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潮風のスタートライン(坂本綾香)

スポーツリポーター:綾香の恋愛模様

 伊良湖の海辺に、潮の香りと緊張感が満ちていた。

 「トライアスロン伊良湖大会」。プロからアマチュアまで幅広く参加するこの大会は、田原市の名物イベントのひとつ。スポーツリポーターとして取材に訪れた坂本綾香は、スタート地点の海辺で、ゆるやかに波打つ海面を見つめていた。


 ――水泳が好きだった。


 高校時代は県大会で上位入賞も果たしたこともある。でも、全国、そしてその先の舞台には手が届かなかった。水泳の推薦枠での進学も叶わず、気がつけば夢の終わりは、思っていたよりも静かに過ぎ去っていた。


 そんなことを思い出しながら、視線をふと動かしたときだった。


 ――あの背中は。


 ウェットスーツをまとい、波打ち際で軽く肩を回すひとりの男性。鍛えられた筋肉、リズムの整ったストレッチ、泳ぎ慣れた者だけが持つ落ち着き。


(まさか……水嶋先輩?)


 高校の水泳部時代、ずっと背中を追いかけていた人。スピードも、フォームも、笑顔も、すべてが眩しかった。県強化選手に選ばれ、期待されていたけれど、大学進学後に水泳を離れたと聞いていた。でも、こんな場所でまた出会うなんて。


「彩香さん、インタビュー準備いいですか?」


 カメラマンの声にハッとする。


「あ、はいっ!」


 慌ててマイクを握り直し、取材に集中しようとする。……だけど、頭の片隅からあの姿が消えてくれない。取材エリアを巡る中、一般参加者リストに目を通した綾香は、ある名前を見つけて動きを止めた。


 ――水嶋陽介(個人参加)


(……やっぱり、本当に先輩なんだ)


 そして、スタートの号砲。選手たちは一斉に海に飛び込み、波間に消えていく。その中に、確かに水嶋先輩の姿があった。彼の泳ぎは、変わっていなかった。しなやかで、無駄がなくて、美しい。波と調和するように、すっと水を割っていくフォーム。思わず胸が熱くなった。


(私は、どれだけあの背中を見つめてきたんだろう……)


 レース後、フィニッシュエリアで再会したのは偶然じゃない。綾香は無意識のうちに、彼がゴールする時間を見計らってその場に立っていた。


「……水嶋、先輩?」


 振り向いたその瞳が、まっすぐ彼女を見た。


「綾香? やっぱり、そうだよな。最初、気のせいかと思ってたけど……。まさか伊良湖で再会するなんて」


 汗と潮に濡れた額をぬぐいながら、彼は懐かしそうに笑った。その笑顔は、昔のままだった。いや、むしろ大人びて、優しくなっていた。


「インタビュー、お願いできますか? 今日のレースについて。……あと、一般参加者として、あなた自身についても聞きたいです」


 彼は一瞬だけ驚いた顔をしたが、すぐに静かに頷いた。水嶋は丁寧に言葉を選びながら、綾香の問いに答えてくれた。その真剣さが、胸に響いた。でも、カメラの前で少し緊張する水嶋の姿は、綾香には新鮮だった。


 すべての取材が終わり、録音機材もカメラも置いたあと、ふたりは海岸沿いのベンチに並んで座った。


「先輩がトライアスロンに出てるなんて、本当にびっくりしました。……水泳、続けてたんですね?」


「うん。今はインストラクターやってる。子どもたちに教えながら、自分のペースで泳いでるよ。だけど、それだけじゃ物足りなくてさ。新しいことに挑戦したくなって、トライアスロンを始めたんだ。もう、気がつけば3年目かな」


(新しいことに挑み続ける姿勢……やっぱり先輩は、ずっとカッコいい)


「……すごいです。先輩の泳ぎ、今日もすごく綺麗でした。やっぱり、先輩は私の憧れです」

「ありがとう。綾香は……全国やオリンピックは考えなかったの?」


 その問いに、綾香は少しだけ海を見つめた。その視線は、どこか遠い記憶をたどるようだった。


「行けるところまでは頑張ったけど……私には届きませんでした。でも、水泳は趣味で続けてます。今はこうして“伝える”側で、頑張ってます。伝える仕事も、けっこう面白いんですよ」


 言葉にしてみると、不思議と心が軽くなった。過去の悔しさも、彼に話せたことで、潮風に溶けていくようだった。


「……そっか。俺、あの頃綾香のこと、すごいって思ってたよ。小柄なのに、フォームもブレなくて、気持ちで押し切るタイプだったから。なんで声かけなかったんだろうな、もっと」


 不意に、潮風が強く吹いた。綾香の髪が舞って、彼の肩に触れた。


「声……かけてくれてたら、たぶん泣いてました」

「……じゃあ、今日声かけてよかった。でも、今日は泣かれると流石に困るけど」


「ふふ。先輩、そんな冗談も言う様になったんですね」

「水泳教室は、子供や保護者とのコミュニケーションが命だから」


 微笑む彼の瞳が、綾香の目を見つめる。ドクン、と胸が跳ねる。この潮風も、さっきのゴールも、全部が新しい「スタート」のように感じられた。


「……水嶋先輩」

「うん?」

「また、会えますか? 取材でも競技でもなくて……あなたのこと、もっと知りたいです」


 彼は、少しだけ目を細めて笑った。


「……いいよ。でも、その代わり」

「代わり?」

「今度、俺と一緒に泳いでくれる?」


 綾香は返事をしなかった。けれど、頬にじんわりと赤みが差し、静かにうなずく気配は伝わった。


 午後の光が、伊良湖の海にきらめいていた。夢は、終わったはずだった。でも、人生にはきっと——こうしてまた始まる、もうひとつの物語がある。


 ――潮風の中、ふたりはゆっくりと、新しい季節を歩き出していた。

- キャラクター プロフィール -

名前:坂本綾香さかもとあやか

職業:スポーツリポーター

好きな事:水泳

年齢:21

身長:163㎝(5'4")

体重:53㎏(116.8lb)

誕生日:4月30日

星座:牡羊座

血液型:B型


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