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■2025年6月28日
彼は正義のヒーローだ。だが性倒錯者という噂がある。
「そんなの関係ないさ。僕は皆を助けたいだけだから」
と彼は窮地にこそ飛び込む。人々はなんて立派なヒーローだと称えた。
けど気のせいかな。悪に倒れた他のヒーローを見る、彼の視線がじっとり湿度が高いように見えるのは。
お題・正義の性倒錯
■2025年6月28日
殺し屋には掟がある。恨みで依頼を受けてはならない。でないと人として際限がなくなるからだ。
しかし新入りは妙な焦燥感があるようだ。本来なら立ち入らないものだが、老婆心で思わず訊いてしまった。
「なぜお前は殺し屋をやっている?」
「恨んでる奴を殺す依頼料を貯めたくて」
お題・殺し屋の掟
■2025年6月28日
「お前と別れたこと、後悔してるんだ」
元カレから電話があった。
噂は聞いてる。ゼミの子に片端から声をかけては、迷惑をかけるの繰り返し。とうとう相手がいなくなって、ぐるり一周したのね。
「私も後悔してるわ。あなたと二度と別れたくない」
「じゃあ!」
「だから金輪際、顔を見せないで」
お題・別れの後悔
■2025年6月28日
旅人は森の中に揺り籠が落ちているのを見つけた。またか。以前ここを通った際も揺り籠を見かけたものだ。ここの木からは子供でも生るのか。それなら揺り籠が不要にはならないか。ならば何度も揺り籠が落ちているということは、子供がここでいなくなるということ。
気味が悪くなり、旅人は逃げ去った。
お題・揺り籠の森
■2025年6月29日
悪いことをした後、それを隠す裏稼業を始めた。ところが問題は広告方法。宣伝しないと新規顧客が得られない。だが派手にやると警察に見つかってしまう。
そんな俺たちの前にやってきた奴ら。自分たちも裏稼業の人間だという。
「裏の広告を一般社会から見られないよう隠すサービスをしております」
お題・サービス隠蔽
■2025年6月29日
吸い殻をポイ捨てしたら、いきなり老人に注意された。散々に怒鳴られる。そこまで怒らないでも、と思いつつ、けど俺が悪いのだから大人しく聞いていた。
「私は寛大だから、この辺で許してやる」
と老人は一服、煙草を吸うのポイ捨てした。非難する俺の目線に、老人は
「まあ寛大に許してくれや」
お題・寛大な注意
■2025年6月29日
西に住む友達から手紙が返って来なくなった。あの子だけが世界に唯一の友達だったのに。嫌われたかな。
そんな時に西からの巨大ダウンバーストが吹き付けた。巨岩をも吹き飛ばず突風にシェルターが揺れる。
それで察した。君はこの風に巻き込まれたんだね。世界で唯一、他の人類だったのに。
お題・返らない手紙
■2025年6月29日
テレビでたまには花束でも贈りましょう、というから思わず買ってしまった。驚く妻。
「どうしたの」
「たまたま」
「花言葉とか」
「分からない」
何も知らない自分が不甲斐なくなる。だけど妻は笑って
「くれたことが嬉しいわ」と笑う。
なるほど、今まで花を贈らなかったということの意味がこれか。
お題・無意味な花束でも
■2025年6月30日
クラスごと全員が異世界に転生してしまった。ところが一人だけ、n寺のやつだけ見当たらない。
「誰か知らないか」
「あいつは外れスキルで追放されたらしい」
「何てスキルだよ」
「確か『解脱』とかいう」
そうか、n寺が外れたのは輪廻転生の輪、全ての業苦……。
お題・転生外れ
■2025年6月30日
未来とは既に決まっている。宿命論を君は信じるだろうか。
「だけど宿題はアンタがやらないと終わらないのよ」と愚痴るカーチャン。
「いつになったら宿題やるの」
そうだ、将来は既に決まっている。そして宿題をやるという俺の運命は明確なはず。だから
「明日決めるよ」
お題・未来の宿命




