本物なんだ、それ。本当に本物なんだ。嘘じゃないんだ。(掌編。冒険物のラストという感じのシチュエーション)
お題は、
いっそ滑稽なほど明るく最後の嘘をつきました。
それはどうしようもない嘘でした。
「欲しい物のは手に入れたから、もういいんだ」、と。
嘘だと見破ってくれたらいいのに。
です
サスペンスのクライマックスみたいな崖の上でのことです。
彼の手の中でキラリと金色に輝くのは、古ぼけた一枚のコイン……。
「これな。イギリスの昔の女王が楊貴妃に贈ったコイン」
いっそ滑稽なほど明るく最後の嘘をつきました。
それはどうしようもない嘘でした。
「古代エジプトから伝わった凄いやつね。だからほら、ここにピラミッド掘ってあんの。でも、もういいんだ」
と。
彼は大きく振りかぶると……海に放り投げました。
「もったいないです」
「いいんだ。用済み。美少女助手くんの言うとおりさ。分かってる、あれは偽物。偽造コインだ。俺にはトレジャーハンターの才能なんてなかってんだ。インディ・ジョーンズに憧れて始めたけど、大学教授でもないしね……。欲しい物は手に入れたから、もういいんだ」
嘘だと見破ってくれたらいいのに。
私はただ、危険なことから手を引いてもらいたかっただけで。
確かにあれはイギリスの昔の女王も楊貴妃も古代エジプトも関係ないコインだけど……。
あれ、純金なのに……。