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■2024年5月18日
「思うんだけど、ガソリンスタンドに足がついてて、こっちへ来てくれたら便利だよな」
「本当、本当」
「どうしよう。車のガソリンが切れた。スタンドまでは遠くて、そこまで行くための、俺たちに足がない」
お題・歩くガソリン
■2024年5月18日
人が眠ると、眼球は当局へ送られる。代わりに他の眼球と交換することで、異性・異国・異世界の光景を見ることができる。これが夢のシステムだ。
ゆえに当局には無数の眼球がずらりと並ぶ。返す人を間違えると大変。なかなか大変な仕事だ。
なので職員は寝る間もなく働き、夢を見たことはない。
お題・夢の交換局
■2024年5月19日
神から石とバナナを選ぶよういわれた。人は脆いバナナを選んだから、命に限りが出来たという「バナナ型神話」。日本にも似た神話はあるが。
だとしたらアイツはバナナの子孫なのかもしれない。どんな嫌な目に遭っても、面の皮ぺろりとめくると、平気な顔をしているのだから。
お題・バナナの天使
■2024年5月19日
「失敗した~」
「どうした?」
「先方さんへのメールに誤変換があったんですよ。『参照』を『山椒』だなんて。笑って許してくれましたけど。ああ、恥ずかしい」
「ははは、まあ分かるけどな。気をつけないと」
「これから謝罪のメールですよ」
>このたびの虎BLUEもうしわけありません。
お題・予測変換トラブル
■2024年5月19日
「織田信長ハングライダー部隊が桶狭間にあり!」
「またこんなトンデモを」
「なあに資料なんで関係ない。学者として目立てればいいのさ」
数年後。
「そういやアイツ、どうなったかな」
「いい加減なこと言いふらしたから大炎上。今や学者生命がクリフハンガーだそうですよ」
お題・下克上ハングライダー
■2024年5月19日
女二人に男一人の幼なじみトリオ。けど私たちも大人になったのだろう。
「ごめん」
彼からの告白を断る。
「他に欲しいものがあるから」
「何だよ、それ」
今の、この関係でよかった。これが欲しかった。
だから、あなたに告白なんて、して欲しくなかった。
お題・失いたくない
■2024年5月20日
ある皇帝の御代に大地震があった。これは古今東西に前代未聞。これ以上の揺れはあるまい。と皇帝はあらゆる地震の基準とした。
しかし百年後、それ以上の地震が起こって、あの基準は何だったんだ、となる。
地面が揺れるのだ。人の決めた定めが揺れないはずもなし。
お題・規震
■2024年5月20日
ある天才作曲家は音の純粋を追求するあまり、聴衆の出す雑音が邪魔になる。そこで演奏会から聴衆を排除した。すると今度は演奏家たちの肉体が出す音すら邪魔になった。結果、何者も存在しない沈黙という、純粋なる音に行き着いた。
だが意固地な彼の周囲から人は離れ、評価する人もいなくなった。
お題・無人オーケストラ
■2024年5月20日
結婚前に実家の部屋を片付けていたら、幼稚園の頃の靴が出てきた。もう小さくて履けなくなったのに、お気に入りだからと取っておいたのだ。
今となれば懐かしいだけで、ボロいだけの靴。けど今までの道のり、私が来られたのは、コイツが歩く楽しさを教えてくれたから。
到達できた今が私の宝物だ。
お題・宝物の靴
■2024年5月20日
冬の語源は雪の下で、新たな命が「増ゆ」から来ているという。ならば季節ガチャの結果、三連で冬となった次は、すっごい命が芽生えるはずだ。
大体、四季というのだから、確率は四分の一。四回目のガチャこそ、他の季節が来ないとおかしい。
それともまさか私の運勢まで冷え込んでいるとか……。
お題・三連の冬




