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■2024年5月9日
精読、速読、音読、黙読、世に読書法は数あれど、秘読を知る人は多くないだろう。時の権力に禁書とされた本を読むため、隠れたまま本を流通させるかのノウハウがそこには書かれている。
しかしさすがは秘読というだけあり、それがどうやって成されたかの手段は闇から闇へ。誰も知らない。
お題・秘読
■2024年5月9日
穴場の動物園があるというから、何ということはない。モグラにウサギ、巣穴が展示されている。そっちの穴場かよ。
そして今は真っ暗な部屋。やたら湿っぽく、ぬらぬらしている。最悪だ。一体ここはどこなんだ。看板にはこうあった。
「動物の腹の中」
お題・穴の中の動物園
■2024年5月9日
漫画家と編集の打ち合わせ。
「これは、かの有名漫画に出て来る電波塔。それは古典的名作の電波塔」
「で、一体何を」
「過去から現代まで電波塔の登場した漫画を集めてのオマージュをやるんです!」
なるほど。編集は納得した。どうやら自分は彼を追い詰め過ぎたらしい。
変な毒電波を受信している。
お題・電波塔クロスオーバー
■2024年5月9日
初恋だったわ。でも父が都会の金持ちと結婚を決めてしまった。嫉妬深い人でね、写真やら、彼を思い出させるものは全て捨てさせられたわ。この写真立てだけが唯一、彼の面影。
「けど、お婆ちゃん。この写真、風景だけで誰も写ってないよ」
「ええ、だから写真立てを手作りしてくれたのが彼なのよ」
お題・写真立ての君
■2024年5月9日
星明かりの夜。男が散歩をしていると、湖で釣り人と出会った。
「何をお釣りで?」
「星を釣る。こんな静かな夜なら、星も油断して地上まで下りてくるのだ」
なるほど、釣り糸は鏡のような湖面に垂れている。
ところが夜露に冷えた男が大くしゃみ。途端に流星群が降り、空は真っ暗になってしまった。
お題・流れ星の釣り
■2024年5月10日
私は駅のベンチに座り、朝の様子を見る癖がある。さっきまでは背広の並ぶ通勤電車。今度は学生服の並ぶ通学電車。電車はまるで似た服を吊るしたクローゼットだ。
私は想像する。電車は一日の運行が終わると、電車のクローゼットに吊るされ仕舞われるのだ。きっと。
お題・電車のクローゼット
■2024年5月11日
「あ、まただ」
見合いで結婚してから十年。平穏な家庭。けど私はこの人の何を知っているのか。
買い物の途中、偶然会った同僚と話す顔、私はこんな風に彼が笑うと知らなかった。
「どうかした?」
心配して私の顔を覗き込む。でも、きっと他の誰も正面から見る、彼のこんな顔は知らないはず。
お題・知らない横顔
■2024年5月11日
「ホッチキスは会社の名前で、正式名称ではないんだ」
「確かステープラーだっけ?」
「更に言うと、コの字の金具こそがステープルなのだけど」
「あれが主役か」
「そしてステープルとは金属の留め具のことであり、更に柱を建てるのが……」
「おいおいホッチキスと違って、話の歯止めがきかないな」
お題・ホッチキスから見た世界
■2024年5月11日
科挙にて官吏を目指す学生が、効率的な勉強にと使ったのが「朝机」である。科挙試験の直前になると、もう二度と学生にはならぬと朝机を斧で叩き壊す風習があったが。そうそう合格するものでなし。
後にこれがステマとバレて、怒った学生たちにより家具屋の方が打ち壊しにあった。
お題・朝机破
■2024年5月11日
大カラスが翼を広げると、天は夜になる。大カラスの好物は太陽だ。秋に熟した太陽を食べだし、冬には食べ終わる代わりに、新しい太陽が実る。その頃、大カラスはふっくら太ってるから、夜が長くなる。
新しい太陽は青くて食べられないから、夏になる頃に大カラスは痩せ細り、夜が短くなるって寸法さ。
お題・夜のダイエット