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■2024年5月3日
アパートの我が部屋に魚が出没しだした。魚どもは水中でもない部屋の空中を自由自在に泳ぐ。種類は色々でフナ、ドジョウ、アユ、ピラルクなんて出たこともある。
ただ、どの魚も淡水魚だと気づいてからは、食事の塩分を控えるようになった。
お題・暮らしの中の淡水魚
■2024年5月4日
ヘンゼルとグレーテルは森の奥で魔女の家を見つけましたが、
「この家、屋根が生魚で出来てる!?」
「しかも何日も経ってるのか腐ってる。くさっ」
とうとう魔女のところには誰も訪れませんでしたとさ。
お題・おすしの家
■2024年5月4日
いつも、夕食を作っている頃合。かつかつと革靴の硬質な足音。彼が仕事から帰ってきた。安アパートの二階が私たちの住まい。
「いい匂いだな~、ああ腹減った」
そろそろかな。私は安普請の薄い壁から耳を離すと、お隣さんちへ夕飯のお裾分けをしに行った。
お題・足音が聞こえる
■2024年5月4日
積読が増えるのには理由がある。実は本にも雄雌の区別があるのだ。だから雄雌を一緒にしておくと繁殖して、積読タワーが高くなってしまう。そして私は本の雄雌鑑定士の資格を持っていた。だから絶対に雌雄を別にして積読をしている。ところで最近、百合小説が増えてきた気がするのは錯覚だろうか?
お題・本の性別
■2024年5月5日
不愉快な態度の人にも、AIはストレスを感じない。結果、接客だけでなく、全てのコミュニケーションはAIが代行することになった。今や人と人とが話すことはない。そもそも人類は配慮という文化を失っている。
……という社会を形成したのは、人類のためとAIが配慮してくれたおかげだった。
お題・親切なAI
■2024年5月5日
彼は運命の人。私のことを何でも気付いてくれる。
「悩み?」
「部屋から隠しカメラが見つかって……ストーカーかな?」
「それは恐いね。今度、信用できる業者に頼んでおこうか」
「助かる~」
彼女をストーキングするのに最高の位置、それは彼女の恋人だった。今度カメラの場所を変えとこう。
お題・ここなら見つからない
■2024年5月5日
仕事のデスマーチは深夜に及んだ。まだ真っ暗だけど、東の空が薄ら明るくなった頃
「やっと終わった~」
「ああ、腹減りましたね」
「そういや夕飯もちゃんと食べられなかったしな。どこか行くか」
「はは、これ夕食と朝食どっちになるんだろ」
「しかしご苦労様」
「なあにチョロいもんですよ」
お題・深夜朝飯前
■2024年5月6日
片付けながら親に言われた。
「もう中学だし、来年からは構わないよな」
生返事で了承する。けど本当はまだやって欲しかった。
鯉のぼりも、武者人形も割と気に入ってたんだけどな。そうか、これでもう俺も「こども」とは言えなくなったのか。
お題・こどもの昨日
■2024年5月6日
「連日残業だというのに元気だねえ」
「若いですから!」
課長と一緒なら、どれだけでも。
「自分なんか家族だけが支えだよ」
スマホには奥さんや子供たちとの、暖かな家族の待ち受け。それを見た瞬間、言葉を失い、夕食に誘いそびれてしまった。
ああ、明日も明後日もあなたと残業できればいいのに。
お題・もうしばらくここにいて
■2024年5月6日
今じゃ、そよ風だがな。若い頃は手の平に竜巻が吹いてたもんよ。だけと竜巻がいきなり出来た時は大変だったよ。何せ物を持てない。仕事にも就けなかった。
そんなある日、町を台風が襲った。けど俺の竜巻で消し飛ばしてやったのよ。その時いってやったもんさ。「任せろ、俺に『手』がある」とね。
お題・手の平に発生した竜巻




