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■2024年6月1日
「もしもし」
「俺俺」
「もしかして息子の太郎?」
「そう、それの友達のマンモス」
「マンモス」
「実は交通事故に遭ったから振り込んでくれないかな。でないと氷河期になっちゃうよ」
「それは大変。振り込んどくね」
「マンモスうれぴー!」
「……マンモスだけに、スケールの大きな嘘だったな」
お題・マンモスの保険金詐欺
■2024年6月2日
数カ国の隣接する地に城を建てろ。命を受けた武将は一計を案じる。材料の種類を減らしたのだ。斯くして出来た一夜城は立方体であった。これには周辺諸国も、自らの目がバグったのではと気味悪がって近寄ろうとしなかった。その隙に天下を統一した殿様は、箱に天下を収めたと称されたのだった。
お題・立方体の城
■2024年6月2日
「結婚する二人に、夫婦生活には大事な三つの『ばん』があります。
一つは地域社会との繋がりで『地盤』。
二つ目はこれから子供も作ろうということで『胎盤』。
そしてお金の計算もしなければならぬので『そろばん』であります」
新郎新婦「だからと結婚祝いに算盤はないよなあ」
お題・結婚式用そろばん
■2024年6月2日
部屋を片付けていると、高校受験の参考書が出てきた。中三の時に好きな人がいて、難関校を受験すると聞いた。そこで私も追いかけようと無理して難しい参考書を買ったのだ。
結局読みもせず、私が行くことになったのは第二志望。あの人は今どうしてるやら。この本、結局なんの参考にもならなかったな。
お題・使わなかった参考書
■2024年6月2日
朝廷において紅色の冠は裁判官の証だ。しかし紅色の冠位は家督制により独占され、法を無視した裁判により横暴を極める。なので人からは罪を遅らせる冠と揶揄された。
止めたではなく遅らせたというのも、朝廷が滅んだ際。この一族は悉く首を切られ冠のような紅に染まった。結局、罪は返ってきたのだ。
お題・罪遅冠
■2024年6月3日
食品開発局の同僚Nさんは男前だ。トレンチコートに中折れ帽。先日は雨の中、捨てられた子猫を助けていた。
我らに課せられたのは半熟玉子製造機の開発。だが上手く行かない。
「俺は決して諦めない。フッ、昔の女も半熟玉子が好きだったか」
この人、半熟玉子を作らせるにはハードボイルド過ぎる。
お題・執念半熟玉子
■2024年6月3日
芸は身を助くと仰いますが。手妻の先生が腕を怪我して職を失った。仕方ないので他の職へついたもの、昔が忘れられない。自分も新人だというのに、丁稚小僧へ俺の若い頃はと武勇伝ばかり。とうとう、うるさがられて追い出されてしまった。芸は身を助くとも限らない、まずは身を修めなければという話。
お題・弊芸
■2024年6月3日
長年つきあってきた彼氏と、つまらない喧嘩で別れた。自棄になり、二人で写った写真を全て、アルバムから破り捨てる。
そして気付いた。私一人だけの写真、どれも誰かを見ている。カメラを持った彼に向いているのだ。
もう誰も見ない、見られることもない。これが孤独だと悟り、それから泣いた。
お題・ひとりぼっちの写真
■2024年6月3日
深夜にしか使えないというボールペンを買った。確かに朝昼はインクが出ない。かといって深夜に字を書こうとする機会などない。たまに気分の落ち込んで眠れない日、柄にもない下手な詩を書くだけ。だから、いつまでもインクはなくならず。未だに机のペン立てに刺さったまま、ずっと夜を待っている。
お題・深夜限定ボールペン
■2024年6月4日
珍しいプラモデルを買った。手順がサイコロで決まり、何が完成するか分からないというのだ。
……数十個は作ったが、全て立方体のサイコロが出来たじゃねーか! おや説明書に何か書いてる。
「予言しよう。貴方はサイコロを作る。占いだけにサイコロには裏がない、なんてね」
お題・占いの結果で作るプラモデル




