プロローグ
今日、創作というものには様々な種類があるだろう。
音楽、小説、絵等々。それぞれの分野に専攻して活躍している者がいる。それでも、俺ほどいくつもの分野に手を出している人はいないと思う。
音楽関係では、とある音楽ゲームに楽曲提供したこともある。小説は……今は二巻までしか出てはいないが書籍化した。そして絵では二次元のキャラを書いていて、たまに依頼が来るくらいまでは描いた。
どの分野もトップ層には及ばないもののそこそこ伸びていて、今は忙しくさせてもらっている。
しかし、これらすべてに手を出し時間があることから察せられると思うが、俺には友達というものがいない。
高校に入ってから1年と2か月が経つわけだが、完全にとはいかないまでも、ほぼ孤立状態である。
……手遅れ感はかなりあるが、今からなんとかできないものか。
幸いにして、創作系はどれも技術を身に付け作業速度が上昇したからか、時間は取れる。
唯一の友を頼るのも悪くはないし、そろそろ部活に入ってみるのもいいかもしれない。
◆◆◆
「おはよう蓮司。またくたびれた顔してんなぁ」
「ふん。寝不足なだけだ」
朝学校に付いて席に鞄を置くと、唯一の友である有崎 佑馬に話かけられた。
「ちゃんと寝ることだな~」
「佑馬! ちょっと勉強教えてくれね?」
「あいよ~! じゃ、後でな」
佑馬はクラスの男子に呼ばれてそっちの方に行った。察しのいい人は気が付いているかもしれないが、あいつは陽キャの部類だ。
成績優秀で、運動もできる。まさに文武両道。小説を書いている身としてはとても参考になる人物なのだが……。
話す人が多すぎて大体俺は1人にされるというわけだ。これではボッチと何ら変わりがない。
この状況を打破したいわけだが……。どうしたものか。
少し一人で考え込んでいると、うちのクラスの雰囲気が変わる。
これはあの人が来たな。
「おはよう皆!」
「「おはよう!」」
この学校で一番明るくて、そして一番かわいいと評判の女子生徒、夏目 陽香さんだ。身長は低めで、艶のある長い髪はハーフアップにしている。目鼻立ちもしっかりしている。
「あれ、佑馬くんは勉強教え中? いいね、頑張ってこー!」
「おう、頑張ってくぞ~」
夏目さんは基本どんな人にでも話しかける。どこからそんな明るさを補うエネルギーが来ているのだか。俺とは完全に住む世界が違う人だな。
「ありゃ? 工藤くん今日はいつにもまして顔色が悪いね? ちゃんと寝るんだよ?」
「お、おう」
工藤の姓を持つのはクラスで俺一人。だから俺に話かけているのは確実なのだが、普段俺はあまり話かけられないから少し驚いた。クラスの人全員をよく見ているんだな。
こういう人を見習えば俺も友達が増えるだろうか。
「じゃあ皆、今日も頑張ろうね!」
「「おー!」」
クラスのほぼ全員が同調してそういう。ちゃっかり俺も。
「相変わらず元気がいいな、うちのクラスは。よし、ホームルーム始めるぞ!」
クラスの担任、井島先生が教室に入ってくていう。そうか、もう始まる時間か。
授業とかのうちに友達を手に入れる方法を考えておこう。
◆◆◆
結局何も思い浮かばないまま一日が終わった。……仕方ない。今日は小説でも書きながら考えるとしよう。
俺は普段かなり有名な小説投稿サイトに小説を投稿している。書籍化の打診をいただいたのもここからだ。
今日はそうだな、恋愛系を書くことにしよう。俺が書籍化しているのはファンタジーの作品だから、あまり力を入れていないジャンルではあるのだが……。
そもそも俺が恋愛をしたことがないし。何度も書きなおしながら一話を仕上げていく。
いつもの投稿時間には書き溜めているものを投稿して、今書いている話を書き溜めに加えておく。
あれ、結局集中しちゃって何も思い浮かばなかったな。かれこれ一か月は友達の作り方を考えてはいるが何の進展もない。
なんとかしないとなぁ。
◆◆◆
「はぁ、今日も疲れた~!」
陽香は家に帰ってすぐ、自室のベットに飛び込んだ。
「今日は何が更新されるのかな~」
陽香はスマホを見てそう言った。学校では印象作りのためにスマホでゲーム等をしたり、小説を読んだりしない彼女だが、普段の趣味はオタクそのものである。
動画配信を見たり、小説を読んだり、音楽を聴いたり。それが陽香の趣味であった。
そして、今陽香には特に目にかけている人物がいる。それは……。
「ハスさん、今日は何更新するんだろう」
小説、音楽、そして絵。たくさんの種類の創作を試みる人物。陽香はどれにおいてもその人物のファンであった。
「あ、今日は小説かぁ」
いつも彼が更新している時間にサイトを周回していると、小説が更新されていたことに気が付いた。
「恋愛だ!」
普段更新が遅い彼の恋愛小説は陽香のテンションを上げる。
「甘酸っぱいなぁ」
純粋な恋愛の世界感が陽香の心を刺激する。
「今日も投稿お疲れ様です、いつもエネルギーをもらってます、っと」
彼の作品に出合ってからというもの、何か更新される旅に陽香はメッセ―ジを送っている。
「まだ素敵な人とは会えてないなぁ」
陽香は中学生の頃までパッとしない、根暗なタイプだった。しかし、この人の恋愛小説に感銘を受け、素敵な人に出会いたいと、全力でイメージを変えた。
「運命の人と会える日が楽しみ」
そういうと、明るくふるまっていることの疲れからか、陽香は眠りについてしまった。




