつきなよ!」

「え……!」


 ケイコはワイングラスを揺らしながら、にやりと笑った。


「ふたり、職場でも公認でしょ? 息ぴったり、空気感も穏やかで。もう、話を聞かされるこっちがじれったいってば。あんた達が両想いじゃなかったら、誰が両想いなのよ」

「でも健太くん、そういうの一切口に出さないし……」


「だからよ! 作戦決行しましょうよ! 次の店が定休日の前日の夜、勤務後にふたりで飲みに行くの。で、美和子が酔わせて……そのまま介抱って名目で水野さんの部屋へ連れてく」


「えっ、それって……そういうこと? それはちょっと……ズルいって言うか、大胆すぎない?」

「既成事実、作っちゃえばいいのよ! 30ってそういうことする勇気も大事じゃない?」


 大胆すぎる作戦に、美和子はグラスの縁を指でなぞりながらため息をついた。だけど、心のどこかで、その“ズルさと大胆さ”に期待している自分もいた。

 

 作戦決行の夜。ル・シエルの営業が終わる頃には、美和子はワインセラーの前で、何度も深呼吸を繰り返した。なのに、胸のざわつきは消えなかった。すると、厨房から現れた健太が軽やかに声をかけてきた。


「美和子さん、今日もお疲れさま。……あ、今月誕生日だったよね。おめでとう」

「えっ……ありがと。あの、よかったら今夜、一杯どう?」

「うん。行こう。今日はちょうど、ゆっくりしたかったんだ」


 ふたりが向かったのは、美和子がこっそり選んだ名古屋の小さなビストロ。木目のテーブル、灯のようなオレンジの照明。にぎやかすぎず、静かすぎず、ふたりの距離がちょうどよく保たれる空間。


「赤でいい?」

「うん。おすすめある?」

「ブルゴーニュのピノ・ノワールにしようか。今夜は、やさしいのがいい気がして」


 選ばれたワインが注がれる。グラスを傾けるたび、ふわりと広がる香り。ふたりは、少しずつ言葉を重ねていった。仕事のこと、学生時代の思い出、最近観た映画。健太の頬は、グラスを重ねるたびにほんのりと赤みを増していた。


「……俺、ほんとお酒弱くて。もう顔熱いよ」

「ふふ、知ってる。だから今日は、ちゃんと介抱してあげる」

「え?」

「なーんでもない。さ、もう一杯どうぞ?」


 ふたりで笑った。こんなふうに、肩の力を抜いて隣にいられるのは、もしかすると健太だけかもしれない。

 

 ビストロを出たあと、健太は案の定、ふらふらだった。


「……タクシー、呼ぶね。歩かせるのは無理そう」


 酔いに身を任せた彼を支えながら、美和子は胸の奥がじんわり温まるのを感じた。こんな時間が、ずっと続けばいいのに。


 健太のアパートへ着くと、美和子は玄関で靴を脱がせ、ソファまでなんとか運んだ。リビングには、本や小物がきっちりと整列されていて、几帳面な性格が伝わってくる。


「お水、持ってくるね……上着、脱がせてもいい?」

「……うん……ありがと……」


 彼はぐったりとソファに沈み込み、やがて静かな寝息を立てはじめた。美和子は、水の入ったグラスを置き、彼の顔をそっとのぞき込んだ。


(……ああ、寝ちゃった)


 思わず苦笑する。ケイコの作戦は、見事に失敗だった。


(……私、なにやってるんだろう)


 落ち着いた空間の中で、ぽつんとひとり。覚め始めたワインの余韻と、あたたかい部屋の空気が、心にじわじわとしみこんでくる。

 ――と、そのとき。


「……美和子が……すきだ……付き合って……ほしい……お酒、弱くて……ごめん……」


 寝言。でも、それは明らかに、本心のにじんだ言葉だった。


「……なによそれ」


 気づけば涙が浮かんでいた。こぼれるのは、うれしさか、安堵か。美和子は、彼の頬にそっと手を当てて、微笑んだ。


「……ありがとう。ちょっと遅いけど、誕生日プレゼント、もらっとくね」


 美和子はそのまま、眠っている彼の唇に、自分の唇を重ねた。そして、彼の顔を少しだけ見つめた後、小さな付箋をテーブルに残して、そっとドアを閉めた。


《今日はありがとう。おやすみ》


 部屋を静かに出ると、春の夜風が少しだけ冷たかった。


(こんな気持ちじゃ、帰っても眠れない……)


 そのまま彼女は、名古屋駅近くの、夜通し開いているお気に入りのワインバーへ向かった。グラスに注がれる赤ワインを見つめながら、美和子はそっと微笑んだ。


(次にふたりで会う時は、ちゃんと気持ちを聞こう)


 夜明け前の空に、ワインの赤がゆっくりと溶けていった。

- キャラクター プロフィール -

名前:橘美和子たちばなみわこ

職業:ソムリエ

好きな事:ミュージカル鑑賞

年齢:30

身長:160㎝(5'3")

体重:54㎏(119lb)

誕生日:6月18日

星座:双子座

血液型:A型


このサイトでは可愛い女性キャラクター(AIで生成)のイラスト・動画・エピソードを紹介しています。是非、あなたの「推し」を見つけてください!


・彼女のショートアニメ配信動画はコチラ↓

https://youtube.com/shorts/9b3M2VHEFkI


・彼女のイラスト配信動画はコチラ↓

https://www.youtube.com/shorts/h2QMUla7RRc


・彼女のイラストデータをこちら↓のサイト(SUZURI)で配信しています。携帯電話の壁紙等にご利用ください☆

https://suzuri.jp/teruru4040/digital_products/60923


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ