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■2024年9月30日
近所の立派な田んぼも、やってた爺さんが年でやめてしまった。ここらは少し早くて、今頃聞こえるコンバインの音も聞こえない。
一年で草ぼうぼう、二年で荒れ野となって、もう耕作放棄地とすら分からない。
秋の涼しい風。今では稲穂の代わりに、ススキの穂が揺れるだけだ。
お題・芒
■2024年9月30日
鏡を見ると口の中に小人がいた。いつの間に住み着いていたんだ。私は口の中へ呼びかける。
「出て行ってよ!」
すると観念して小人が出てきた。
「鏡を見たくて出てきたのが運の尽きだな。バレちまった」
「どうして鏡を見ようと?」
「オイラの口の中にも、さらに小さな人が住んでるみたいなんだ」
お題・アルプ・ルアハラ
■2024年10月1日
こんな場所、知らなかった。高めの本棚どころか、天井狭しと古書が詰まっている。まるで本でできた洞窟の中を潜っているよう。
しかも研究家の私としては、どれも涎の出そうなタイトルばかり。
「こんな店があったなんて」
紹介してくれた友人は得意げだ。
「ガイドブックにもない。な、穴場だろ?」
お題・書物の洞窟
■2024年10月1日
魔女は恋をした。近くの村に住む気の良いだけの男へ。
魔女は万能の魔力に、永遠にも等しい命を持つ。それでも恋心だけは思い通りにならない。
やがて男は村娘と結婚し、子をなして、寿命を迎えた。
あれから数百年。未だに魔女は初恋を抱き続けている。
お題・魔女の初恋
■2024年10月1日
夫と息子に私、家族で休日に遊園地。まるで理想の家庭。けど私は嘘をついている。息子は托卵、浮気相手との子だ。
一度、嘘をつくと、辻褄合わせのため、さらに嘘をつくことになる。嘘は疲れる。
そして托卵だと、恐らく夫も気付いている。果たして嘘に疲れて先にボロを出すのは、どちらなのか。
お題・ウソとカッコウ
■2024年10月1日
傲慢な王様のいる国に、ある時、じゃらじゃら鎖と一緒に碇が落ちてきた。見ると太陽から伸びている。以来、何年も太陽は動かない。とうとう王国は生きる物すらいない、砂漠と化した。すると砂の海に満足したのか、鎖と碇を巻き戻すと太陽は去って行った。
これも王様が傲慢だからと人々は噂した。
お題・天の碇が落ちる
■2024年10月2日
神の託宣が下り、自分が勇者に選ばれた。騎士として国のために戦ってきた身だ。不満はない。だが一緒に下ったお告げ。魔王を討伐したら公爵令嬢と結婚しろとは、どういうことだ。あのワガママ娘と? 冗談じゃない。いくら神でも人の気持ちまで強制しないで欲しい。
というわけで即求婚しておいた。
お題・神に選ばれし勇者の結婚
■2024年10月2日
逃げ場のない部屋に集められた男女。みな太っている。モニターに仮面の男が現れた。
「私の命令を聞いてもらう」
間違いない。デスゲームだ。
「まずは食事をしよう。サラダだ」
人々は悲鳴をあげた。マヨネーズをよこせ。このままじゃ殺される!
「いや痩せないと成人病で死ぬのはあなたたちだよ?」
お題・低カロリーデスゲーム
■2024年10月2日
使った者の手元に戻る魔法の投げナイフが僕の相棒。だけど宝の分配を巡り、ダンジョン奥で仲間に裏切られた。背後から刺され、殺されてしまう。
後に仲間たちはダンジョンを脱出。僕は怪物に襲われて死んだと、涙ながらに説明した。
その頃、僕の遺体はナイフと一緒に使用者の元へと飛んで行く。
お題・戻るナイフ
■2024年10月2日
遂に作家デビュー。いきなり話題作となり、映画化の話まで出た。そんな折、師匠が引退するとの連絡が来る。
こう言っては何だが、師匠とは気も趣味も合った。あらゆる教えを身につけたという自信がある。なのに、なぜ引退なんて?
「僕らは気が合いすぎた。僕の欲する作品を、君が先に書いてしまう」
お題・気の合いすぎた




