1321~1330
■2025年3月13日
後輩と入った飲み屋はビールサーバーが置いてあり、セルフ飲み放題。奴は俺をじっと見ている。
「ビール入れるの、上手いっすね」
俺のビールは泡との比率が見事な黄金比。
「コツがあるんだよ」
「挑戦してきます……ああ失敗した。また挑戦だ」
とガバガバ飲む。
「上手くなくても、酒は美味い!」
お題・上手なビール
■2025年3月13日
森に鉄兜が捨てられている。かつて国が滅んだ。若い騎士は、愛する姫を連れて逃げる。だがこの森で共に討たれた。
その時の兜をリスが見つける。これは硬くて良い巣になるぞ。実際、兜は風雨にも獣にも耐えた。リスは番いを見つけ、多くの子を産み育てる。
まるで騎士の果たせなかった夢のように。
お題・まもるべきもの
■2025年3月14日
今日はホワイトデー。
「マシュマロは嫌い。クッキーやチョコは友達。キャンディーは好き、という意味だっけ?」
「それで相談なのだけど」
「どうした、お返しは貰ったのだろう」
「これ見てくれる?」
「ステンドグラスキャンディー乗せチョコチップ入りマシュマロクッキー!?」
お題・お菓子の判断
■2025年3月14日
滅びの天使は人類を焼き払うことにした。そこで目覚まし時計をある人の枕元へ置く。この人が目覚めたら、地上が火で覆われるのだ。だが天使が置いたのは人形の枕元。いつまで経っても、目覚まし時計は鳴らない。滅びの天使は気になって仕方ない。そこで他の天使が言った。
「そんな時計、ほっとけい」
お題・人形の眠る時計
■2025年3月14日
彼はまさしく最強のチャンピオンだった。防衛回数はもう覚えきれない。だが彼もさすがに、かなりの年齢を迎える。チャンピオンはチャンピオンのまま引退した。
だが彼はチャンピオンと呼ばれ過ぎた。パッと彼の本名が出てこない。
「引退したよな、えっと、誰だっけ」
「ああ、チャンピオンの人」
お題・エターナル・チャンピオン
■2025年3月14日
俺たちゃオンボロ飛行大陸。ヘイホー、ヘイホー。今日も今日とて、やっこら空を飛ぶ。
オンボロなもんだから、翼は穴だらけ、大陸の端っこも崩れてきた。おかげで飛行島となり、今じゃ飛行岩ってとこ。
それでも俺たちゃ飛行大陸を名乗るのさ。でないと冒険に憧れる少年たちの夢まで壊しちまう。
お題・オンボロ飛行大陸
■2025年3月15日
ぼくはハッピーエンドの妖精。幸せな物語が大好きなのさ!
今日はこの漫画家さんのところへやって来た。どんなに素敵な物語を綴っているのかな……リョナ? 尊厳破壊!? NTR!!
なんで、こんな可哀相なことするのさあ。そういうの止めてくれない?
「うわっ、妖精にハッピーエンドを要請された」
お題・ハッピーエンドの妖精
■2025年3月15日
小さくて形も歪な島があった。それを見て若い大陸は笑う。なんて情けない。
だが先輩大陸は若者をたしなめた。けど先輩、あんな老いぼれ島。
お前な、あの方は神様が天地創造で初めて作った陸地だ。えっ、あんなみすぼらしいのが。
そりゃ神様だって初めてやることは上手くできないさ。
お題・天地創造の島
■2025年3月15日
涅槃西風。週末はお墓参りと思っていたら、ちょうど冷たい風。昨日までは春が来ていたのに。まあこれも毎年の季節通りか。これで文字通り、冬が終わってくれると良いのだけど。
問題は週末になるたび雨が降るものだから。予定がお釈迦になることなのよねえ。墓参り、どうしよう。
お題・涅槃西風
■2025年3月15日
実家では無数のサソリが放し飼いになっている。親父の趣味だ。サソリに刺されてお袋が亡くなっても、言うことを聞きやしねえ。だから俺も姉も、さっさと家を出て行った。
ある日、姉から連絡がある。親父がサソリに刺されて死んだらしい。
毒で孤独死とは、バカな親だと俺は毒づいた。
お題・実家サソリ




