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ねこみみ日和  作者: むしゃとら
5/10

ノアと毛玉

季節は秋、山が赤く染まり、トンボが空を舞うこの時期

タクヤは困っていた。


「…………さて、これはどうしたことか…」


困りごとの種はタクヤの家に同居している、ねこみみ少女のノアだった。

具体的にいえば、最近ノアがやたらとリビングから出ていったり、風呂から上がる時間が長かったりするのだ。


たかがそれくらいで……と思うだろう、だがノアの場合、それが異様に長いのだ、挙句の果てにはリビングから出る時、「タクヤはここからぜぇ〜ったいに出ないでね!」と言い残し出てゆく始末、

ノアと出会い早6ヶ月、タクヤ、初の事態に動揺していた。


そして今、まさにその事態が発生中だった。

リビングの扉を開けて一言、


「……んにゃ…タクヤ?絶対に出てきちゃダメだよ?」

「あぁ、分かった、でも最近どう……って、あれ?いない…」

「(ほんとうにどうしたんだ?猫ならではの何かなのか…?)」


疑問が残るタクヤだった…



次の日

何かを決し、猫好きな里咲(りさ)に助言をもらう


「なぁ里咲」

「……はっ!センパイ?どうしたんですか!そんな改まって」


会社のPCを眺めてニヤニヤしていた里咲が振り返る。


「……ん?何見てるんだ?」

「い、いや?何も……そうですよ!あたしが見てたのは猫です猫!」


怪しげに目をそらしながら答える里咲にタクヤは目を細める、


「なぁ里咲、世の中嘘をついてもいいことはないぞ?怒らないから見せてくれ」

「……い、いや、本当になんでもないんですって!あっ!」


抵抗する里咲を鼻目に彼女のPCのホームを覗く、そこには……


「……お前、これ」

「は、はい、良いワンショットが撮れたので……」


そこにはタクヤとノア(黒猫)が戯れている写真が設定されていた。


「すいません、ほんの出来心だったんですぅ……」

「……まぁいい、それより、だ」

「…………ふぅ、そ、それで、あたしに用があるようですが」


許されて少しほっとする里咲、そして改まって要件をうかがう。


「うちのノアがなんか変なんだ…」

「…ほう、それは具体的には?」

「……………………それは、毛繕いが増えた?」

「なんで疑問形なんすか」


タクヤがすぐに言えないのにもワケがある、ノアがねこみみ少女だということを里咲に打ち明けていないのだ。

以前里咲が家に来た時もノアは黒猫となっていた。


「…うーん、センパイ、きっとそれは換毛期なんですよ、ノアちゃん、どこかで毛玉吐いちゃってたりしませんでしたか?」

「換毛期?」


少し悩んで里咲はキッパリと告げた。


「はい、換毛期です。にゃんこはですね、秋から冬に、と、冬から春に換毛期っていうのがあるんですよ。その時は毛が生え変わる時期でして……ほら、衣替えと同じようなものですよ」

「それでなんでノアは今みたいになってるんだ?」


「それはですね、その時にゃんこは自分の体を舐めて毛ずくろいする時間が増えるんですよ、そのせいで毛を飲み込んでしまって毛玉を吐いちゃうんです」

「なるほど…じゃあ今のノアは換毛期で、毛ずくろいが増えてるのはそのせいって言うことだな」


タクヤは納得したように頷いた。それに里咲は少しドヤ顔になり、


「どうですか?センパイ!あたしも少しは役に立つんですよ!」

「そうだな、ありがとう、里咲」

「いえいえ、かわいいにゃんこの大事とあらばいつでも呼んでくださいよ!」


頼もしい後輩を味方につけ、タクヤは少し安心したのだった。




「…けほっ、けほっ……うにゃぁ、喉がもしゃもしゃするのやだぁ…」


少し咳き込みながらソファにうなだれるノア


「でも今はちゃんと整えないと……でもやだぁ…」


ノアが時間を忘れてぼやけていると玄関の方から足音が聞こえてくる。

それに気づいたノアだったが、歩く気が起きず、そのままソファに突っ伏していた。


「ただいま……あれ?ノアは…」

「うにゃぁ…………」

「ノアさん!?」


ソファの上で溶けているノアを発見したじろぐタクヤ、そんなノアにタクヤは


「ノアさん、ちょっと提案があるんですが…」

「うにゃ?……けほっ…」

「(本当に苦しそうだな…これで少しでも良くなるといいが……)」


タクヤは手に持っていた袋をあけ、中からクシ状のブラシを取り出した。


「ノア、また俺からの頼みだが、黒猫になれるか?」

「……けほっ…え?なれる…けど」


ノアが小さくなってゆき、猫の姿となる

タクヤはノアの横に座るとノアを膝の上に乗せる。


「うにゃ?」


小さなノアを撫でるとタクヤの顔に笑みがこぼれる。


「…柔らかいな」

「にゃぁぁ………」


(ノア)を撫で、和むタクヤとタクヤに撫でられ、思わず声が出てくる黒猫(ノア)、こんな光景を里咲が見たら一体どうなってしまうのだろうか…


「やわぁ…………はっ!それどころじゃない、ノアの危機なんだ!」

「ニャ!?」


急な大声に驚くノアだったがタクヤの膝の上から逃げない、そんなノアに先程のクシをかけようと近ずける。


「……?………すんすん、」

「ノア、いいか?これで少し撫でる感じだが…(まぁ、今のノアに通じるか分からないがな…)」


半ば諦めるようにノアに問いかけるタクヤ、ノアはそんなタクヤにすり寄る。


「あはは、ノアは可愛いな、じゃあ少し失礼して…」


そんなノアの背中にクシを当て軽く滑らせる。


「…んにゃぁ♪にゃ……」

「気持ちいいのか?…じゃあもう1回」


そうして何度かクシを滑らせると、クシにはたくさんの毛が絡まっていた。


「これを毎日1人でやってるのか…ノアも大変だな……あれ?ノアが寝てる」

「んみゃ…………」


気づくとノアは丸くなって寝てしまっていた。



「……あ、あれっ?今何時…って!?、もう8時!夜ご飯作ってない!」


ノアが目を覚ますと時計の針は8時を指していた、起き上がろうと体制を整えると、ノアはあることに気づく。


「ていうか私、リビングでねてた………あ」

「………………のあ」


ノアはタクヤの膝枕で寝ていたのだ、すぐ近くにタクヤの顔があった


「…っ!タクヤ、寝てる?」

「んむぅ…………」

「あはは、そっか、私に気を使ってくれて、だから猫になってって行ったんだね」


ノアは少し微笑み手を伸ばす。その手はタクヤの頬に重ねられた。


「タクヤ、ありがとう、私のためにそんなに気をつけ使ってくれて…」


タクヤの寝顔を見つめながらノアはつぶやく、その瞳は少し潤んでいた。


「タクヤ、せめてものお礼、だよ」


ノアは顔をあげると、その華奢な唇をタクヤの頬に軽く当てる。

その頬は少し赤く染まっていた


「…………いつもありがとう、タクヤ」


そのままノアは元の体制に戻るとその翡翠のように輝く瞳を閉じるのだった。

春なのにめちゃ寒い謎現象に悩まされるむしゃとらです!

はい、というわけでこの投稿も早くも5回目ですよ!

時間の流れは早いですねw

今回はノアちゃんの換毛期のお話でした。換毛期は毛が抜けて大変です、それをねこ目線見てみるとこうなっているんですかね。

とりあえず、お読みくださり、ありがとうございました!

これかも「すぐ読めてクスッと笑える物語」を目指して頑張ります!

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