自分の証明
良ければよんでね!
もっと強くならないとダメだ。
誰よりも速く、誰よりも重く、竹刀を振り下ろさなければいけない。
夏のインターハイ予選が始まろうとしている。勝たなければ、意味がない。
それだけが、俺が生きていることを証明してくれる。
歩道から見える葉桜が風に揺れていた。
散り残った花びらが、やけに目についた。
「お兄ちゃん!お兄ちゃん!!」
「ん?どうした?」
「さっきからずっと呼んでたのに!今日ね、ブランコでね……」
高校からの帰り道、その道中にある小学校にいるメイを家に送るのが毎日の日課だ。そしたら、すぐに道場へ戻る。1日だって無駄にできない。
「それでね、あ!猫ちゃん!!」
今日の稽古は、基礎メニューから。まずはそうだな。
ん?メイの声が途切れた。
「メイ?」
視線を道路に向けると、小さな猫が車道に飛び出している。
そして、そのあとを無邪気に追いかけるメイの姿があった。
「バカっ!! メイ!!!」
「お兄ちゃん!!」
その瞬間ーー
角から、トラックの光が、滲むように現れた。
すでに走り出していた。極限まで大きく伸ばした両手が....
メイと猫を捉えた。
その勢いで、前に大きく押し出した。転がりながらも、メイと猫は歩道に乗り上げた。
バランスを崩しかけながら、右足を踏み込んだその瞬間。
俺は……
「おにいちゃーーーん!!!!」
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