401~410
■2024年8月1日
魔王討伐の仲間を求めて勇者は神殿に来た。そこで見たのは、幼く見習いながらも、膨大な魔力を持つ聖女。彼女を是非仲間にと頼むも、神殿長に断られる。そして、こっそり見せてくれた。親からの手紙を抱きしめ泣いている聖女を。
「彼女にはまだ何の覚悟もない。だから、見習いのままなのですよ」
お題・まだ見習いの聖女
■2024年8月1日
隣領との戦が始まる。緊張で皆の表情が固い中、初陣の若君は満面の笑顔だ。
不思議に思った老将は尋ねてみる。
「若は豪気ですな」
「いやな、隣領といえば人質に取られた弟が、そのまま養子になっているだろう。奴も初陣らしい。会えると思うと嬉しくてな」
と刃を交わす支度をするのだった。
お題・戦中で会える
■2024年8月1日
軍用マッサージチェア? これのどこが。ガンホルダーがある。これだけでは軍用とは言えないだろ。
あっ、でも気持ち良いな。ああ~、背筋が伸びる~。
何? 将軍がコイツで背筋を伸ばしている間に、戦線も伸びきった。
縁起でもない!
お題・軍用マッサージチェア
■2024年8月1日
夏の日差しが強くなり過ぎて、遂に帽子では通用しない。日傘も面倒。結果、笠を誰もが使うようになった。
しかし笠では今いちダサい。そこでアパレルでは日傘帽子として売ることに。そのうち笠は忘れられた。だが名は略される。
親が子供にを声かけた。
「外出るならカサをかぶって行きなさい」
お題・夏帽子
■2024年8月1日
未来を映す魔法の鏡があった。噂を聴いたお妃様が鏡を覗くと、醜く老いた自分の姿がある。
「こんなの間違ってる!」
以来、お妃様はどうすれば醜く老いないか。ありとあらゆる手段を試した結果、体を壊してしまう。
人々はあんな鏡さえ見なければ、お妃様も美しいままだったろうにと噂した。
お題・曲げられた鏡像
■2024年8月2日
「悪のみを斬る聖剣」でもって勇者は魔王を討ち果たす。しかし権力を簒奪されるのではと恐れた王により、勇者は謀殺される。なにせ勇者は「悪しか斬れない」から、安心してなぶり殺しだ。
……ああその通り。
俺たちが戦っている相手の正体とは、その「悪である人類を皆殺しにする聖剣」さ。
お題・裏切りの聖剣
■2024年8月2日
「剣聖は剣を選ばず」というが、実際の剣聖は古今東西の妖刀魔剣を収集、使いこなしていた。死後も邸宅にはコレクションが残る。
だが近頃、邸宅から大事に隠された一振りが出てきた。それは手垢のついた単なる木刀。
誰も知るまい。幼い少年が剣聖を夢見るきっかけとなった、「良い感じの棒」だと。
お題・隠された憧れ
■2024年8月2日
そろそろ私たち夫婦にも子供が欲しいよねという話になり、市役所へ行くことにした。近頃は妊娠するにも許可が必要なのだ。
散々たらい回しされて、ようやく手続きが終わった。さあ妊活しなきゃ。
「あ、妊活はまた新しい課が出来ましたので許可を取って下さい」
役所も、面倒を産むのは早いのね!?
お題・お役所妊活
■2024年8月2日
工場勤めだと室内とはいえ、スレート屋根が焼けて屋外より暑くなる。だから昼休みの屋外、それも木陰は天国とすら言える。
夏の強烈な日で、陰はより暗く見えた。怪談の幽霊が出ても不思議じゃないくらい。
だが! 涼しくなるなら、幽霊でも今はドンと来いだけどな。さー、また午後から仕事だ。
お題・より暗い緑陰
■2024年8月2日
信じてもらえないだろう。故郷のバスはピアノで出来ていた。座席は鍵盤で、人が座って山道で揺れるたび、ぽろんぽろんと曲を演奏する。
さすがに今はバスも廃線になって、誰も存在すら憶えちゃいない。
ただバスがあった証拠に、今でもあの曲を忘れていない。たまに歌いながら故郷を思い出すんだ。
お題・ピアノのバス




