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■2025年10月31日
この町はやけに静かだ。商店街、団地、公園、小学校。一通りの施設が揃った、きっと良い町なのに。そうだ。子供の声がしないのだ。どうしてなのか、通りすがりの女性に訊いてみると
「最近はこの町も少子化ですからね。子供の声を節約しているんですよ」
その人の連れた子は猿ぐつわを咥えていた。
お題・子供の声がしない町
■2025年10月31日
仏門に入りたての小坊主が師へ得意げに語る。
「私は入門して早々に悟りを開いてしまいました」
「いや、お前は悟りを開いてない」
と喝を入れる師。
「その証拠に、もう私は仏道のことなら、何でも分かるのですよ」
「その割には自分自身の未熟さは分かってないようだな?」
お題・にわか悟り
■2025年10月31日
朝、テレビで初霜のニュースをやっている。私が住むのは雪も珍しい南国、風のある港町。今日もシャツだけで過ごせるくらい。霜が降りるのは、まだまだ先の話。
けど寒気は確実に北からやって来ている。ニュースに霜の降りる日を想像して。明日は、今のうちから冬の布団を出しておこうと決意する。
お題・初霜
■2025年10月31日
どてらを羽織ると「じゃきーん」という擬音語を自分でつけたくなる。実は、どてらは服ではない。武装、鎧の類。いわば歩くこたつアーマーだ。
こたつから出ても、どてらさえあれば寒がらすに済む。まさに無敵の防御力。こいつで今年も冬将軍の攻撃を完全に防いでやるとするか。
お題・どてら
■2025年11月1日
「お前が真犯人だ!」
適当に言ったせいで彼は逮捕。後に誤認逮捕で釈放される。だが迷惑をかけてしまった。私は謝罪に行くが
「別に構わないんですよ」
意外にも寛容な返し。
「だって、あなたでしょう。真犯人さん?」
今度は私が真犯人扱いされた。畜生、後でまたアイツを真犯人呼ばわりしてやる。
お題・後から真犯人
■2025年11月1日
「ライフルを使った熊の駆除」
このニュースの見出しに、男たちは笑う。彼らは銃規制団体。
企み通りだ。これで人々はライフルを持った熊を恐れて、より一層銃規制が進むに違いない。
しめしめ、上手く行ったな。熊を使ったライフルの駆除。
お題・ライフルを使った熊の駆除
■2025年11月1日
初心者向けの迷宮だからと油断してたら、命を落とすぞ。昔、町の近くに出来た迷宮は、初心者にもちょうど良い難易度。モンスターも罠もそれなり、なのにお宝は多め。それで大勢の人で賑わった。
と迷宮は牙を剥いた。急に難易度を変えて、中にいた初心者をパクンよ。
調査はちゃんとやらねえとな。
お題・初心者の迷宮
■2025年11月1日
定命者の私は先に死んで、長命者のあなたを残してしまう。私は泣いた。するとあなたは
数千年の間に星辰が巡り、また同じ位置に並ぶ頃。かつて亡くなった者の魂は、再び現世に降り立つ。その同じ魂と再会し、また一目惚れをする。それが長命者の恋なんだよ。十七人目の君。
と優しくキスしてくれた。
お題・永遠の恋
■2025年11月2日
彼女はゲーム好きで、あとツンデレだと聞いていた。だが見るところ、むしろ無表情。でも俺はそんな彼女が好きになって、付き合うことに。
「ゲーム好きといってもアナログ派でさ、よく二人で遊んでるよ」
「ツンデレという噂はどうなんだ」
「ゲームのやり過ぎで、ポーカーフェイスになっててさ」
お題・ツンデレトランプ
■2025年11月2日
都会から来たイトコが、焚き火で焼き芋を食べたいと言い出した。確かに子供の頃はよくやったっけ。だが
「今は消防法がなあ。燠火までちゃんと消さない奴のせいで山火事が起こったから、色々事情があるんだよ」
「じゃあ……用意すればいいんだな?」
と独り言を呟くアイツの目には燠火が残っていた。
お題・焚き火




