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■2024年6月24日
多少は弓矢の才を持つ男がいた。彼は天狗になり師匠が止めるのも聞かず、武者修業の旅に出る。
そこで武勇を轟かせようと戦に参加するが、何せ道場だけしか知らぬ身。過酷な旅で弓が狂ってしまった。射った矢は明後日の方向へ飛んでしまう。それを見て周囲は大笑いした。
「矢が旅に出てるぜ」
お題・弓矢ジャーニー
■2024年6月24日
鳥がいた。雛鳥の頃は鳥籠に入れられていたが、今や抜けだし大きな翼を持っている。鳥籠の窮屈さは勘弁ならないが、外敵から守られた安全さは良かったな。
そこで鳥は籠を持ち運ぶことにした。これで自由かつ安全だ。しかし籠は重くて、空高く飛べなくなる。
鳥は何かを得れば何かを失うと知った。
お題・鳥籠を運ぶ鳥
■2024年6月24日
玄関先を掃いていた時のこと。借金を残し、五年前に蒸発した元夫が帰ってきた。
「もう身勝手はやめる。やり直せないか」
「今さらやり直せるわけないだろ」
「どうして」
すると騒ぎを聞きつけ、家から今の夫が赤ちゃんを抱いて出て来た。
「そのセリフがもう自分勝手なんだよ」
お題・自分勝手はもう終わり
■2024年6月24日
四国山中の奥深くにある村へ「梅雨祝い」なる祭儀が伝わる。ちょうど梅雨の頃に誕生した娘が龍の生まれ変わりとして崇められ、そこへ隠れキリシタンの古い祈りが融合したという。私はついに祭儀への取材を許された。
厳かな雰囲気の中、村人たちが呪文を唱え出す。
「ハッピーバースデー、つーゆー」
お題・梅雨祝い
■2024年6月25日
鎧にうるさい冒険者の先輩がいる。
「プレートメールはやっぱり関節の可動域がさ」
「でもそこのメーカー、安全性に問題があるといって回収されましたよ」
「う、嘘だ!」
鎧にうるさい先輩は、その時から自分を守るのにうるさいだけの人間になってしまった。
「あんな鎧を着けてるようじゃ駄目だよ」
お題・鎧の伝道者
■2024年6月25日
「いらっしゃい、いらっしゃい。ウルトラ美味しい餅だよー」
「ウルトラ美味しいとは、どのようなものか。一個もらおうか」
「へい」
「むっ。その声は我が友、李徴子ではないか? なぜそのような姿に」
「何やかんやあって虎になってしまったのだ。今は仕方なく餅屋をやっている」
「売る虎のモチ」
お題・ウルトラもち
■2024年6月25日
「君ら冒険者に依頼するのは、この薬草だ。亀の甲羅に生えていて、栽培できない。そして亀は歩き回るため、どこにあるか分からない」
「それは大した問題じゃない」
「難しいのは、防腐処理が難しいため、採取したらすぐ町まで戻らなくてはならないのだ」
「おいおい、亀のくせして、足が早いのかよ」
お題・亀に生えた薬
■2024年6月25日
親友のA子との下校中。思い切って質問した。
「B男の奴、アンタが好きだって知ってる?」
「分かってるよ」
「だよね~、態度からしてバレバレ。ほんとキモくて」
「まあ告白されても受けないけどね」
その返答で心臓がぎゅっと掴まれる。
「だってC美こそ、B男のこと好きじゃん。態度でバレバレ」
お題・バレバレの片思い
■2024年6月26日
「命令通りに走る自転車?」
「お宅の工場で作ってくれないでしょうか。必ず儲かりますから」
「今月も資金繰りが苦しいし、やってみるか」
数年後。
「確かに儲かったけど、儲かったのはアイツだけ。言いなりのまま中抜きされて。俺たちゃ自転車操業のままじゃないか」
お題・言いなり自転車
■2024年6月26日
「ドラゴンの攻撃は俺が受ける!」
「あまり突っ込み過ぎるなよ」
「大丈夫。女神様にお願いして、定額蘇生し放題サブスクへ入ったからな」
その後、刺されて。
「しまった、今月はサブスクの料金を支払い忘れてた。このままだと死ぬ。女神様、申し訳ないのですが支払いチャンスも復活できません?」
お題・蘇生し放題




