1521~1530
■2025年5月1日
ニッチ商業校は、次世代の隙間産業家を育てる教育機関だ。
「よし、これから入学式やるぞ」
「今は昼休みですよ!?」
だから入学式も隙間時間に行われる。だが問題ない。
「どうせ生徒数が少ないんだから良いだろ」
こんな学校に入る物好きが珍しいから。商業校としてのコンセプトがニッチ過ぎた。
お題・ニッチ入学式
■2025年5月1日
若気の至りかね。私にも夢があったさ。バンド組んで上京、ロックスターになんてね。
えっ。お爺ちゃんの若い頃ならビートルズも来日してないだろう?
うるさいなあ。そんな時代考証どうだっていいよ。私だって若気の至りを語りたい時があるさ。
そういう嘘も許されるのが年の功ってヤツだろう。
お題・若気の至り
■2025年5月1日
私の好きな彼はバスケ部のキャプテン。明るい性格で皆の人気者。私なんて入り込める隙なんてない。
だけど彼は怪我で部活を引退してしまった。以来すっかり暗くなり、周囲からキャーキャー言う女どももいなくなる。
やった。これで私にも光明が見えてきたぞ。と後ろ暗い希望を抱く。
お題・明るさを失って
■2025年5月1日
「見事だ。だが我は常に貴様を見ているぞ」
遂に僕は同じ姿に能力を持つ、影なる自分を打ち倒す。これで完璧な自分になれた、はずだった。なのに仲間は
「けど影の方が頼り甲斐あったよな」
「影はここで奢ってくれたのに」
何かと影と比べられる。どうやら影との戦いは未だに続いているらしい。
お題・影との戦い
■2025年5月2日
我が社のダジャレ部長がリストラされることになった。皆が忙しい時にダジャレを言って回るだけの人だから、だれも残念がらない。けど当人は大慌てだ。
「だったら真面目に働けばいいでしょう」
「けどね私もダジャレで三十年やってきたんだ。今さらリスを相手にトラと呼ぶような真似はできんよ」
お題・ダジャレのリストラ
■2025年5月2日
私が離婚を決意したのは、彼が浮気をしていたからではない。そんなこと前々から知っていて黙っていた。もう彼からの愛を感じられなくなったからだ。だったら、もう一緒にいる理由もない。本当に薄情な男だ。
私が浮気をしていた証拠を見つけても、知らんぷり。黙ったままでいるなんて。
お題・見て見ぬふり
■2025年5月2日
彼はずっとヒーローとなる将来を期待されてきた。生まれは名家。超能力は強力。品行方正で教養もあり、肉体も頑健。いざとなれば死地へ飛び込む勇気もある。
人々は彼に過大な期待を寄せる。だから彼は本心でヒーローになんてなりたくない、料理人になりたかった……なんて言える勇気が出てこない。
お題・勇気のないヒーロー
■2025年5月2日
世界はずっと静かに踊り続けている。ある場所に夜が来れば、その裏には朝が来る。合図なんてなく、ただひたすら、くるくると惑星は何十億年と回ってきた。
だから朝が来たと知りたいなら、自分らで区切りを付けないとね。私は目覚ましの音を切る。世界に静寂が取り戻された。
お題・世界は静かに踊る
■2025年5月2日
僕らは工場で産まれた。今や自然妊娠や家族は贅沢品。だけど、それでは人格形成が歪むということで、今日は母親役の女性が来る日だ。
楽しかった。やはり家族はいいな。そうだ、明日は姉を頼もう。すると昨日と同じ女性が来た。
「派遣会社も人手不足でね。実は私、今日は姉をやってる日なの」
お題・母の日
■2025年5月2日
私は母に捨てられた。だからか、私の持つ母親像は歪んでいる。つまりは異常に美化されていた。それは失望したくないがゆえの自己防衛。
だけど、遂に母と再会できることとなった。まるでドラマのように理想的な感動のシーン。母は泣く、私も泣く。
ずっと育んできた失望が壊されたことが悲しくて。
お題・母




