21~30
■2024年4月30日
「ああ低気圧が来てるな。頭が痛い」
「大丈夫か、温めると良いらしいぞ」
「そんなことしても意味ないよ」
「なんだい心配してるのに」
「だってシェルターの外では突風がビルをなぎ倒し、雷が地上を焼き尽くし、雹の弾丸が全てを打ち砕いてると思うと」
「確かに頭が痛いな」
お題・低気圧頭痛
■2024年5月1日
「羊誘導装置を作ったよ」
「ほう、見せてくれ」
サイレンが鳴ると牧場中の羊が呼び寄せられる。
羊が一匹、羊が二匹……
「おい起きろよ」
「あれ、もう夕方じゃないか。確か何の装置だったか。タイムマシンか!?」
お題・羊のタイムマシン
■2024年5月1日
「学校生活はどうだ」
「校門のすぐ前に踏み切りがあってさ。ギリギリに登校すると、あそこで待たされて遅刻するんだよ。もう最悪」
という話すら羨ましいと感じる。
だって自分は受験で足切りされて、通うことも出来なかったのだから。
お題・学生踏切
■2024年5月1日
取り寄せた古書から切符が出てきた。恐らく栞にでも使ったのか。調べると随分前に廃駅となった、山奥の炭鉱町。そこにもこの本を読み、学ぼうとした人がいたのだ。そして今はこの手の中に旅してきた。
私はチョキで切符を切ってやる。
お題・古本チケット
■2024年5月2日
オモチャ屋のウィンドウに飾られたぬいぐるみ。値札には「違法」とある。どうしても欲しかったが売ってくれない。それで店主のいない間に盗んでしまった。その後、店は警察が来て潰れてしまった。私もいつか捕まるのか。それとも違法へ違法を重ねたら、合法になってしまったのだろうか。
お題・違法ぬいぐるみ
■2024年5月2日
彼女は結婚式は教会が良いと言う。だが海面上昇により、町で唯一の教会は海底に沈んでしまった。
「頑張りはしたんだけどね、教会での結婚式は没になったよ」
「水没してたらなあ」
「おかげで新婚から気分は沈みっぱなしさ」
お題・水没した結婚式
■2024年5月2日
「ねえ、私のこと愛してた?」
「金目当て」
別れ話の際に平手打ちを食らわせてから五年後。彼が亡くなったと聞かされた。
もしかして彼は自分が治らない病だと知って、私を悲しませないよう憎まれ口を叩いたのだろうか。
答えはもう分からない。
お題・ファイナルアンサー
■2024年5月2日
気付けば周囲は人狼だらけだった。オイオイ、これでどうやって人狼ゲームをやるんだよ。えっ、出来たて人狼? 新しく生まれた人狼を当てるのか。また斬新なルールだな。やってみるか。
結果、ゲームはグダグダ。ルールにも不備が見つかった。まあ出来たてデバッグ前のゲームなんて、こんなものさ。
お題・できたてホヤホヤ人狼
■2024年5月3日
親が経営する会社が傾いていると知り、私は借金の肩代わりと引き換えで、強引に彼女へ結婚を迫った。それが今はもう息子に事業を譲った隠居の身。
「今まで済まなかったね。愛してもない男と結婚させられて」
遅い謝罪に、妻は笑って
「あら、私は最初からあなたが好きでしたよ」
……いつからだ!?
お題・時間差攻撃
■2024年5月3日
親は独裁者で、実家は強制収容所だった。壁は鉄格子で、銃を持った看守が見回りをする。最悪な日常。
大人になった今はその牢獄からも解放されているが。あんな過去は繰り返してはならない。だからクーデターにより親は牢獄に閉じ込め、我が子はもっと厳重な独房へ入れている。
お題・実家の牢獄