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突然ですが、娘ができました。2  作者: ほととぎす
第1章の5 中学3年生編 (日常2)
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文化祭(前篇)

待ちに待った文化祭。

お父さん以外にも、ちょっとびっくりする来客がちらほらと。


そして梨桜はひとつの重大な決断を。

  【文化祭】


 土曜日の夕方、いつものスタジオへ遊びに行っていた梨桜を迎えに行き、一緒に遊んでいた友達二人を家まで送り届けた。

 丁度良い機会なので今の会社を退職してあの3階をオフィスし起業する旨を伝えたところ、白石さんはなんだかとても納得がいった様子で、大きくうなずいていた。

 あのことがあってから、なんだか私を過大評価してくれているらしいのだが・・・自分の方こそよほど立派であろうに。

 CM効果はただのイメージアップでしかない。今の時代、内容が伴わなければすぐに悪評が世界中を駆け回ってしまう。すると上がったはずのイメージがそれに倍するほども失墜するケースだって少なくないのだ。

 それが、仕事依頼がとどまらず、今や協力会社を入れて約倍の40名体制でやっているとの事なのだ。

 それを聞いた時は、本当に手を貸してよかったと思った。


・・・


 夕食を終え、明日のことについて少し話をしようかな・・・

そう思い、横でくつろぐ梨桜に話しかける。


「いよいよ明日は文化祭だな。

 今年はどんなものを作ったのかとても楽しみだ。」


そう言っていつものように頭をなでてやると、猫のように喜んでいる。

あごを撫でたら、さすがに怒るだろうか?


「あっ・・・、

 バザー担当の時間は決まってるんだっけ?」


「うん。前半が1,2組で私たちが後半だから、12時から最後の1時半まで。だからその間に来てね。」


「あぁ。必ず行く。

 ところで、メイク用品を買ったところを見ると、専用の衣装とか着るのか?」


「ううん、制服~。

 ただね、保健の先生が少しおめかしして出ましょうって。(笑)

 毎年軽くメイクしてやってるらしいよ?

 あっ、そっか・・・お父さん、去年は行かなかったんだもんね。」


「あぁ。危うくお前たちの合唱すら聞き逃すとこだったよ。

 クラスごとに捻った出し物をするのもいいけど、俺はやっぱり昔ながらに、生徒の作品を並べてくれたほうが良いな。思わないところで思わない感動があるのが、凄く好きなんだ。」


「ほほ~~、去年はどれが一番記憶に残ってるの?」


「そうだなぁ、お前の習字はもう少しこう、思い切って書いたほうが良いなって思ったのと、今も使ってる俺のエプロンはあの刺繍のデザインにとても驚いたのを覚えてる。粘土細工のたまちゃんも本物そっくりの顔とおデブな体もよくできていたし、何よりポーズが良かったな。俺には才能の無いものばかりで本当に驚いたよ。」


「え~~っと、お父さん、それ私のばっかりなんだけど。(笑)

 もっと、感動を与えてくれたものはなかったのかしら?」


「ん?だから今言ったのが一番感動したものだぞ。

 杠さんも、粘土たまちゃんをもらってすごく喜んでたじゃないか。」


「えへへ。あんなに喜んでもらえるとは思ってなかったよ。」


「なんでも俺を子供のようだと言ってくれてたからな、

 お前は孫みたいに見えるんだろう。」


 さて、ちょっとだけ今後懸念されることについて話しておくことにするかな。あの古代遺跡のような老人のことだ、必ずよからぬことをしてくるに違いない。それが私への事ならどうという事はないが、この子への嫌がらせだけは阻止せねばならない。



  【とある下級生のとある悩み】


 (文化祭を来週に控えた某日・・・)


「ねぇ~、これどうしよう~・・・」


そんな風に一人の女子生徒がつぶやく。


「う~~ん・・・4クラスともただの合唱か~~・・・」

「これじゃ前後の挨拶入れてもせいぜい引っ張れて1時間だよ」

「あと1時間も残る・・・どうしよう~~・・・」


 放課後の2年2組の教室。

1組委員長を中心にして輪になる4人の各組の委員長(副委員長)はそんな風に悩みをこぼしていた。


 文化祭実行委員、毎年2年の各クラス委員長と生徒会長、副会長がこれにあたり、各クラスの催し物やそれに必要な備品などについて話し合っているのだが、毎年恒例になっている『学校文芸会』の時間割について頭を悩ませていたのだ。時間は午後2時から4時までと2時間たっぷりとられている。

 今までであればどこかのクラス、あるいは合同などで演劇などが行われていたのだが、今年は4クラスとも合唱に決まってしまったのだった。2曲ずつ歌ってもらい、その前後に挨拶を入れて貰ったとしてもせいぜい15分程度、4クラスで1時間持つかどうかという感じなのだった。


「1組に軽音部の子がいるじゃん、なんかやってもらうとかできない?」

「むりむり~・・・そんな人前でやれるようなもんじゃないって!

 そんなこと言ったら部活やめそうだよ・・・」


「あっ! 軽音部といえば3年の人、凄く上手いじゃん!

 去年の合唱でもピアノとか弾いてたし。

 お願いしたらダメかな?」

「う~~ん、べつにNGって訳じゃないけどね~・・・

 ・・・去年の今年だからどうなんだろう?

 ・・・聞くだけ聞いてみる?」


「あっ! 歌って言えばさ、3姫様方はどうなの?」


今思いついた、というよりも待ってましたとばかりに一人がそう言う。


「そりゃ出て貰えるなら、めっちゃ盛り上がりそうだけどさ~~

 ・・・誰が頼むのよ、あの方たちに・・・。」


「だよねぇ・・・」

「なんかさ、すっごく上手いって聞いた・・・。」


「はぁ・・・綺麗だよねぇ~~・・・

 それに歌まで上手いのか~~、お話だけでもしたい・・・。」

「だよねぇ・・・伝手なんてないもんねぇ・・・。」


「あっ! じゃぁさ! 2年各クラスで歌ってほしい人アンケートとかとってさ!

 それを根拠にしてアタックしてみるとか!」


さらにこの彼女は提案する。

どうやらあらかじめ策を練っていたようで、どうしてもその3人に何かしてもらいたいらしい。


「おおっ! それいいじゃん!

 それならお願いする理由になるかも!」


「しかも投票したら絶対、間違いなくあの方たちだからね!」


「 「 うんうん! 」 」


 2組、3組のクラス委員長は副委員長に丸投げして帰ってしまっているため、姦しい4人の女子生徒によってそんな案が採択されることになってしまった。

 もし生徒会長、副会長がこの場にいたなら、『そんな他力本願じゃダメだろう!』というお叱りを受けたことは間違いない。


・・・


 さっそく次の日、事の次第を各クラスで話してもらったところ、『軽音部の先輩案』もさることながら、『歌ってほしい先輩案』への食いつきが凄く、その当日のうちに投票が実施され即日開票された。


・・・


「はーい、発表しまーす!

 白石先輩:28票!、本間先輩:26票!、長瀬先輩:16票!、

 鶴ヶ峰先輩:10票!、・・・あとは、5票以下なので割愛かな?」


「うひゃー! 3姫様方だけで70票!

 過半数超えてんじゃん!」


「長瀬先輩は、彼氏作っちゃったからガクンと落ちちゃったね・・・」

「だねぇ・・・男女ともに相当熱いファンがいたのに・・・。」

「それあんたじゃないの!」

「あっ・・・あたしは白石先輩一筋です!」

「この浮気者~~!(笑)」


 と、そんな風に楽しく話す彼女たちには根回しなどという大人びた考えは全くなかった。何かに出て欲しいのならば、事前に相談を入れておく、そんな基本的なことすら思考のうちには無かったのだ。

 だが、それがかえって予想外の力を生み出すことになる。



  【文化祭当日】


 毎年、梨桜たちの通う神川南中学校では10月最終週の日曜日を文化祭にあてていた。反対に、すぐ近くと言って差し支えない私立信濃中学校では11月3日に固定していた。文化祭の特色としては前者がオーソドックスな中学校の文化祭スタイルなのに対し、後者の方はクラスごと、学年ごとに凝った催し物をすることで地域に存在をアピールしていた。


 晴れ渡った空の元、生徒たちが登校していく。

放射冷却の影響もあり、空気は冷たい。

ただ、晩秋の空気はとても澄んでおり、遠くの山々まできれいに視界にとらえられた。


そんな中にいつもの仲良し5人組の姿もあった。

この寒さをものともせず、楽しそうに話しながら学校へ入っていく。



 朝のあいさつの後、金曜日に取り決めた通りの当番表が配られ、生徒たちは目を通して自分の担当時間帯を確認する。当番というのは、来場者の案内係であり、すべての学年、すべてのクラスで生徒が担当する。父兄他一般の来場者も、この生徒たちの苦労話などを聞くのが大きな楽しみの一つとなっていた。

 梨桜たちのいる3組では3人づつの班を作り30分交代で案内をすることに決めた。

ただ、バザー担当に選ばれている梨桜たち3人は除外だ。


 文化祭の一般開放は9時から4時まで。

バザーの方は10時半から1時半までとなっている。


 午後から担当の梨桜たちも、バザーの準備のためさっそく調理準備室へと向かう。


「おはよう、みんな。今日は先生からプレゼント。」


そうにっこり微笑んで保健の美園先生は大きな紙袋をみんなの前に置く。


「ただね、3着しかないから、・・・う~~ん、交代で使って。」


梨桜たちがガサゴソと紙袋から取り出したもの、

・・・それは・・・


「 「可愛いっ!!」 」


 それはアニメによくあるようなメイド服だった。ひらひらフリルがふんだんに施され、とっても可愛い。お子様体型の私には似合わないかもしれないけど、可愛いものはかわいいのだ!


「去年も当たったらみんなにプレゼントしようと思ってたんだけどねぇ、外しちゃったのよ。その分今年は大当たり!

 みんなで楽しんで使ってね。」


 そう楽しそうに言う美園先生。

あたったって、何がなんだろう?宝くじ?



 私と紗奏、他数名がはしゃぐ中、反対にちょっと引いている子もいる。


「私はいいかな・・・なんかそう言う仕事みたいで、ちょっと・・・」

「あっ、わたしも・・・」


そう言ったのは、1組からのメンバーだった。

すると、2組のメンバーはじゃぁ私が着る!という事になり、どうやら前半の方では2組のメンバーがコスプレをすることになったようだった。


私たちの方はというと・・・

「あたしたちは、順番に着替えようか?」


そう言う紗奏に対して・・・

「あ、あたし達はいいかな・・・(苦笑)

 白石さん達、着てっ、ね。」


4組からのメンバーは1組同様ちょっとしり込みしてるっぽい。

ただ、『イヤ』というわけではなさそうに見えるのだけど。


すると・・・

「こういう機会もそうないと思うよ?

 メイド喫茶とかでバイトでもしない限り(笑)

 順番に着てみない?」

そういって、紗奏はちょっとプッシュする。


でも、なんだかちょっと訳ありげに3人は顔を見合わせると、


「ううん、やっぱりいいよ、恥ずかしいし。

 むしろ、お願い。」

そう言って、強く固辞するのだった。


お父さんには、制服だよって言ったから、こういう格好をしてたらびっくりするかな?(笑)


・・・


9時になり、一般の人たちの入場も始まったので、玄関まで行ってお父さんを待つことにした。


まるで並んで待っていたかのように、親御さんたちが入ってくる。

それに交じって、お父さんが・・・


あれ、その後ろに見えるのは・・・


「いらっしゃい、お父さん、それに麗子さん。」


「あぁ。今日はゆっくり見学するよ。」

「お久しぶりね、梨桜ちゃん。

 どう?縁とはうまくやっている?」


「はい。毎日が楽しいです。

 でも、縁君、お母さまが来るって言ってなかったですよ?」


「まぁ、もうお母さんって呼んでくれるのね。(微笑)

 今日はお忍びで来て驚かせてやろうと思って。」

「それじゃ、ばったり会うまで私が二人を案内しますね。」


「・・・あっさりスルーされてしまうと、なんだかつまらないわね。」

そう、ちょっと拗ねたように言う麗子さん。

 (ぷぷっ)


「あらっ(笑)お母さまは縁君のお母さまだから、お母さま呼びで間違ってないですよ。(にっこり)」


「(ふふっ)

 ほんっとかわいい子。伸朋さん、この子は必ずいただきますからね。」


「それは、お宅の息子さんがうちの姫様を落とす事が出来たら、だな。」


「あらっ、すぐにあの子の魅力に気づくと思いますよ。」


・・・と、そんな風に親同士が話す中、私は素知らぬ顔をして二人を案内していく。


でも・・・

こうして一緒にいると、たぶん私の両親に見えたりするんだろうな~

そう考えると、ちょっとモニョモニョしてしまう。


お母さんはお母さんただ一人、唯一無二の唯さんだけだ。


・・・ただ、

少し先の未来、お父さんの横にいて欲しいのはあの人。

こんな素敵なお父さんをずっと一人になんてしておかない。


昨日ラインの交換をしたから、きっとそのうち来るはずだ。


 二人を案内して、1時間半ほど。

1年4組の教室に入ったところで、二人のご対面となった。


「母さん。来てたのか。」

「どう?びっくりしたでしょ?」


「いや、そうでもない。

 梨桜さん、案内ありがとう。変わろうか?」

「うん。ありがとう、じゃぁここからお願いね。

 それと、12時から私たちがバザーの手伝いするから、

 必ず連れてきて。」

「あぁ。分かった。」


 お父さんと麗子さんを縁君に預けて、スマホを確認する。

 ついさっき震えていたからついたかな?と思って開くと、案の定。


 玄関まで迎えに出ると、あらびっくり!


「今日は、ようこそ!

 それと、凄くお久しぶりです!」


「今日は、今日はよろしくね。

 それから、この子たち、学校の後輩なの。

 連れてきちゃった。

 去年一緒に遊んだんだよね?」


「お久しぶり、梨桜ちゃん。

 元気してた?」


「はい!また会えて嬉しです。朱音さんと沙由里さん。」


なんと一緒にいたのは、去年の夏に一緒に遊んだ二人の大学生だった。

今年の春に卒業したはずだけど、大学院に進んだのかな?


 3人を案内している道すがら、朱音さんはお父さんのことについてあれこれと聞いてきた。どうやら芹野さんはお父さんラブなことを隠してはいないらしい。


 何てすがすがしい。

 あっけらかんとした純粋な愛情ほど心地よいものはないと思う。


「で、本間さんが独立するっていうからね、私もついてくことにした。」


えっ!

それはさすがにびっくりだ!

もう人生掛けてると言っていいんじゃないかしら!

そう思っていると・・・


「奈菜さん、それはさすがに追い過ぎじゃない?」


「ん~~、付きまとってるわけじゃないわよ。

 仕事でもちゃんと距離取ってるから、ねっ。」


そう言って私の方に目を向けて『ニコッ』てする。


 私は必死に考える。というか今まで考えてきたことを纏める。

この人がお父さんを想ってくれている間に、ちゃんとくっついて欲しい。

だけど、せめて私が高校卒業するまではお父さんを独占させて欲しい。

あと3年間、この人は待ってくれるだろうか?


「芹野さんはずっとお父さんを好きでいてくれますか?」


『超』思い切ってそう聞いてみた。

これはもう、半分以上私の(お父さん渡すよ)許可宣言のようなものだ。


・・・彼女は本当に『ぽかん』とした様子で、

しかし、すぐに笑みを取り戻してこう言った。


「私は恋愛不全症だから、本間さん以外は無理なの。」


お越しいただきありがとうございました。


真冬並みの寒さになってまいりましたね。


温かい鍋でも食べて寒い冬を乗り切りましょう。

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