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二章「神騎候補生」- ⑨

「来てるな...」


サラの言葉に緊張が走る。

感知範囲を広げていたリラですら気づかない、殺気にも満たない僅かな「揺らぎ」...



「そ...」



そんな馬鹿な。

というオスカーの言葉を遮る。



確かに、聖神騎まで出張ってきたこの布陣に戦いを仕掛けてくるなど無謀に見えるだろう。

だが場所を読み切れないことに加え、純神騎さえ退ける程の実力を持つ者がいる...

こちらの戦力に対しての対抗策を有している可能性がゼロではない。



「でもさ、これだけのお米と野菜があれば一年は満腹になれるよね。」


「全くだ、質も中々いい。

王都に戻ったら、俺も店に寄らせてもらおう。」



気取らせない。

迎撃態勢を取るこちらの気配を感じさせないあまりにも自然な会話。

本隊との合流にはまだ少し時間がある。

この僅かな時間を大事にしたいところだが、それは相手には関係がなかった。



「シッッッッ」



影から途端に曲剣が伸びる。

野太い掛け声と共にリラの喉元を僅かに掠める。



「迎撃開始!!」



サラの号令と共にこちらも迎撃態勢に入る。

喉元を掠めた曲剣が角度を変えリラの首根を狩り取ろうとする。

それをバアルの蹴りが堰き止め、上空に弾き上げる。



「悪い。」


「口より手を動かせ。」



先の影を退け、放たれる八方からの矢をダムの水網が弾く。

馬車を止め、各々影の迎撃に入る。

人型を取っているが黒いモヤのようなものが相手を包み込んでいる。



「こいつは魔術の類か...

認識阻害で身元が割れるのを防いでるだけだ。

叩けば問題ない。」



サラの言葉に耳を傾けながら、リラ、ヒノ、バアルを攻撃の軸にピグとイザベラがサポートに入る。

ダムに後方の護衛を任せ、各々自分の闘いに専念する。



「螺旋、群青、終ノ空...

幾重に重なる凱旋の軌跡よ...

穹に咲け、海に轟け、大地に唸れ」


セレスト【蒼電】


瞬く間に黄金の閃光は蒼い稲妻へと姿を変える。



「精錬、創造、業火...

汝、槍也」


紅蓮は一筋の流星へと変わり...



「【泥沼】」


その一言で大地は激しくうねり、捻れ、流を成す。



「それは天に輝く星・地に宿る魂・海に眠る雨」


天星術「獅子王の護印」【レグルス・リア】


宿星は地に立つ騎士に祝福を与え...



「大海よ。

流れ、穿ち、飛沫を上げろ。

水面に開くは青の盾。」


水網【アネスト】


群青は戦士を守る盾となる。



騎士の気迫に呼応するように...

個の集団は、瞬く間に影の小隊へと形を変える。



緋、蒼、翠...

多くの軌跡が飛び交う。


「ピグは各小隊の撹乱を。

ヒノ、リラ、バアルは各自ツーマンセルで小隊を最速撃破。

イザベラは私と一緒に四人のサポート。

全員、気張っていけ。」



「「「「「おう」」」」」



ダムの指揮に従い、サードの面々が各々接敵する。



ピグの泥沼を起点にバアルが先制。

リラとヒノで左右に分かれる。

リラとバアル、ヒノとバアルというバアルのスピードを活かしたツーマンセルを仕掛ける。


雷焔と春雷の範囲殲滅を軸に、撃ち漏らしをピグの泥沼からの追撃やダムの水網で絡め取る。



(万が一に備えて、火力はイザベラに任せてるって訳か)



互いの情報の開示だけではない。

実践想定訓練からの短期間で、互いの強みと弱み、そして「活かし方」を見つけている。

ピグの泥沼を、ヒノは足元に加護を纏わせ瞬間的に足場を作り、リラはまるでスノーボードのように軽快に滑る。

それに、ダムの水網...

一見戦場に縦横無尽に敷かれているようにも見えるが、水網の先はイザベラの手元に繋がっていた。



(光線なら拡散もするだろってことか)



彼らの戦いを見ながら、サラは若人の成長に感動を示しながら、先程以上に感知領域を広げる。



(レイラやニンリルならともかく、私のからは逃げられないっての)



本来、人には本能的な存在に対する知覚反応が存在する。

音を、光を、皮膚を通しての刺激は自然的なものであるほどに発達している。


祝水の聖神騎「レイラ」は波紋を。

蘭風の聖神騎「ニンリル」は声を。

篝火の聖神騎「イグニ」は熱源を。

恵土の聖神騎「アース」は記憶を。

銘雷の聖神騎「ライコウ」は共鳴を。


皆得手不得手はあるものの、神騎は代々聖神騎に倣いこの感知領域を教わる。



「拘縮【バインド】」


左手を上に、右手を下に...

手首の血管を合わせ、全身を巡る神威の流れを知覚する。

「拘縮」...

たったその一言。

次の瞬間指先から放たれた光は瞬く間に周囲のあらゆるものを引き寄せる。


「ほらほら、まだ【名】も使ってないんだ。

気合いで逃げ切ってみせろよ。」



神秘の聖神騎「サラスヴァティ」は叫声を。

人が人のまま抱く恐怖心。

絶対的に逃げられないという圧倒的な実力差から放たれる圧力【プレッシャー】。


【名】を使っていなかった。

後輩たちに華を持たせてやりたかったから。

だが、時間が無いのが口惜しい。

任務でなければ一から十まで丁寧に色々なことを教えられただろうに。



ただ、彼女の場合、人にかける期待値よりもこの場での任務への執着と闘争本能が少しだけ...

ほんの少しだけ高かっただけなのだ...



最終決戦兵器【アルテマ】のサラ。

戦場【イクサバ】に立つ。

次回更新予定日未定です

今後はラクリマ以外にもいくつか短編や長編を上げて行く予定なので

遅筆なのと投稿ぐせがついてないのはご愛嬌

ごめんね

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