これから少しずつ教えてあげます
「このまま部屋の温度下げたら、彼も凍りついちゃうぞ」
「だいじょうぶです」
「なぜ?」
「魔法の使い方を教えてあげます。ねえ? 喜留太郎さん」
「え?」
「さっき、あたしの胸を感じましたよね?」
「感じました」
激情するサキュバス。
「なんだってー!」
殺気立つバンパイア。
「雪女とかいったかしら? あなた、死ぬ覚悟はあるの?」
「温かかったでしょう?」
「まあ、そうだな」
「その温もりは、喜留太郎さんが発した魔力です」
「ちょっと、なにを言っているのか…?」
「あたしは雪女です。冷やすことはできても温めることはできません。しかし、雪で造られた鎌倉の中が暖かい様に、あたしは喜留太郎さんに、熱を保温する魔法の手助けをしました。喜留太郎さん。今、寒いですか?」
「そうでもないな」
「もっと、熱くなってください」
「熱く?」
「そうです。全身から熱があふれるイメージで」
俺は、火照る体をイメージした。みるみる、身体が暑くなる。
「温かくなってきたよ」
「良い感じですね。手を出して、指を立ててください」
喜留太郎は、右手を広げ、人差し指を立てる。
「指先に集中してください」
「はい」
「蝋燭に火が灯るようなイメージで、指先に火を灯してみましょう」
喜留太郎は指先に集中する。突然、指先に蝋燭の様な火が灯った。
「できた!」
「たいへん良くできました」
雪女は笑顔で褒める。
「次は、その火を大きくしてみましょう。体の内からこみあげてくる魔力を、火に点火してくだい」
喜留太郎は、体中にを巡ってうずく感情を、指先に集めた。そのとたん、蝋燭の様な火は、火炎放射器の様に、火を噴き出した。
「ぎゃああああ!」
ビックリしたのは、喜留太郎本人だ。雪女が手を握ると、火は消えた。
「ビックリした。あれはなんですか?」
「喜留太郎さんが持っている魔力。これから少しずつ教えてあげます」