ノアと里咲とクリスマス【準備編】
外を見ると、灰色の雲が空をおおい、肌寒く、薄暗い世界が広がる12月下旬の昼下がり、屋根の下、ぬくぬくとコタツで暖まる少女の姿があった。
「うにゃぁ〜……もうお家から出たくにゃ…」
彼女の名前はノア、黒く艶のある髪に翡翠のように緑色に輝く瞳を持ち、可愛らしい、ねこみみとしっぽを持っている。
そんなノアは今、コタツに魅了されている、その姿はまさに「猫はこたつでまるくなる」だ。
まぁ、寒いのが苦手なノアにとって、いつでも暖の取れるコタツは至高の品なのだろう。
「うむぅ…タクヤも居ないし、このまま寝ちゃっても…いい、かな」
そう、今はタクヤが居ないのだ、緊急の打ち合わせか何かで家を飛び出して行ったようで、ノア1人、家でぬくぬくとしていた。
すると……
ピンポーン!
今眠りにつこうとしていたノアの元にインターホンの音が届く。
「……うにゃ?こんな時間に…誰だろ…?」
コタツからずるずると這い出て、玄関へと向かうノア、とても眠そうにゆらゆらと歩いてゆく。
「はーい、……ってあれ?こうはい、ちゃん?」
玄関の前に立っていたのはタクヤの後輩の千歳 里咲だった。里咲は体をカタカタと震わせてながら玄関の前に立ちすくんでいたのだ。
「…あ!ノアちゃん、こ、こんにちは…、今センパイ居ないよね?」
「いない…けど……あ、とりあえず入って!」
場所は戻りリビングへ
「おお〜、コタツがある!寒かったから暖まっていい?」
「にゃ、暖まってて!今……あ、紅茶でいいかにゃ?」
冷えきっていた里咲は、コタツという名の楽園に入ってゆく。
だが、そこに足を入れた瞬間、コタツは人をダメにする悪魔へと変わる。
「うわぁ〜……あったかぁ…もうこのままでいたい……」
里咲が溶け始めていると、手にカップの乗ったお盆を持ったノアがやって来た
「あ!私の場所が後輩ちゃんに取られた〜、……じゃあ後輩ちゃんの隣に入って……」
ノアはそう言うと、手に持っていた紅茶の入ったカップを机に置き、里咲の隣に入る。
「……うだぁ…って、え?ノアちゃん、急に入って…あぁ…待って、ノアちゃんやわぁ…しっぽもふわふわで…」
「後輩ちゃん、はい、紅茶入れてきたよ!暖まって!って、ひゃあっ!急にしっぽさわらにゃいで……くすぐったいからぁ!」
手に紅茶を持っているノアはビクッと震えてしまう、すると当然、手に持っていた紅茶もこぼれてしまい……
「あつっ!!ノアちゃん大丈夫?かかってない?ごめんね」
「大丈夫だよ!紅茶こぼれちゃったからもう1回入れてくる!後輩ちゃんちょっと待っててね」
そう言うと、ノアはすっと立ち上がり台所へと向かうのだった。
あの後、ノアは里咲の向かい側に座っていた
「それで後輩ちゃん、こんな時間にどうしたの?タクヤも今居ないし」
「センパイが今居ないからこそ、ノアちゃんに提案があってね…」
「……提案?」
首を傾げてノアが呟く、それに続いて、里咲が口を開いた。
「今月……12月の1番のイベントってなにがあるか分かる?」
「……12月、えーっと、クリスマス…?」
「そう!クリスマス!そこであたしは考えたのさ!」
身を乗り出し、目を輝かせる里咲、それだけでも、熱意が伝わって来るようだった。
「考えたって、何を?」
「来たる12月25日、センパイのお家で、クリスマスパーティを開きたいと!!!!」
「おぉ〜!!……でも、なんで私だけに教えるの?別にタクヤにも教えていいんじゃない?」
ノアは思い出したように里咲に質問する。すると、里咲は少しにやける。
「いや〜、ちょっと準備が必要なんだよねぇ……センパイには秘密の、ちょっとノアちゃんに着て欲しい衣装があるんだ…」
里咲はそう言うと異様に詰まったカバンから衣服を取り出そうとガサガサと中を漁り始めた。
そしてカバンから何やら赤い衣装を取り出したようだ。
「衣装?それってどんな……って!そ、それを着るの?さ、流石に恥ずかしい……ていうか私が着る必要あるの?」
「いや、ノアちゃんだから良いんだよ!ふわふわでモフモフなノアちゃんがこれを来たらきっとセンパイも喜ぶだろうなぁ〜………私も嬉しいけど…」
里咲はわざとらしく微笑みながらノアを説得しようとする。
「うぅ……うにゃぁ…………」
悩みが加速するノアなのだった。
〜12月20日〜
「センパイセンパ〜イ!25日、センパイのお家でクリスマスパーティしましょうよ!」
昼の休憩時間、里咲がタクヤの元へ駆け寄って来る。
「…………俺は良いが、家には何も無いぞ?俺とお前2人きりですることも無いだろ」
(……あ、そうだった、まだセンパイにノアちゃんのこと言ってないんだった)里咲はその一瞬で言い訳を考える、そして
「いえいえ、あたしはノアちゃんとじゃれあっているだけで嬉しいので…」
「俺はいいのかよ」
タクヤの的確なツッコミに里咲はたじろいでしまうが急いでとりなおす。
「い、いや、センパイも大事ですよ!うん、大事です」
「……まぁいいか、25日は……5日後か、わかった、じゃあその日にケーキを買って来るからそれから来てくれ」
その言葉に里咲は疑問を抱いたように首を傾げる。
「いや、あたしが先におじゃましてますよ!そっちの方が早いと思いますし。」
「ダメだ、やる事があるからおれが家に着くまで安静にしていてくれ」
「…………はーい」
素直に頷いた里咲だったが当然、ノアの着替えもあるのでそんなことは出来ない。
「(どうしよう……とりあえず25日は休みだから、センパイが家を出たのを見計らって……)」
「ん?どうしたんだ?そんな真剣な顔して」
「なんでも無いですよやだ〜!」
こうして、来たる25日、クリスマスパーティへの準備が始まったのだった。
始まった……のだが
〜1日目〜
「センパイ……お仕事終わりません」
「大丈夫、俺もだ…今年も終わるからな、詰めに詰めてるんだろう」
「がんばりましょ……」
〜2日目〜
「センパイ……」
「それ以上言うな…これでも一応ほかのとこより早く終わるんだから…」
「…………」
〜3日目〜
「……………………」
「……………………」
〜4日……
仕事が終わらず、準備という準備が出来ていない2人だった。
そんなこんなでパーティ前日、
「センパイ、何とか終わらせましたよ!これでやっと……」
「…………」
そこには干からびたように机にもたれ掛かるタクヤの姿があった。
「せ、センパイ!夢のパーティは明日ですよ!ここでダウンしちゃダメですよ!」
「…………う、あ゛……………あ…」
帰ってくるのはうめき声のようなものだけだった。だが、時折何か言っているようにも聞こえる。
「センパイ?どうしました!?何かあったら言ってください!」
「……あ…………の…あ……」
そのタクヤだった物は時折のあ…と呻いているようだった。
「……ふふ、ノアちゃんのこと心配なんですね……あはは、センパイは優しいなぁ…」
タクヤの顔を眺めながら微笑みをこぼす里咲。
「センパイのためにもノアちゃんの晴れ姿、ちゃんと可愛く見せてあげないと…!!」
頑張るタクヤの姿に、来たるパーティへの意気込みが高められた里咲なのであった。
どうもこんばんは!むしゃとらです!
前回は挨拶も短くなってしまってすいません……
ですが今回は余裕を持って書いているので色々語らせていただきます!
……さて、今回の物語はクリスマスがテーマ!、ということで非リアな私とは全く関係のないイベントです……まぁそれは置いておきまして
ノアの着る予定の衣装、だいたい予想はついているかとも思いますが次回へのお楽しみです!私の足りない語彙力でも伝わるように可愛く表現したいと思います!
今回、前後編とストーリーが別れているので、次回もぜひ読んでいただけると嬉しいです!
語る……と言いつつオチもなくてあれなのですが、これからもこの「ねこみみ日和」をよろしくお願いします!!