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公爵令嬢

 私の持ち物を破壊したり陰口をたたいたりと裏でこそこそしていたようだが、どういう風の吹き回しか直に私に会いに来た。

 目の前にいるのは奇麗な銀髪をまるで細工物のように巻いたそれを後ろに結い上げ、背後に垂らすという特徴的な髪形をした人だった。

 瞳は珍しい金色。

 まるで猫のように丸い目が私を見下ろしている。

 身分だけでなく物理的に。あちらは女性としてはかなり長身であり、私はかなり小さい。

 もちろん彼女の身分がかなり私より高いことはわかっている。

 何しろ公爵令嬢、この国に公爵家は四つしかなく今現在学園に通っている公爵令嬢はたった一人しかいないから。さすがにその人を知らないなんてあるわけがない。

「貴女は身分というものをわかっている」

 私を見下ろして彼女は言い放った。

「わかっておりますが」

 そうでなければこんなところでおとなしくなんてしていない。さっさと振り払って教室に帰っている。

「そう、わかっているとは思えないけれど」

 どうせブルジョワのくせにとか言いたいのか、それこそ今更だが。

 ブルジョワがこの国の貴族に食い込み始めて早百年。本当に今更だ。

 それにもはやこの国はブルジョワを排することもできない。何しろこの国の経済はブルジョワを中心に回っている。

 そのブルジョワを国から追い出してその事業を奪い取ったとしても貴族に回せるもんじゃない。

 だから貴族はブルジョワを認めざるを得ないのだ。

 むろん、ブルジョワの方だって貴族身分には一定の敬意を表することはやめていないし、貴族ゆえの特権を犯す真似も今ではする意味もないので誰もしていない。

「貴方は貴族の結婚というものをどう考えているの」

 まるで諭すようなありようだ。あちらが実年齢より大人びていて、私が実年齢よりだいぶ幼く見える容姿なので、はたから見れば大人と子供だ。

 私たちの年齢がたった二歳しか離れていないなど客観的に見たらだれも信じないだろう。

 私は琥珀色の目を丸く開いた。こうすると子栗鼠のようにあどけなく見えると教えられた。

 こういう時は侮られた方がいい。

 人を侮ると隙が生まれる。

「それは、家のためにするものだということですか」

 たまたま恋愛した相手が家と利害関係が良好だったりしたら、政略的恋愛結婚が成立することもあるが割合は高くない。

 そしてその割合は上位貴族になればなるほど低くなっていく。

 貴族の結婚とは家のためにするものだ。

「そうよ、貴女、自分の結婚はどう思っているの」

「そうですね、父のお考えでは遠縁の誰かを婿に迎えるための選定に入っておりますが」

 そんなものは隠すまでもない。まあ、ブルジョワの結婚も貴族と似たようなものになりつつある。我が家は娘しかいないので、必然的に長女の私が婿を取ることになっていた。

 妹も同業他社との見合い話が来ていたはずだ。

「それに不満があるの」

 言っている意味が分からない。

「不満というか。事業のためにはそれしかないでしょう。それにそれなりに人格も父は吟味しているはずですし、それなりに気心の知れた人ならそれでいいかなと思いますけど」

 私はあざとく首をかしげて見せた。

 さて何を言ってくるか。私は相手の出方を窺った。

「もういいわ、下がりなさい」

 人を呼びつけておいて何なんだろう。それはそれは慇懃に私は追い払われた。



叙述トリックがありました。主人公は実はロりです。

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