1話 神様
「(あれ...ここは...)」
とても暗い場所で僕は目覚めた。
右も、左も、上も下も全て、暗闇の空間。
自分の腕を見ようとしても...ない。
目を開けてるのか疑い、顔を触ってみようとしても腕がないので確かめようがない。
意識はある、体だけがないのだ。
ーーーーーあぁ、僕は、死んだのか。
15で死ぬなんて、短すぎる人生だったな...
父さん母さん、泣くかな...泣いてくれるといいな...
凪は、無事かな...
俺はちゃんと助けられたのかな...
「助かりましたよ。あなたのおかげでね。」
「(........え?)」
完全に自分一人だと思っていたこの空間の中から突然男性の声が聞こえてきた。
声の主の姿は見えず、声は空間全体というか、頭に直接響いている感じだった。
「だ、誰ですか?」
僕が問いかけると、再び声が聞こえてきた。
「初めまして、友原 優さん。
私はあなたの居た世界でいうと”神”と呼ばれる存在です。」
「神?神ってあの...ナントカ神とか色々あるなんか神話とかの...?」
「まぁ、そうです。ですが、正確にいうと私はあなたの世界で語り継がれている神々とは違い、私はこの世界を管理している神なので、その神々より高位な存在になります。」
聞いたことある神様でも全知全能だったり大地や海の神様だったりと、まぁまぁスケールが大きいのに
そんな神様よりも高位な神様とか、もう理解が追いつかなさそうだ。
「その神様が、なぜ僕なんかに?」
「そうですね、一言で言えば謝罪でしょうか。」
「はい...?謝罪...ですか」
「あなたが死ぬ原因となった建設中のビルの倒壊事故は、実は私のミスによって起こってしまったものです。
申し訳ありません。」
神様って、傲慢で「不遜な奴は許さん!」みたいなイメージあったけど案外接しやすいんだな...
神様も個人差って感じなのかな。
「いやいや!神様が謝るなんて!
あの時すぐに危険を察知してもっと早く動いていれば、二人とも助かったのかもしれませんし...」
「ですが、あなたがそれに巻き込まれて死んでしまったのは事実です。
それも15歳の未来ある少年を私は亡き者にしてしまったのです。」
「そんな大袈裟な...たまたまの事故だったわけですし。それに世界中の人口に比べたら僕なんてちっぽけな犠牲でしょう?
こんな子供のためにわざわざ神様が謝罪なんて...」
「確かにあなたのいう通り世界の規模で見れば大したことはないのかもしれません。
ですが今回問題なのは、”神”が死者を出してしまったことなのです。
私がするのはあくまでこの世界の管理。戦争や飢餓、疫病などの死者を、私たち神はコントロールできません。
あくまで世界の方針を決め、人に試練を与えるのが我々神なのです。
間接的であっても直接手を下すことはないのです。」
なるほど。たしかに戦争や貧富の差によって生まれた死人は、全て人間が行った行為だ。
神が直接やったわけではないのか。
「なるほど、仰ることは理解できました。
ですが、あの倒壊は至って普通の事故のように見えましたけど、なにをしてしまったのですか?」
「いつも通り仕事を行っているときにうっかり指を滑らせてしまい、
あのビルの建設を完成できないようにしてしまったのです。」
指?指でそういうのって管理するの?タッチパネル的な何かで操作してるの?
なんか口調からすごい厳格なイメージを抱いていたけど一気に消え去りそうだ。
「それで途中まで上手くいっていた工事が事故でなくなってしまったと...」
「はい...本当にすみません...こればかりは私のミスで起きてしまったので謝罪をしにきたというわけです。」
確かにあれは人間への試練ってレベルじゃなかったからなぁ...
どうやっても回避できないものだし、神様の意志とは別に生まれてしまった犠牲だからこうやって謝られてるのか...
「わかりました、そんなにお気になさらないでください。
起こってしまったことは仕方ありませんし、早く死んでしまったことは悲しいですが、受け入れようと思います。」
「あなたは心優しいですね。そんな少年を手にかけてしまったと思うともっと罪悪感が...」
「いやいやいや!もういいですって!もう仕方ないって言ったじゃないですか!」
意外とナイーブな一面があるんだなこの神様...
本当に神様か...?こんな神様だからミスが起こるのかと思うと納得ができてしまうな...
これはミスの犠牲者が僕一人だけじゃないかもしれないな...過去に何回もやっているんじゃないか?
「そうだ!よし!あなたには転生してもう一度人生を歩んでもらいましょう!」
「...........は?」
突然神様が言い出した言葉に僕は言葉を失った。
後もう少し神様とのお話が続きます。
お楽しみを。
詩幽乃