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20話

 連れていかれた部屋は、ローゼウス殿下の執務室であり、隠し扉から私達はそこへと入った。


 久しぶりのローゼウス殿下の執務室。


 体調が良い日に、ローゼウス殿下は少しでも国王陛下の力になりたいと執務に取り組んでいた。


 香水の香りと、インクの匂いがそのことを思い出させる。


 ただ、部屋の中にローゼウス殿下はおらず、オリビアは私を椅子に座らせると、騎士達に命じた。


「ご苦労様。後は部屋に戻りなさい。貴方達が連れてきてくれたことはちゃんとローゼウス殿下には伝えておくわ」


「「「「かしこまりました」」」」


 この数日間、私に丁寧に接してきてくれたはずの騎士達が、私のことなど一切気にせずに部屋から出て行ってしまった。


 一体何だったのだろうかと思っていると、オリビアは笑みを浮かべた。


「どうしたの? お姉様」


「貴方……何をしたの?」


 絶対に何かがおかしい。そう思い尋ねると、オリビアは小首をかしげてからケラケラと今度は笑い声をたてる。


「何を言っているの? 私のことを知れば、皆私を愛してくれるの。当り前でしょう? だって私は聖女だもの」


「え? ……聖女の力だといいたいの?」


 眉間にしわを寄せてそう尋ねると、オリビアはうなずく。


「そうよ。私のことを知れば、皆私のことを好きになるの。だって聖女だもの。先ほどの騎士達はローゼウス殿下の騎士よ。私に忠誠を誓っている。だから私の言うことはなんでも聞くのよ。私のこの聖女の力が効かないのはお姉様くらいね。どうしてなのかは分からないけれど、昔からそう」


 その言葉に私はぞっとした。


 先ほどの騎士達は忠誠ではなくまるで操られているかのようだった。


「騎士達に何をしたの? だって、さっきまでは普通だったのに」


「え? うーん。まぁ、私もよくはわからないのだけれどね?」


「よく……わからない?」


「えぇ。だって聖女の力だもの。未知なことも多いわ! でも私の輝かしい力には間違いないでしょう!?」


「一体いつから……その力が使えたの?」


「え? 昔からよ? 幼いころからみーんな、私の言うことを聞いてくれたわ」


「でも、私は……」


「そう。なんでかお姉様だけ効かなかったのよね。うーん。ちゃんと目を合わせて、力を使っていなかったからかしら。お姉様、こっちをじっと見て」


 それは果たして本当に聖女の力なのだろうか。


 私は小さく息を整え、情報を集め、今の現状を明確化しなければと思った。


 オリビア本人すらも現状を把握していないのだと思う。


だからこそ、問題がややこしくなっている。


 今まさにオリビアは私にその力を使おうとしているのだろう。だけれど、私からしてみれば別段なんともない。


だけれど、いいチャンスだと思った。


顔に笑顔を張り付けて、私はオリビアに頭を下げた。


「さすが聖女様でございます。御見それいたしました」


「まぁ! お姉様が私を敬うなんて! やっぱりやり方が悪かったのね」


「私は今までどうしてその力の尊さに気付かなかったのでしょうか。どうか、貴女様のその力について、ご教授ください」


「ふふふ! いいわよ! お姉様には今後働いてもらうつもりだし、そうこなくっちゃね!」


 笑顔のままオリビアの言葉を待っていると、嬉しそうに話し始めた。


「私は聖女だから、私がその瞳をじっと見つめてお願いをすれば、その人の心が私には手に入るの。皆が私を愛して、だから、私の為にならば命令を聞いてくれるようになるの。ほら、ローゼウス殿下もそうでしょう? あと、私が元気になれと命令すれば元気になるし、男らしくと命令すれば、性格も変わるわ」


 にこにこと楽しそうにオリビアは言葉を続ける。


「ローゼウス殿下。本当に素敵よねぇ。私の好みに変わってくれたし。でも……妃教育面倒くさくって。だから、お姉様に妃の仕事はしてもらおうと思っているの」


「……どういう意味でございますか?」


「私の影武者ね! ふふふ。お願い聞いてくれるでしょう?」


 オリビアの瞳が、きらめいたように見えた。


 私はすっと瞼を自然に見えるように伏せると頭を下げる。


「かしこまりました。もちろん。聖女様の御心に従います」


「わぁい! よかったぁ。はぁ。もうちょっと早くお姉様が言うことを聞くようになっていたら追放なんて面倒くさいことしなくてすんだのにね。でも、顔が焼かれたのは正解よ。私、お姉様の顔大嫌いだったの」


 その言葉に、私は気づかれないように拳を握り締める。


「ローゼウス殿下にお願いしたら、ちゃんと焼いてくれて良かったわ。片側にしてあげたのは私の慈悲よ。感謝してね? ふふふ。それに……その方が、美しかったころのことを思い出せていいでしょう?」


 はらわたが煮えくり返る思いとはこういうことを言うのだなと、私はそう思いながらも、感情を表に出さないように気を引き締める。


 今のオリビアの言葉である程度のからくりが分かった。


 おそらくではあるが、オリビアは聖女ではなく、洗脳か何かの魔力を持ち生まれたのだろう。


 王国にも、そうした能力を持った人間が生まれたことがあるという記録は残っている。


 三十年前の聖女もそうした能力持ちの人間の一人で、癒しの能力を持っていたという。


 そう考えればすべての辻褄が合う。


 何と恐ろしいことだろうか。


 先ほどの言葉からしてまだ国王陛下の洗脳は行われていないのだろう。だが、騎士といいローゼウス殿下といい、誰が洗脳されているのかは定かではない。


 どうにかしなければ。


 このままではルーダ王国はオリビアの想いのままになってしまう。


 そう思った時であった。


 扉が開き、部屋に入って来たのは青白い顔をしたローゼウス殿下であった。


私もう実は半袖で生活してます。

暑くないですか?(/ω\)


結局焼肉は食べてません( ;∀;)

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