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■2024年9月8日
僕は悪魔を召喚した。
「悪魔との取引には代償が必要になるぞ?」
「望むところだ」
「では松竹梅のどのコースにする?」
とパンフレットを渡された。
「じゃあ梅で寿命を三年渡そう」
「了解した」
と悪魔が消えて行く。しまった、願いを言ってない。寿命を取られただけか。なんて悪魔のような奴だ。
お題・悪魔の取引
■2024年9月8日
モンスターの素材とは不思議なもので、加工するまでどうなるか分からない。女剣士は自ら倒した魔狼の皮を見て驚く。鮮やかな朱色だった。
「これで防具を作ったら映えるわよ、あなた」
冗談じゃない。派手なのは苦手なんだ。けど倒した当人が身につけるのは、古来の習わし。
女剣士は頭を抱えた。
お題・力の証明
■2024年9月9日
近未来。アンドロイドの人工皮膚に革新が起こった。データをダウンロードし、テクスチャーを自由に変えられるのだ。
すると困ったのは皮膚貼り職人。彼らは労働争議を起こした。
「ダウンロードで落としたデータでは、質が落ちる」
「アンドロイドにはやはり、人の手による温かみがないと」
お題・ダウンロード皮膚
■2024年9月9日
酒を暴飲した翌朝、夫が冷たくなっていた。村は葬式の支度で大騒ぎだ。そこへバンシー、泣き女と呼ばれる者もやって来た。
バンシーの正体は、魔力がないと里を追われたエルフだ。魔力がなくても不老長寿。幾世代にも渡り、死んだ人を憶え続ける。
「母は憶えていますか?」
訊くと泣き女は頷いた。
お題・私が死んでも憶えていてくれる人がいる
■2024年9月9日
私は毎日、植木鉢に水をやる。晴れの日も雨の日も。
昨日は重酸性雨。今日は砂嵐。明日からは太陽暴風による渇水が続くから、水分子の生成が大変だな。
人類が絶滅してから、たぶん一万年くらい。地上には地衣類すら見なくなった。けど私は植木鉢に水をやる。命令通り、いつか地上を緑に満たすため。
お題・枯れ地に花を咲かせましょう
■2024年9月9日
家族によく怒鳴り散らした。だから妻子には逃げられる。なんのと肉体労働やってたが、もう年。体調を崩して倒れた。
病院で気づくと、息子がいる。
「仕方ないだろ、他にいなかったんだし」
何様だと怒鳴ろうとしたら咳き込んだ。
「体調は戻しても、そちらの調子は戻さなくて構わないよ」
お題・調子は戻しても
■2024年9月10日
結婚したら、海の見える小さな家で暮らしたいわ。なんて彼女が言うものだから僕は頑張った。氷塊の彗星を落として、不毛の惑星に海を作り出す。嵐が起こって雷が落ち、今や原形質の生命のスープになってくれた。褐色の海なのは勘弁してもらうとして。
さあ次はここからペットの犬を作らないと。
お題・海の見える小さな家
■2024年9月10日
体育館裏に呼ばれたかと思ったら、いじめられた。
「やめてよ、どうしてこんなことするの」
すると、いじめっ子たちは大笑いする。
「顔が悪いからだよ」
思わず僕は彼らのことを、じっと見つめた。
「な、なんだよ」
「なるほど。確かに君たちは、いかにもいじめっ子という、悪い人相をしてるね」
お題・いじめ顔
■2024年9月10日
鞘から抜いただけで侍は理解した。こいつは人を斬らずにいられない妖刀だ。恐らくは誰かを斬らない限り、妖刀を手放すことは出来ないだろう。
「ならば妖刀よ、こんな人の斬り方は初めてではないか」
と侍は自らの腹を切った。
場所は人の来ない深山の奥深く。その後、妖刀は朽ち錆びていった。
お題・人斬りの妖刀
■2024年9月10日
n君はイケメンで、学園のキングなんて呼ばれていた。けど夏休みが終わると、付き合ってたギャルとも別れ、髪も黒く戻してしまう。
「いや俺、受験したいし」
皆が、じゃあ次のキングは誰かなんて話す。
「キングとか言っても、皆の玩具だよ」
と後に語ったn君は、自分で自分の王様になれたのだろう。
お題・学園のキング




