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■2025年3月16日
新番組の司会は軒並み、吸血鬼ばかりになってしまった。さすがに不満をあらわにする人類の芸人たち。どうせ物珍しさだけで選ばれているのだろう。だが実際に司会する様子を見て肩を落とした。
喋りが上手いわけではないが、人から話題をよく吸い上げる。悔しさで芸人たちは血の涙を流した。
お題・司会の吸血鬼
■2025年3月16日
女性配信者に恋人がいるとバレた。配信を切り忘れていたのだ。コメントは大炎上。
なんで配信中に話しかけるのよ。いいじゃねえか。良くない。それよりパチンコ行くから金。またお小遣い使い込んだの。倍にして返すからさ。嫌よ。逆らうんじゃねえよ。
喧嘩の様子も配信を切り忘れて、同情を買った。
お題・炎上配信
■2025年3月16日
「そんなの聞いてない!」
人を越えた存在に改造してもらいたくて、悪の結社へ入ったというのに。最初は身ひとつの戦闘員から出世しろと来た。
仕方なく僕は鍛えに鍛え、身ひとつでヒーローを倒せるまでになる。それを見た悪の総統。
「え、人間鍛えたら、ああまでなれるの? そんなの聞いてない」
お題・戦闘員
■2025年3月16日
友人がめっきり痩せてしまった。どうしたかと訊いたら、ある人に恋してしまい、食事も喉を通らなくなったというのだ。
「けど、彼は割と意地悪だし。別に好きな人もいるんじゃないかな」
「なんで、そんな酷いこと言うのさ!?」
「恋して食事できなくなるなら、失恋すれば食欲が湧くと思って」
お題・恋でわずらう
■2025年3月17日
奇跡のご長寿おじいちゃんが見つかった。なんと自称三百歳。こいつは世界記録だと連日、テレビが特集した。
だが調べてみるとデマだと分かる。テレビマンたちは溜め息をついた。あの爺さんを取り上げれば魔法のように視聴率が取れていたのに。嘘がバレるのが早かった。
「奇跡の寿命は短かったな」
お題・奇跡の寿命
■2025年3月17日
私の予言は必ず的中する。この能力を使い、名誉も大金も好きなだけ手に入れてきた。ところがある日、私にこんな予言が下る。
お前は近いうち予言が外れて痛い目を見るだろう。
だけど今さら予言商売は止められない。
「外れる予言は、痛い目を見る、という予言だったらなあ」
と願うのだった。
お題・外れて欲しい予言
■2025年3月17日
新たな高校生活、新しいクラス。その中に一人だけ見覚えのある顔がいた。
「高校まで来て、アンタと同じクラスとはね」
喧嘩ばかりする女友達。
「もしかして俺と一緒にいたいから、同じ高校に来ちゃった?」
「まさか」
「俺はお前がコッチ受けるって聞いたから、志望校を変えなかったんだけどな」
お題・志望
■2025年3月17日
君は免許を取ると、すぐ中古車で私を迎えに来た。これでどこでも行けるぜ。確かに田舎に住んでると、車がないとどこにも行けない。
以来、君は色んな場所へ連れて行ってくれた。隣町の大型商店。都会。殺し屋からの逃亡。砂漠。セスナでの空中戦。
果たして君が何の免許を取ったのかは今も謎だ。
お題・普通の免許
■2025年3月18日
近頃は不況でタクシーに乗る人も少ない。その上、私もドライバーとして愛想がない。このままでは駄目だと、タクシーをデコることにした。
途端、町の名物タクシーとなる。遠目にもキラキラしたタクシーはさぞかし乗りたかろう。だが内装までデコるのは、やり過ぎた。
「メーターが光って、目ぇ痛ぁ」
お題・キラキラのタクシー
■2025年3月18日
完璧主義の王様が城を建てることにした。我が治世を代表する完璧な城にしよう。だが要望が多すぎる。宮殿は建ったが、城壁は間に合わない。
だが平和な世のこと。大臣たちはこれで充分だろうと、王様を説得した。王様は悔しがる。
「宮殿としては完璧だ。城でなければ完璧だったのだ」
お題・完璧な城




