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101~110

■2024年5月21日

「行ってきます」

彼は東へ西へ飛び回る仕事だ。次帰るのはいつになるか。

「いってらっしゃい」

その間も毎日メールはしてくれるし。彼からの愛を疑ったこともない。


だけど寂しくなるのは仕方ない。


>ずっとここにいて。


そうメールを送ろうとしては、何度も消している。


お題・ずっとここにいて



■2024年5月21日

戦乱のこと。甕の中で毒虫たちを争わせる蠱毒の呪術。これを人で行った殿様がいた。名付けて人蠱毒。


だが彼はその生き残りにより殺される。殿様といえど甕の中の虫一匹に過ぎなかったのだ。もしかして戦国の世自体が蠱毒の甕だったのかもしれない。


……だとしたら、この人蠱毒を行ったのは誰だ?


お題・魔女の鍋の中の人



■2024年5月21日

パーティーにて。

「彼は洒落人と聞いていたが、なんだい。えらくダサい格好で」

「あれはね、あなたのためなの」

「?」

「その服だとドレスコード違いなんだけど、ゲストに恥をかかせるわけにいかないからと、急いで着替えたのよ」

「それはまた、洒落な注意をされてしまってたんだな」


お題・粋な要注意



■2024年5月21日

王の右腕たる老将は自らを「米粒」と名乗っていた。それを委細を知らぬ若い文官がちっぽけな名だと笑う。


すると老将、笑い返す。若い頃、旅の途中で行き倒れた際。農家に飯を恵んでもらい、今の命がある。


以来、飯なら椀の米の一粒残さず食い、民なら一人残さず衛ると決めた。ゆえに米粒の将よ。


お題・衛米粒



■2024年5月22日

世界のベルト博物館が出来た。どんなものかと見に行ってみたが、しょうもない。古びた布紐が五・六本もぶらりと垂れ下がるのみ。説明書きもない。なのに、やたら広くてなかなか出られない。無駄な時を過ごしてしまった。


ベルトの展示なのに、締まりがない。


お題・世界から見たベルト



■2024年5月22日

鳥たちが試験を行うことにした。ところが鳥といっても千差万別。飛ぶだけでなく、ペンギンのように泳げば、ダチョウのように走る鳥もいる。いかにすれば平等な試験が行えるか。試行錯誤の果てにテスト問題が作られた頃。


鳥は鳥頭だから、自分たちがなぜ試験をやろうとしたのか、忘れてしまったとさ。


お題・鳥たちの試験



■2024年5月22日

通学中、あいつと鉢合わせて互いに目を逸らす。

「まだ喧嘩してるの?」

と友人に呆れられるが違うのだ。


ちゃんと仲直りしようと家に呼んで、二人きりになって、何か雰囲気が良くなって、そう、盛り上がってしまったのだ。


ああ恥ずかしい。もはや腐れ縁の友達同士には戻れない。


お題・仲直りしなよ



■2024年5月22日

戦国の世に活躍した忍者の中でも、霧隠れと呼ばれた者たちの存在は特異であった。彼らが得意としたのは情報隠蔽だ。誰がどう仕事を依頼し、何を成したのか。徹底的に隠した。


ただ霧隠れが負った「任務」のことを「忍霧」と呼び、影から影へ暗躍したことだけが複数の史料から読み取れる。


お題・忍霧



■2024年5月23日

「そろそろ門限だ」

「あんたんち、本当に厳重よね」

「だってウチは家族で西部劇ファンだから」

「それと何の関係が」

「それぞれの拳銃を持ってるから、管理でどうしても、ね」

「厳重な家族じゃなく、家族の拳銃」


お題・一家団欒西部劇



■2024年5月23日

天才僧がいた。若くして大蔵の経を修めた後、野へ下り飢えた民への救護活動に邁進。その間、民を哀れんでか、ずっと泣いている。万民は彼を慈悲深い聖と崇めたが、実像は違った。


後に見つかった日記によると、この世で尊いのは俺様だけだ。ああ、どいつもこいつも取るに足らない命で泣けてくる。


お題・必咽聖

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