表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
隠れクズの異世界奇譚  作者: 詩幽乃
第零章
6/6

特別話 手紙

「うぅ...ぐすっ...優...」


彼は泣いていた。

明かりがひとつだけついた安置室で、もう目覚めることのない友の手を握って、ただ泣いていた。

もうどれだけ時間が経ったのかもわからない。だがそんなことはどうでもよかった。

友の両親と、彼の啜り泣く声だけが響いていた。


「優ぅ...なんで僕なんかを助けたんだよ...なんで...」


彼にとってその友はかけがえのない親友だった。

幼かった頃から、常に隣にいて、血はつながっていないのにまるで兄弟のようだった。

そんな家族のような存在を無くしてしまったのだ。


「あの時...僕がすぐに逃げていれば優が僕を助けて死ぬこともなかった...

君はいつもそうだ...自分のことなんか顧みないで行動して...死んだら元も子もないのに...!」


「凪くん、もういいんだ。優は、その時できることをしたんだ。」


「そうよ、凪ちゃんは悪くないのよ...優ちゃんも、きっとあなたが泣くのを望んでいないわ...」


涙を流しながら彼を慰める親友の両親は、彼の何倍も悲しいはずなのに、それでも彼を慰めた。


「だって...!僕が...!僕がしっかりしていれば...!」


「いいのよ...私たちは恨んだりしないわ...優ちゃんが命をかけて守ったんだもの...あなたを責めるなんて、優ちゃんに怒られちゃうわ...」


「凪くん、優のために泣いてくれてありがとう。君が優の親友でよかった、優は幸せ者だ。」


「うぅ....あぁ....うわぁぁぁぁぁぁああ.......」


まるで幼い子供のように泣く彼を両親は抱きしめた。

自分の子が命を張って守った子を、彼らは優しく抱きしめた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「すいません...もう落ち着きました....」


「よかった...今日はもう帰りなさい...ずっとここで泣いてたんだもの、ゆっくり休んだ方がいいわ...」


「ありがとうございます...そうします...」


親友の両親に促され、彼はフラフラと魂が抜けたような歩き方で安置室を出て、病院を後にした。


その後、家につき、部屋に入ろうとした時、床とドアの隙間に封筒が挟まっている事に気がついた。


「なに...これ...手紙?」


表には差出人は書いていない。

宛名が「凪へ」とだけ書かれている。


「とりあえず...見てみよう....」


封を開け、中から紙を取り出し、読んだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「凪へ


この手紙を読んでいる頃には、僕はもう...なんてありきたりな文はいいか。

凪が生きていてくれて本当によかった。それだけでも成仏できそうなくらい。

お前のことだから自分を責めてるんだろうなって簡単に想像できるよ。

でもあれは僕が選んだ行動だから、凪が気にする事はないんだ。

せっかく可愛いんだから笑って僕を見送ってくれよ!

きっとまた会える。なんかそんな気がするよ。

じゃあね、ありがとう。


 優」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


間違いなかった。

それは死んだはずの親友からの手紙だった。


「そんな...優は死んだのに...」


それでもなぜか、笑みが溢れた。


「結局死んだ後も優に心配されてるんだなぁ...僕は...」


その時、空だと思っていた封筒から、小さな手鏡が出てきた。


「こんなの入ってたっけ...」


明らかに封筒に入ってたらわかるサイズの手鏡、訝しげにその手鏡を覗き込んだ瞬間、手鏡がいきなり光を発した。


「なんだこれ...!?」


そして光は部屋を包み込み、何事もなかったかのように収束した。


ただ一つ、その部屋にいたはずの彼の姿がなかったことを除いて。

手紙を受け取った凪視点です。

彼はこの後どうなるんでしょう。


今後もお楽しみに。


詩幽乃

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ