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二章「神騎候補生」- ②

「さて...」



リラ達Aパーティーが記念すべき一体目のスライムを倒していた頃...


イザベラをリーダーとするヒノ、バアルのBチームは、グロロアの森のおよそ中央に当たる大平原に来ていた。



「なんもねぇな。」


「ここは見晴らしがいいね。」



景色を眺めながら草木に寝転ぶ二人を他所に、ヒノはひとり...

黙々とキャンプの準備をしながら今後のことを考える。



(東の端からここまで歩いてきたが、一度もスライムに出会わなかった...)



ここまで割と長い道のりを歩いて来たが、ついぞスライムに会うことはなかった。



(考えられる可能性は2つ)



ひとつはAチームが先にこちら側の獲物に手を出した可能性。

蘭風の加護は言伝だけでなく感知にも長けている。

先に敵陣を刺激し、後でゆっくり自陣を狩る可能性は充分にある。

...が、周辺に神威の残滓が残っていなかったのは気になる。


それに、いくらここが神威に満ちているとはいえ、1度や2度の戦闘でここまでスライムを見かけなくなるのはおかしい。

地面や周りの動植物を観察したが戦闘を行った形跡もなかった。



(あれほどリラに対して敵意を剥き出しにしていたダムが形跡を残さないほどの連携をこの短時間で取れるものか...)



ふたつめは...



(あまり考えたくはないが...)



そもそもこの試験自体が何かしらの罠であること。

軍人である以上ある程度の理不尽は覚悟している。

試験自体がそもそも無理難題に設定されているか、何かしらの妨害工作か...



「火、起こしといた。」


「こっちはとりあえず兎3匹と食えそうな雑草取ってきたぞ。」



物思いにふけっていた間にイザベラとバアルは各自動いていたらしい。

どうやら何も無い平原を眺めるのにも飽きていたようだ。



「考えたって始まらねぇ。

とりあえずこの手の野営は持久戦だ。」


「うん。

設営に準備がかからないだけでも、私たちにはあどばんてーじ。」



なんでカタコト。

そう思いながら、ヒノは2人に自身の疑問、今後の方針を共有する。



┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈



「ますますわかんねぇな。」



バアルの言葉に、ヒノもイザベラも苦笑いをしながら押し黙る。

そもそもバアルは、頭で考える効率を感覚でやってのけるタイプだ。

直情的な性格に見えてその実、誰よりも効率というものを感覚で押し進める。



「お前みたいなタイプには、理不尽とか一番非効率に聞こえるだろうからな。」



感情に左右されない効率主義者ほど、この手の理不尽に慣れておらず、むしろ無駄と捉える。

バアルがこの感覚に慣れるのは、しばらく先になるか、それとも今後慣れることはないのか...



そんなことを考えながら3人は着々と野営の準備を進める。



「なぁ、この森やっぱりおかしいよな。」



薄々感じていた違和感をバアルが口にする。

確かに、この森には違和感がいくつかあった。

討伐対象のスライムが少なすぎること...

火力重視のBチームに対して、感知性能の高い蘭風や地形把握に優れている恵土のいるAチーム...



「少ない標的、明らかなチームの偏り、そんでもって...」



ここは、神威の【濃度】が薄すぎる。

確かに普段自分たちが暮らしている生活圏から比べれば圧倒的に動きやすい。

だが、ここは王都。

しかも世界樹のお膝元ときた。

神の加護で生まれる生物がいるほど神威は満ちているはず...



「なんか、きな臭いな。」



ヒノとバアル。

二人の会話を聞きながら、少女はひとり沈黙を貫く。

釈然としないことは多い。

これがもはや試験ではなく、一種の戦いであることは、AB両方のチームが既に感じ始めている。



疑念、違和感、緊張を孕ませながら、小さき稀人達は騎士の遊戯に誘われるのであった。

次回更新は4月15日を予定しています


良ければXでの拡散を、励みになりますのでレビュー、感想あればぜひぜひよろしくお願い致します


m(*_ _)m

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