2話
「レイス殿だ」
「久しぶりの帰国だな」
「お元気そうだな。あぁ、また勇士を聞きたいものだ」
「ガルガダ戦線の話は最高だったよな」
「分かる。最高だった」
アレクリード王国の王城内を、私はレイス様と共に歩いていく。
すると、いたるところからレイス様の噂話が聞こえてくるのだ。
元々耳のいい私に聞こえてくる話は、どれもこれもレイス様に対して好感を抱いているそんな雰囲気のものだ。
「レイス様って、冒険譚の話でも小説で出しているの?」
こっそりとそう尋ねると、歩きながらレイス様が答えてくれた。
「私が書いたわけではない。私の友がいるのだが、そいつが勝手に、私の話を小説にまとめて出しているのだ」
「へぇ……それ、私も読みたいわ」
そう告げると、しばらくの間があく。
どうしたのだろうか。
そこでハッと気づく。
「私には知られたくない、ことが書いてあるの?」
「言っておくが、色恋関係ではないぞ」
すぐに私の考えを呼んだようなレイス様の言葉が返って来る。
私はほっとするも、では何故、間が開いたのだろうかと思うと、レイス様が言葉を続けた。
「危険なことにも、もちろんあったからな。君が心配しすぎないといいのだが」
一体どんなことが書いてあるのだろうか。
そう思いながら長い長い渡り廊下を歩いていくと、途中で貴族のご令嬢方が待ち受けていた。
この渡り廊下は中庭と面しており、貴族ならば出入りできると話に聞いていた。
こうした場はどこの国でも、王族の方々を待ち構えるご令嬢の場になるのだな。
ルーダ王国でもローゼウス様とお近づきになろうとするご令嬢方がいたことを思い出す。
そして私はフードを深々と被りなおすと、レイス様の後ろに隠れる。
「レイス王子殿下、おかえりなさいませ」
「今回はどのような冒険をされたのかしら」
「またお話をお聞かせくださいませ」
きゅるるんっという効果音が聞こえてきそうなほどに、ご令嬢方の可愛らしさが伝わってくる。
これほどまでに可愛らしい女性に迫られればレイス様も笑顔で……。
「帰国の報告などせねばならぬので、失礼する」
―――――え?
私は、いつもは物腰柔らかで笑顔なレイス様が一切の笑顔も見せずにご令嬢方にそう言って歩いていくのでびっくりして、足を止めてしまった。
けれどすぐについていかなければと慌てて歩き始めたために、足が絡んでその場に転びそうになってしまう。
「あっ……」
「ミラ嬢」
レイス様が私のことを、受け止めると同時にひょいと抱き上げ、こちらを心配そうに見つめる。
「大丈夫か?」
「あ、え、えぇ……ごめんなさい」
「いや、無事ならいいんだ」
フードが外れてしまい、私は慌てて被りなおそうとした時だった。
「……今、レイス様が、微笑まれた?」
「え……」
「……女性? 一体……どなた……」
貴族のご令嬢方がこちらを指すような視線で睨みつけていた。
私は驚き身を固くすると、そんな私を抱き上げたままレイス様が歩き始める。
「あ、れ、レイス様、自分で歩けるわ」
「ん? そうだな。だがまぁ、いいじゃないか」
「……よくないわ」
視線が痛い。
ちらりと振り返ると、ご令嬢方の瞳はこちらを射殺さんばかりの殺気の漂っているものであり、私は身を強張らせた。
そんな私にレイス様は小声で言った。
「私はこのほうが元気をもらえる」
「……重いでしょう」
「ふふ。重くない」
重くないわけがない。
レイス様はうさぎ姿だと私に抱き上げられるからなのか、人間の姿だと仕返しとばかりに私をすぐに抱き上げようとしてくる。
人前だと、普通に恥ずかしい。
そしてやっと下ろしてもらえたのは、今日私が滞在する予定の部屋の前であった。
「長旅疲れただろう。この部屋でゆっくりしてくれ。少し仕事を済ませてくる。侍女を付けてあるから、何かあればそちらへ言ってくれ」
「わかったわ」
「すぐに戻る」
「えぇ。いってらっしゃい」
私はレイス様を見送り部屋に入ると、浮かれ果てており、ベッドの上へとごろりと横になった。
「はぁぁ……やっぱり、ベッドはいいわね」
馬車での移動はやはり疲れた。
私は、少しだけと思い、うとうととしたのであった。
3月25日 オーバーラップf様より書籍1巻発売です(●´ω`●)
どうぞよろしくお願いいたします。
緊張した時には、どうすれば一番落ち着くのでしょうか。
いつもそわそわしながら、発売日周辺は何もできなくて(/ω\)
ドキドキドキドキ。






